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73話 隠し階段

ズズッズズッと重量感ある音が響き渡る。

隙間からカビ臭い空気が流れ込んできたので、長い時間、開けられた事がないのが分かるのだ。

タルトの炎によってうっすらとだが、奥の部屋の中が見えるようになってくる。

同じようにドーム上の構造で奥には先程のキメラ2匹が鎮座していた。


ズズッズズッズズッ、ガシャーーン…


「ふぅ…何も見なかった事にしよう!」

「そうダナ、ここには何もなかったゼ」

「おいおい、待て待てっ!

さっき二人でフラグを立てたのが原因だろう!!」

「やだなー、ティアナさん。

奥の部屋は空っぽでしたよー」

「ウン、間違いなく空っぽダッタナ」

「現実逃避するなー!!

さっきのキメラが仲良く2匹も座っていただろうが!

全くこの遺跡は侵入者をどうしても殺したいようだな」

「はぁ…分かりましたよ…確かにいましたよね。

早く入ってきて欲しそうにソワソワとしてましたよ…。

まるで次の日の遠足が楽しみで寝れない子供のように」

「チッ、またアイツと闘うノカ…。

二匹は厄介ダナー」

「だよねー、誰か負傷者出ちゃいそうだよね」

「だからといって、いきなり扉を閉めるのか…。

それにしても、あの先に精霊はいるのだろうか?

まあ、あと何回闘うか分からないが行くしかないのか」

「そうですね、一気に倒す作戦を考えましょう!」


タルト達が作戦会議をしてる間、リーシャとミミ、リリーは部屋の中を探索していた。

壁の彫刻を見たり、キメラの遺体を調べたりして遊んでいる。

数メートルはあるであろうキメラの尻尾を持ち上げた時、リーシャとミミの耳がピクピクっと動く。


「なにかみずのおとがきこえるのです」

「ミミちゃん、このへんからだよね?」

「…何も無い…」

「おとだけきこえるのです」

「タルトさまをよんでくるね!」


リーシャがタルトに走りよっていく。

急に呼ばれて不思議な顔をして近づいてくるタルト。


「この辺で水の音が聞こえるの??

……ぅうーん…何も聞こえない…」

「かすかですが、きこえるのです」

「リーシャとミミちゃんにはきこえます」

「勿論、二人が言うのだから本当、なんだろうね…。

そうだ、ちょっと待っててね」


タルトは目を閉じたまま手頃な石を床に落とした。

そのまま集中したまま、じっとしている。


「この床の下に空洞があるみたい…」


急にしゃがんだと思ったら床を調べ始めた。

音の反射を利用したエコーで周囲の構造を調べたのだった。

現代でも遺跡や化石調査で利用される方法である。

床は長方形の石が並べて配置された形式をしており、さっきの戦闘で端が欠けた石がいくつかある。

その中のひとつをタルトが調べてみると欠けた隙間の下に真っ暗な空間が微かに見えた。


「この石は物凄い重たそうだし、ピッタリとはまっていて持ち上がらないな。

どうするのだ、タルト?」

「そうですねー、ええーい、ゼロ・グラビティ!」


タルトの魔法によって巨大な石はズズッと浮かび上がった。

そのままゆっくりと位置をずらして、地面に降ろす。


「こんなもんかなー」

「いやっ、待て待てっ!!!

何だ今のは!?

石が重さが無くなったように浮いたんたぞっ!

そんな属性があるものか!」

「えぇー…なんというか…重力に干渉してー」

「ジュウリョク…とは何だ?」

「そんな難しいこと聞かれても…」


タルトは勉強が出来ない。

脳内で必死にウルへ助けを求めた。


「えーっと…重力とは…簡単にいうと地面が引っ張る力の事です」

「地面が引っ張る…?

物に重さがある訳じゃなく、引っ張られているだと…成る程、面白い考え方だ。

一体、どこで習ったのだ?」

「それは…えーと…そう!

地面に果物が落下するのを見て、気付いたんです」


この話はタルトの法則として未来永劫、語り継がれるのであった。


「君は本当に面白いな!

その突飛な考え方…というか叡知と言うべきか…。

一見は頭が悪そうな言動なんだがな」

「それ誉めてないですよねっ!?」

「どうでもいいけど、階段らしきモノがあるんだが降りないノカ?」


二人のやり取りを呆れて見ているカルンが突っ込みを入れる。


「そうだった!

これを見つけたリーシャちゃんとミミちゃんは凄いねー」

「そんなことっ!じゅうじんはみみがいいんです。

ミミちゃんのほうがみつけたのははやかったです」

「そうなんだー、良い子だからぎゅっとナデナデしてあげるねー」

「ふわわわわぁ!し、しっぽはだめなのですー!」

「はぁ、はぁ、可愛いよミミちゃん!

モフモフして気持ちいい!」

「みみにゆびをいれちゃだめ…なのです…」


ティアナはポカンと成り行きを見ている。


「あれで…聖女様…なのか?」

「ああ、ミミよ羨ましいぞ。

このオスワルドもぎゅっとされたいです!」

「お前もあっち側か…」

「マア、いつもの光景だけドナー。

そのうち慣れるゼ」

「悪魔が一番マトモとは…」

「それ誉めてるノカ?」


階段の事などすっかり忘れてはしゃいでいるタルト達。


「そろそろ先に進まないのか…?」

「えっ?あ、そうですね。

十分に堪能…じゃなくて誉めたので行きましょうか!」

「下の階段を進むので良いノカ?」

「おそらく先程の部屋はトラップだったのだろう。

この隠し階段に気付かずに進むと死ぬまで闘わせられたのかもしれないな」

「二人とも本当に凄いね!」

「分からずに誉めてたのか…」

「まあまあ、良いじゃないですか。

では、改めて再出発です!」


タルト一行は床に空いた穴に現れた石階段をゆっくりと降り始めた。

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