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90話 死の病

ほぼ同時にカルンとリリスがアルマールに到着した。

二人ともそのままシトリーの元へ急ぐ。


「シトリー、いるカ!!」


書斎のドアをドンッと勢いよく開ける。

だが、部屋の中はもぬけの殻であった。

どうしたものかと悩む二人の元へ雪恋が駆け込んできた。


「二人とも戻られてましたか。

丁度、書き置きを残そうと思ってたところです」

「急いで戻って来たンダ、シトリーはどこダ?」

「皆さん、医務室にいます、こちらへ」

「医務室…?」


リリスは嫌な予感を抱えながら、雪恋に付いて医務室へと向かう。

医務室では一人の女性が横たわっており、息苦しそうに喘いでいた。

そうモニカだ。

その側で手を握っているのは父親のエグバートである。


「二人とも戻って来ましたノネ。

早速ですケド、これを見て欲しいデスワ」


シトリーはモニカの腕を持ち上げる。

そこには黒い斑点が浮き出ていた。


「これハ…村で見たのと同じダゼ。

まだ初期症状だが、話を聞いた限りじゃどんどん斑点が増えていき、三週間程で亡くなるソウダ…」

「おい、待てよ!

助かる例もあるんだろお!!

まだ娘は十代だぞ!」

「助かった例は……ネエ。

100%の確率で死に至っているンダ」


リリスは辛いが事実を述べている。

変な期待を持たせるより事実を告げる方が良いと判断したのだった。


「何とか助ける方法はねえのかあ!?

タルトの嬢ちゃんは間に合うのかよ!?

俺が代わりに死ぬからモニカだけは助けてくれよ!

頼む…頼むぜぇ…誰でも良いから…」


父親の悲痛な気持ちが伝わり、誰も答えられないでいた。

その中で毅然とした態度でシトリーが切り出す。


「助かるとは保証は出来ませんが、まずは行動しますワヨ。

このまま死なせたら留守を任されたのに、タルト様に顔向け出来まセンワ」

「助かる…のか?」

「はっきり言って分かりマセンワ。

ただ、何もしないと死は間違いありマセンワネ。

桜華、リリス、カルン、会議室に移動しますワヨ!!」


いつも冷静なシトリーが大声を出すのは珍しい。

真剣な眼差しにエグバートは娘の命を預ける決心をした。


「俺に出来ることはあるか?

何でも命じてくれ…」

「…ここにいて、モニカを励ましナサイ。

それは貴方にしか出来ない事デスワ」

「よし、分かったぜえ!!」


二人を医務室に残し、会議室へ移動した。

空気は重い。

襲撃した魔物を倒せば良いなんて単純な話ではない。

病気という未知なモノとの闘いなのだ。

それを全員理解をしているからこそ、口を開けずにいた。

しかし、タルトにあとを託されたシトリーは、ただ待つだけなんて出来なかった。


「では、調査に行った三人から報告を聞きマショウ。

桜華からは最初に寄った村の話は聞いたので、二人は新情報があるカシラ?」

「戻る途中でカルンと合流して、情報を交換しあったカラ、ワタシから報告するぜ。

村によって感染の進行度には差があって、家族単位で掛かるノガ、多い気がシタゼ」

「家族って事は接触感染するのかあ?」

「それがそうとも言えネエンダ。

感染した子供と直前まで遊んでいた子供達は平気ダッタ。

感染源は今のところ不明ダゼ」

「他に気付いた事はありマセンノ?

どんな小さな事でも構いまセンワ」

「そうダナ…そういえば遠い村ほど感染が始まったのが早いんじゃネエカ」


シトリーは急いで近隣の地図を卓上へ広げた。

これはタルトが近代的な測定方法で作成した精巧な地図で縮尺も完璧であった。

まだ、アルマール近郊しか出来ていないが、地図は戦術上でも重要な情報である事から王国全体を作る予定だった。

その地図にリリスとカルンが日付を書いた紙切れを置いていく。


「アルマールから離れるほど早くに感染者が出てイマスワネ」

「この先って森と海しかねえんじゃないか?

もしかして海から何か出てきたかあ?」

「姫様、海の生物は陸には上がれませんよ…」

「いやあ、未知の化け物かもしれねえぜ。

そしたらぶった斬ってやるんだけどなあ」


桜華は剣術以外に得意なものはなかった。

斬れるか斬れないかで判断しているのだ。

ここでカルンがあることを思い出す。


「ここってちょっと前に行った遺跡の場所じゃネエカ?」

「確かにタルト様が行かれた遺跡デスワネ。

此処から何かが出てきた可能性はありマスノ?」

「いや、確かに封印したはずダゼ…」

「そうデスノ…。

何者かは不明ですが南から感染源が北へ向かってるのは間違いありマセンワ。

この原因の特定は重要事項に決定シマス。

もう一つ議論するのはこれデスワ」


シトリーは封筒を取り出す。

表にはタルトの字でトラの巻と書いてある。


「これは何か有事の際に開くようにタルト様からお預かりしたものデスワ」


封筒を開くと何枚かの紙が入っている。

その一枚に流行り病の対処法と記載されたものがあった。


「この事態を予測されたとは恐ろしい方デスワネ。

これはリリス宛になってイマスワ」

「ワタシ宛?どれ………。

急いでここに記載されるものを用意してクレ!」


全員で指定されたモノを集めるとリリスが何かを作り始めた。

やがて透明な液体が入った瓶が出来上がる。

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