表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/293

80話 ディアラ王都到着

コロナの影響で外出自粛している方も多いと思います。

少しでも楽しんで頂けるよう頑張ってアップしていきますね!

ディアラの王都に到着した一行は、正門を難なく通り抜け王城へ真っ直ぐ向かっている。

このディアラはバーニシアとほぼ同じくらいの規模であり、隣国なので文化も良く似ている。

王都も街並みはあまり変わらないようだが、人々の賑わいが何処か静かに感じる。

タルトの尽力もあり、商流が活発なバーニシアは以前と違い、喧騒が激しく思えるくらい街は活発であった。

そんな街並みをタルトは馬車の窓から眺めている。


「宿屋に泊まるんじゃないんですか?」

「王城は広く別館として迎賓館も用意されております。

兵士は別の宿舎になりますが、特別な来賓である聖女様は迎賓館となります」


これは事前にゼノンが確認しておいた内容である。

王城内が一番安全である事から、特にお願いしていたのである。

警備が強固というより各国の王が宿泊している迎賓館に賊が侵入するなど、国家として恥以外でも何でもない。

警備がザルであることを世間に露呈する選択肢は選ばないであろうと読んだ結果であった。


「明日も会議は始まりませんので、ゆっくりと街を見学されては如何ですかな?

街の外に出なければ安全でしょうから、バーニシアと違った料理を楽しむのも良いかと思います」

「ゼノン様、聖女様を襲う者の方が心配してしまいます。

まあ、このオスワルドが指一本足りとも聖女様に触れさせませんが」

「オスワルドさん、私を何だと思ってるんですかっ!?

そんな暴力的じゃないですから!」

「ははは、オスワルドも冗談で仰ったのでしょう。

ゆっくり観光でもして長旅の疲れを癒してください」

「むぅぅ…分かりましたよぉ。

リーシャちゃん達と美味しいもの巡りするからいいです。

オスワルドさんはお留守番しててください」


へそを曲げてしまったタルトであった。

こうして一行は王城へ到着し、馬車を降りる。

門の前には警備の兵士がずらっと並んでおり、厳戒体制であるのが分かる。

兵士より一歩前に立っている貴族っぽい服装の男性がお辞儀をしながら挨拶をする。


「長旅お疲れ様でございます。

私は大臣のマレーでございます。

バーニシア王、ゼノン殿、お久し振りですね。

二年ぶりになるでしょうか」

「おお、久しいな、マレーよ。

皆はもう揃っておるのか?」

「あとポーウィス王が到着されておりません。

ですが、予定通りと伝令が来ておりますので、明後日には会議開催となります。」

「それは何よりじゃ、では、明日までゆっくりと休ませて貰おうかの」

「ところで、そちらのお嬢様が聖女様でございますか?」

「あっ、はい、タルトといいます。

えーっと、お招き頂きましてありがとうございます」

「ディアラ王も会うのを楽しみにしておりました。

会議までごゆるりとおくつろぎください。

そういえば、最近、魔物の目撃が多くございますから外に出られる時はお気をつけください」

「ここに来る途中にも魔物の襲撃に会いました。

聖女様のお陰で何事もありませんでしたが」

「ゼノン殿、それは大変でしたな。

街道沿いの警備の兵を増やすように進言しておきましょう。

では、部屋までご案内させますので」


マレーはメイドに指示を出すと中へ戻っていった。


「魔物の目撃なんて白々しい言い訳ですね。

聖女様、ここにいる間は大丈夫だとは思いますが、念のため警戒はしておいてください」

「はぁ、分かりました、ゼノンさん。

何か裏でこそこそされるのって面倒ですね…正面から正々堂々来れば良いのに…」

「やっぱりタルト殿は武闘派なんじゃないか?」

「ノルンさんまでー、ひどいですよ!

もう、早く部屋に行きましょう!」


タルトは頬を膨らませたまま、メイドの後に付いて部屋へ向かった。


「聖女様は機嫌を損ねてしまったようじゃの。

皆のもの、程ほどにの」

「全く皆様、陛下の仰る通り悪い冗談は程ほどにお願いしますよ。

さて、どうしましょうか」

「それなら大丈夫だ、リーシャ達、タルト殿を宜しく頼むぞ」

「わ、わかりました!

