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83話 七国会議

会議当日、朝食を終えたタルトはドレスに着替えるため、自室に戻っている。

メイドが手伝ってくれて、慣れないドレスに四苦八苦する。


「う…く、苦しぃ…ギブ、ギブです…」


背中の紐をぎゅっと締め付けられて苦悶の表情になっていた。


「タルトの着替えを見ていると面白いな。

さっきの表情は傑作だったぞ」

「うぅ…だから、ドレスやハイヒールは苦手なんです…。

ティアナさんは普段着だからズルいじゃないですか」

「ワタシは小さい子らと留守番だから良いんだよ。

仮に出席しても人間のドレスじゃなく、エルフの正装だしね、

なんなら、戦闘時の服装で行けば?

あれもドレスといえばドレスっぽいよ」

「絶対に嫌ですっ!!

王様が集まるのに変態と思われちゃうじゃないですか!」


戦闘時には思わないのか?と喉まで出かかったが、飲み込むティアナ。


「さて、冗談はそれくらいにして行くぞ、タルト殿」

「あ、はい、ノルンさん。

…それにしてもドレスが似合ってて良いですね…」

「可愛らしくてタルト殿も良いと思うがな」

「ドレス着たら大人っぽいのをイメージしちゃいますよ…」


この時、時間となりゼノンが呼びに来たので、渋々、会議に向かう事にした。

暫く通路を進むと兵士が明らかに増え、厳重な警備された部屋に近づいて来てるのが分かる。

やがて、他の部屋とは比較が不要なくらい立派な扉の前に着く。

扉の前に立ち止まり、ゼノンがタルトに話しかけた。


「陛下含め各国の王は既にお座りになられております。

聖女様は今回、特別な来賓ですので最後に入室することになります」

「き、緊張してきた…。

そうだ、掌に人と書いて飲む…飲む…」

「何をやっているのだ…」


緊張するタルトと呆れてるノルン。

それを微笑ましく眺めていたゼノンが合図すると、兵士が重そうな扉を左右から開いていく。


部屋に入ると全員の視線が集まる。

中は豪華な飾りつけのされた部屋で、天井にも見事な絵画の彩られていた。

中央に立派な円卓が設置されており、各国の王が並んで座っている。

円卓なのはどの国も対等の立場であることを表す。

更に王の後ろには大臣が座っており、各国は二名ずつの参加でありオーナ国の書記が部屋の全員である。

ここにタルトとノルンが今日のゲストであった。

先に入ったゼノンがタルトが来るのを待っており、円卓に着くや否や紹介が始まった。


「皆様、ご紹介させて頂きます。

こちらがバーニシアに遣わされました女神の御使いである聖女タルト様です」

「は、初めまして…た、タルトと申します!」

「そして、聖女様の後ろにおりますのは天使ノルン様でございます」

「本日はタルト殿の護衛として参加しているノルンだ。

以後、宜しく頼む」


各国の反応は様々である。

下から上まで値踏みするような者。

温かく見守る者。

大臣とひそひそと話す者、等々。


「では、お二人は此方にお座りください。

次に聖女様に各国の王をご紹介致します。

右から順番にレッジド国オスウィ王」


商業国家らしく商人っぽく恰幅のあるオジサンであり、先程からジロジロと見てくる。


「その隣がケント国バートン王」


こちらは優しそうな白い髭を生やしたお爺さんであり、最年長かと思われる。

農業国家だから争いから縁がないのだろう。


「そして、ゴドディン国エルベール王」


鍛冶国家と言われるだけあり、頑固親父っぽく、どこかエグバートと雰囲気は似てる。


「中央は開催国であるディアラ国コリンズ王」


如何にも顔に悪代官と書いてあるような人相である。


「左に移りましてドゥムノニア国バラモア王」


鍛え抜かれた筋肉と隙のない佇まいの軍人風であるが、どこか威厳を感じさせる。

無表情で鋭い視線でタルトを見ており、心の奥まで見抜かれそうであった。

最強の国の王は伊達ではないようだ。


「その左手はポーウィス国ディエゴ王」


唯一、若い王さまであり容姿端麗だ。

エルフの血が混じってると思うほど、不思議な雰囲気を纏っている。


「最後に我がバーニシア王になります」


紹介も終わりバーニシア王の後ろに座るゼノン。

次に席を立ったのは先日に会った、ディアラの大臣マレーである。


「では、本日の議題をご説明させて頂きます。

ご承知かと思いますが、少し前にバーニシア国のアルマールという町に三万近い魔物の軍勢が押し寄せました。

ところが建物や人民への被害を一切、出さずに大軍勢の襲撃を押し返したのです。

更に攻め寄せた魔物を殲滅させて…。

我が国の調査によれば、ここにおられるタルト様が千人ほどの兵を率いて撃退されたとの事です。

はっきりいって常識から外れた戦果ですので、詳細をこの会議で確認し今後の防衛に役立てたいと思います」


各国の王達は静かにマレーの報告に耳を傾けている。


「そして、もうひとつはアルマールには闇の眷属と共に暮らしている事です。

先の防衛戦にも参加しており、確認されたのは悪魔、鬼、獣人となります。

かなりの強者揃いで脅威とならないか懸念しております。

まずはタルト様よりどのように奇跡のような防衛をされたのかご説明願えますか?」


急なキラーパスにビクッとなるタルト。

周りを見ると発言を待つように見つめられており、余計に頭が真っ白になった。


「えっと………防衛の事ですよね…?

