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「……私の病気、知ってるでしょ。私なんかと結婚しても、お荷物にしかならないよ」

「君が、たとえ動けなくなっても、寝たきりになったとしても。たとえ子供が産めなくても。僕がずっと君のそばにいるよ」

 彼の口調と瞳には、冗談の色は一切感じられない。

「……ありがと。でも無理だよ。だって私達、まだ高校生だし——」

「だったら学校を卒業して、僕が社会人になってからでいい。だから……だから、僕と結婚してください」

 彼の言葉が、アヤの脳内に反響する。

 ——あれ、どうしてだろう。私、凄く胸が、熱くて苦しいよ。こんな嬉しいことって、この世にあるのかな。アヤの瞳から涙が、止めどなく流れて落ちる。

「うん……嬉しい、よ。とっても、とっても楽しみ…だな」

 アヤは、サトルの手を握りしめた。震える彼女の手を、彼はしっかり握り返してくれた。



 それから——季節が過ぎていった。桜が咲き、蝉が鳴き時雨しぐれ、葉が紅く染まり、雪が降る雪月風花せつげつふうか


 関節が痛み、投薬と理学療法に頼る日々。徐々に自分の身体が、動かなくなる恐怖が否応なくアヤを襲った。その恐怖を和らげてくれたのは、両親の惜しみない愛情と、サトル達の存在だった。


 サトルは、私が病院から自宅療養に切り替えた後も、ずっとお見舞いに来てくれた。時には、ミサキやケンイチ君も連れ立って。

 ケンイチ君は相変わらず、ミサキや山代くんにイジられていたけど、特に嫌がる様子もなく私の前で漫才コントを披露し、笑わせてくれた。

 私が、ウサみんのあだ名の由来は名前からではなく、彼女が小学生からずっとウサギを飼っており溺愛していることからだと、口を滑らせた。その時の、ミサキの慌てっぷりはとても可愛らしくて、ついお腹を抱えて笑ってしまったものだ。

 みんな大学に進学していたが、私も自宅で勉強を続けて、通信制の大学に受かることが出来た。

 ある日、サトルくんがやって来て「就職が決まったよ」と、嬉しそうに報告しに来てくれた。

 そして、とっておきの贈り物があると、私に言った。その日は、ちょうど二月十四日。セントバレンタインディだった。彼はラッピングされた四角い小箱を取り出し、ふたを開ける。

 箱の中には、絢爛けんらんに光る金色の指輪が入っていた。

「ずっと君のそばに居たい。だから結婚してください」と言う。

私は、ありったけの笑顔を浮かべて頷いた。

不束者ふつつかものですが、どうぞよろしくお願いします」

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