第三章 悪魔のようなアイツ
次はおれがI県警を辞めた理由を話そう。おれは退職する2ヶ月前からT署に勤めてたんだが、そこの上司がヤバかったんだ。そいつはM子っていう県警では珍しいエリートって奴だった。そいつはな人格的に問題のある奴だった。よく、天才はおかしい奴が多いって言うけど、M子はその典型だったんだろうな。M子はかなり俺たちノンキャリに対して厳しかった。おれは当時25で巡査長、東大卒の親友の麻田も同じだったがな、だがな、M子の中では自分みたいに25歳で、すでに警部補じゃないと駄目だったらしいんだ。だからおれが書類を提出すると、「巡査長の癖して...」と嫌味たらしく云ってきた。おれと麻田もM子にはウンザリしていたよ、同じ年の12月だったか、忘年会の帰りおれはベロンベロンに酔ったM子を送ってったんだが、そこで無理矢理ホテルに連れて行かれたんだ。いわゆる逆セクハラってやつだな。おれはM子を振り払って、家に急いで帰った。それから3日後だったか、M子が奇声を発しながら突然拳銃を乱射し始めた。おれは麻田と一緒に急いでM子を取り押さえようとしたよ、そしたらM子は、「チクショー」「みんな滅べ」と云いながら、顎にピストルを押し付けた。こいつァヤバい、急いでM子の銃を掴み取って逮捕術で取り押さえた。それからM子は檻のある病院にブチこまれたらしい。当時は「エリート女警官の暴走!」ってブンヤが取り上げてたよ、ネットでは、「同僚のセクハラが遠因だ」って推測されていたけど、「セクハラされたのはこっちの方だ!」って思わず言いたくなったな。これが原因でおれは警察を辞めることにした。麻田は、今もよく会うけどM子の一件がトラウマで女上司ってのが苦手になっちまった。オット、つい熱く語り過ぎちまった。この話はここまでにして、今度はおれの会ったヤバい恋人について話そうか。といっても大学の頃になるがな。