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 以来、ステロイドの投薬治療を受けているという。

「必ずお見舞いに行くから」と言ってサトルは、通院先の病院名をアヤに尋ねる。

「ありがとう」

 彼女は微笑みながら、病院名をサトルに告げた。

「実はミサキに協力してもらって、ケンイチくんには今日はご遠慮してもらったの。彼には悪いことしたな」と、バツが悪そうに、アヤが呟く。

「気にしなくていいんじゃないかな。あいつからしたら、ミサキからの命令は(むし)ろ、ご褒美だろうし」サトルは苦笑しながら返す。

「あははっ。それはそーかも」

 笑いながら、彼女は雪がうっすら積もる、駅前の噴水で立ち止まった。

「ねぇ、山代くん。私のこと嫌いになった?」

「……意味がよくわからない、んだけど」

 サトルは、髪に被さった粉雪を払いながら、アヤに目をやる。

「そのまんまの意味。だってさ、私……そのうち見るに耐えないような醜態(しゅうたい)を、あなたに晒すよ。そういう病気だから」

「嫌いになんかならない!」

 サトルは即座に言い切った。声の大きさに、周りの通行人が驚いたほどだ。

「海原さんが、どんな病気になっても関係ない!嫌いになんか、なる訳ない!!」

 自分でも不思議なほどに、スラスラと言葉が吐き出された。アヤは若干、面食らった様子だったが、やがていつもの穏やかな微笑に戻る。

「……そう言ってもらえて安心した」

 クスリと笑いながら囁く彼女に、サトルも笑みで返す。

「安心してもらえて、なによりです」

 照れ臭そうに、頬を指で()くサトルに、彼女は人差し指を突き立てた。

「でも、変に気は使わないでね。——ってカミングアウトしといて何だけど、部活は今まで通りやるし、春の文化祭には例の演目、絶対にお披露目したいし。部長として、これまで以上にビシバシ指導するから!覚悟するように」

「了解しました。部長殿」

 サトルが敬礼のポーズをすると、軽く吹き出した彼女が、唇を動かした。

「ん?なにか言った?」

「何でもないよ。じゃあ、また明日」


 ——あなたのそういうところが好きなんだよ。



 だが、結局、アヤの願いが叶うことは無かった。その日から二週間後。バレンタインの前日に彼女は学校に来なくなった。症状が急激に悪化し、緊急入院したと、担任は教室で皆に説明した。事情を全く知らないケンイチは、クラスの誰よりも騒ぎ立てていた。

 だが、サトルには解っていた。彼女が壮絶な苦しみに闘いながら、学校に来ていたことを。

 

 次の日、学校へ来ると下駄箱をケンイチが、何度も何度も開けたり閉めたりしていた。

「なにやってんの?」

「サトルちゃん。俺さ、今日疲れてるかもしれない。だって下駄箱にチョコレートが入ってねーんだよ!きっと幻覚だ。そうだ、俺の目がおかしくなってるんだぁぁああ」

 相手をする気分では無かった為、サトルはそのまま素通りスルーして放置プレイしておいた。



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