確かに相手は三万くらいいまして、ゴブリンキングや牛鬼に…サイクロプスとギガンテスもいましたね」


魔物の名前をあげるとざわざわとどよめきが起こった。

ゴドディン王が我慢しきれず声を荒げて質問する。


「おいおい、サイクロプスやギガンテスを倒したっちゅうんか?

犠牲者も出さずに、あんなデカブツどない倒しんや?」

「えっとーですね…正面からの進行だと思いまして、前面に五重の城壁を作りまして…」

「そんな話が信じられるかい!

急にそんな立派なものが作れる訳ないだろう?

工業国家の我が国でも不可能やで」

「それはですね…私が魔法でちょいちょいっと…」

「そんな魔法があるかい!」

「ですよねー…じゃあ、ちょっと実演を。

ノルンさん、いくつか硬貨を貸してください」


タルトはノルンから数枚の硬貨を受け取り、机上に並べた。

全員、それを一挙手一投足をじっと見つめている。


「では、いきますねー、それ!」


合図と共に硬貨は変型を開始し、城壁のミニチュアが完成した。

これには先程より大きなざわめきが起こる。


「こんな感じに大地からにょきっと城壁を作りまして」

「そんなアホみたいな魔法があるんかい…」


静観していたドゥムノニア王が口を開いた。


「確かに俺達の目の前で実演をしたのだ。

聞いたこともない魔法だが、目撃したのだから事実なのだろう。

だが、こんな一瞬で城壁を造られては今までの戦争の常識は覆るな」

「私も同意見です。

ポーウィスはエルフの里もあり、魔法研究が盛んですが、今見たものは前代未聞です。

土属性が近いですが、金属の操作は出来ません」


ポーウィス王が同意を示す。

ドゥムノニア王は尚も続ける。


「神ならざる奇跡を起こすのだから聖女と呼ばれるのだろう。

それに先の戦争で面白いものを手に入れたから、皆に見て貰いたい」


合図に併せて、後ろの大臣が布袋から見たことのあるモノを取り出した。


「これはアルマールで起こった戦で使用された弩弓と呼ばれる武器だそうだ。

試したところ、通常の弓の倍は飛距離が伸び、命中度は格段に優れている。

何よりも驚異なのは素人でも簡単に扱える事だ。

極端に言えば子供でも弓の達人より飛ばすことが出来、簡単に人が殺せるのだ。

これは聖女が考案したと聞いているが相違ないな?」


世に広めるつもりがなかった弩弓が急に現れて、愕然とするタルト。


「…えぇ…確かに私が作り方を皆に教えました」

「叡智の女神という肩書きも伊達ではないようだな。

先の戦争では、この大型の弩が城壁に設置されサイクロプスやギガンテスにダメージを与えたという報告を受けている。

これがあれば今まで苦戦し兵が犠牲になっていた魔物も容易に倒せるのだ。

それならよいが、これを国と国の戦争で使われたら圧倒的優位に立てるのだ。

新兵でもこれを持てば即戦力で、弩弓の部隊があれば敵はいないだろう」

「何と凄い性能だ…」

「これは量産可能なのか?」


ざわざわと隣同士で話し合い、弩の作りをじっくりと見合っている。

タルトはこっそりとゼノンに質問する。


「秘密にしたのに何でばれちゃったんでしょうか?」

「各国はお互いに情報を探るために草という者を使っています。

アルマールの住民にも混じっていたのでしょう」


草というのはスパイの一種で住民のようにその地で生活し、情報を流すだけが仕事だ。

長いものでは世代を越えて草を続ける家系もあり見つけるのは困難であった。


ドゥムノニア王は各国の王の反応を見つつ、ある提案をする。


「俺としては聖女の持ち得る奇跡と叡智は七国で平等に享受すべきだと考える。

バーニシア王よ、反対はするまいな?」

「我が国としても独占するつもりはない。

ただ、聖女様の御心に従うのみだ」

「皆はどう思う?」


ここで開催国であるディアラ王が手を挙げた。


「聖女の叡智はとても魅力的ですが、先に申し上げた通り信用して良いかを判断したいと思う。

闇の眷属を従え、これ以上、影響力が大きくなってから反旗を翻されたら驚異以外の何者でもない。

これについてはどう思いますかな?」


この質問に王達もどう答えるか長考し、暫く沈黙が続いた。

沈黙を破るように最年長のケント王がタルトをじっと見据え、声をかける。

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