がんばってきます」


リーシャ、ミミ、リリーはタルトを走って追いかけていく。

各自も部屋に案内してもらい、ゆっくりと寛いだ。


翌朝にはいつも通りのタルトに戻っていたのだった。

この日の予定はないので、タルトと子供達、ノルンは街を観光することとなった。

王やゼノン、オスワルドは各所に挨拶回りをしており、ティアナも欲しいものがあるようで単独行動である。


「では、出発しましょう!

と、その前にリーシャちゃんとミミちゃんは耳と尻尾で、ノルンさんは羽を魔法で見えないようにっと。

リリーちゃんは問題ないか」


前回、バーニシア王都での反省を活かし、最初から変装する事にした。

基本的に人間以外の種族がディアラにはいないため、どうしても人の目を惹き付けて目立ってしまうのだ。


「どんな料理があるか見たり、皆へのお土産を物色しておきましょう」

「私は特に希望はないので、タルト殿達に任せる。

一応、警護の目的はそれで果たせるしな」

「リーシャちゃん達は行きたいところある?」

「よくわからないので、タルトさまについていきます」

「ミミもいろいろなばしょがみれれば、どこでもいいのです」

「…任せる」

「じゃあ、ゆっくり歩きながら探そうかー。

見たいものがあれば言ってね」


一行は一番大きい商店街の場所を教えてもらい、気になるお店をゆっくりと見て回る。

途中、美味しいと噂を聞いた料理屋に立ち寄りお昼を食べた。

食後に何気なく路地裏が気になったタルトはフラッと足をそちらに向ける。

日本でも路地裏には名店が隠れてることが多いので、此処にはどんな店があるか気になったのだ。

路地裏を少し進んだだけで雰囲気が一変した。

人々の喧騒が聴こえなくなり、昼間でも薄暗く感じる。

店で扱ってるものも表の通りでは出せない、曰く付きの商品や等級が低いものばかりであった。

その中で一際大きい建物が路地の奥に立っている。


「タルト殿、これ以上進むのは止めた方がいい…」

「急にどうしたんですか、ノルンさん?

この先に何があるんですか?」


その大きな建物の少し手前でノルンが行く手を阻む。


「この先には人間の闇がある。

出来れば見て欲しくないのだ」

「人間の闇…ですか。

ノルンさんはそれをご存知何ですね?」

「…ああ、人間の数ある闇の一端と言っていい。

長く生きている間に人間の良い部分も悪い部分も見てきたつもりだ」

「ノルンさんは優しいですね…。

私が傷付かないように遠ざけてようとしてるのが伝わります。

でも、これから色んな辛いことも見るでしょうし、体験をすると思うんです…。

でも、知らない事から逃げるんじゃなくて受け止められるようになりたいんです」

「…そうか…私も過保護にし過ぎてたのかも知れないな」

「もう泣き虫とは言わせませんから!」

「だが、辛いときは皆を頼るんだぞ。

信頼できる仲間はたくさんいるんだからな」

「はい!!

それで…この先には何があるんですか?」


ノルンは真剣な顔付きに変わる。


「あの先に大きな建物があるのが見えるだろう?

あれは……奴隷商人の店だ」

「奴隷…」


タルトの表情は強張る。

まず脳裏によぎったのはリーシャと出会った時の事であった。

あの時、助けられなければリーシャが向かうはずだった場所。

そう考えると悲しみや怒りといった感情が涌き出てくる。


「バーニシアは元々、奴隷には寛容な場所だったと聞く。

だが、他の国での奴隷への扱いは酷い場所もある。

あそこでどんなものがあるか想像出来るだろう?」

「奴隷って…どんな種族がいるんですか?」

「聞いた話では…悪魔や鬼は従える事が難しいから、まずいないらしい。

純血の獣人も同様なので、奴隷に多いのは…獣人のハーフだ…。

特に小柄で非力な種族は人気が高いようだ…そう…リーシャやミミのような種族が」


じっと聞いていたリーシャやミミは、いつの間にかタルトの手を握っている。

そんな二人の手を優しく握り返す。


「ここまで聞いても気持ちは変わらず、見に行く勇気はあるか?」


タルトはリーシャとミミをゆっくり見ながら、深呼吸をひとつした。

タルトの答えは…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