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「あ、の……えーと、海原さん、今日は髪型とか服装とか靴とか、す、凄く可愛いね。と、とっても似合ってる、よ」
ようやく、アヤの心情を読み取ったサトルが、それと無いフォローを入れた。
「ホント?山代くんにそう言ってもらえて、私も嬉しいな!」
さぁ、早くプラネタリウムに行こうよ、と声を弾ませて、ステップでも踏むかのように歩くアヤ。サトルは、彼女のテンションに未だ、ついて行けずにいた。
日曜日ということもあり、科学館の中にあるプラネタリウムは、家族連れやカップルで溢れかえっていた。薄暗い上映室を、アヤとサトルは転ばないよう注意しながら進み、指定の席に座る。
やがて、スピーカーから耳障りの良い、学芸員のナレーションが聴こえ、室内が真っ暗になった。眼前に、宝石のような輝きを放ちながら、星々が浮かび上がる。
前置きののち、学芸員が天体に着いての解説を始めた。
「——冬の夜空を見上げると、オリオン座やおうし座。そしてその中に、小さく煌く星の集まりが……」
ナレーションと共に、巨大スクリーンが、ダイナミックに光を放つ。
「——日本では『すばる』と呼ばれ、昔から人々に親しまれて……」
まるで、遊園地のアトラクションに乗っているような浮遊感。サトルは圧倒的な星屑の美しさに、すっかり魅入られてしまった。
「——平安時代には清少納言が〝星の中ですばるが一番美しい〟と書き、他にも各地で様々な呼び名が……」
ナレーションの饒舌な解説、迫力ある映像美、立体音響の全てが、サトルを無限の宇宙へ、そして神秘に誘っていった。
「凄かったね。プラネタリウム!」
館内のカフェで、アヤとサトルは先ほどの天体観測に、会話の花を咲かせる。
「うん、僕もプラネタリウムは初めてだけど、迫力もあって。ちょっと感動しちゃったよ」
ホットのカフェラテを啜りながら、サトルは同意の相槌を打つ。
「……本当、来れてよかった」
ふと、アヤが視線をサトルから外し、遠い目をした。
「ねぇ、山代くん。あなたにどうしても、話しておきたいことがあるんだ」
「うん?どうしたの」
アヤの表情からは、さっきまでの笑みが消えている。
「あのね。私、もうすぐ死ぬんだ」
一瞬、彼女がなにを言っているのか理解出来なかった。死ぬ、だって?そんなことある訳が——。アヤの瞳から視線を外せないまま、時が止まったような沈黙が、場に横たわる。
「……冗談、だよね?」
サトルの喉から、やっと出た言葉。それを聞いたアヤは微笑を浮かべた。
「厳密に言うとね。死ぬっていうのは言い過ぎかもしれない。今は医療が進歩してるから、きちんと治療を受ければ、死んじゃう確率は低いかも」
プラネタリウムで感じた心地いい余韻など、とうに吹き飛んでいた。
「それは、つまり……海原さんは相当、重い病気に罹ってるってこと?」




