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幕間 バレンタインパニック

本日はバレンタイン。

メインストーリーから外れた、イベントにちなんだ話になります!

この異世界でも四季があるようで、最近、めっきり気温が下がってきていた。

町の商店街で面白い植物を発見し、タルトはあるイベントを思い出した。

そこでエグバートのキッチンを借りて、あるものの製作に取り組んでいた。

その噂を聞き付けたシトリー、リリス、カルンは様子見と出来上がった物の試食をしようとテーブルに座って待っていた。


「タルト様の手料理が食べれるとは、今日は本当に良い日デスワネ」

「何でも見たことないお菓子らしいカラナ。

お菓子の事ならアタシに任せて欲しいゼ」

「これが成功したら、広めるらしいカラナ。

ワタシも覚えてみるカナ。

薬や毒の精製と意外と似てるんダゼ」


待ってる間に歓談していると、厨房のドアが勢い良く開いてタルトが出てきた。

その手には皿を持っており、満面の笑みで近寄ってくる。


「お待たせしましたーー!!

こういうのは得意じゃないんですが、頑張って作りました。

ぜひ、味見をして感想を教えてください!」


テーブルに置かれた皿の上には、黒っぽいというか茶色っぽいような四角い物体が乗っている。


「見た目はあまり良くないですが、味は気に入ってくれると良いんですが…」


タルトは気まずそうにモジモジとしている。


「タルト様のお手製ですから、不味いわけありマセンワ」

「マア、見た目より味が重要ダカラナ。

早速、食べてみようゼ!」


三人は更から一つ手で取って、同時に口に放り込んだ。


パクっ

………

……


(ハッ…まさか悪魔であるワタクシが意識を飛ばしてしまうトハ…。

これは何という食べ物…いえ、これはそもそも食べ物なんデスノ?

食べたときは甘くて幸せな気持ちでしたが、そのまま頭が真っ白になって天に昇りそうになりマシタワ…。

これは間違いなく食材以外に何か毒物が入っていたのデスワ。

それをタルト様が気付かなかっただけデハ?)


周囲をみるとリリスとカルンも同様の反応を示していた。

三人は長い付き合いなので、お互いに目配せで意志疎通を始めた。


(お二人も意識が飛んだのカシラ?)

(何なんだ、コレハ!?

一瞬、魂が体から離れた気がしたゼ!)

(ワタシも同様の体験をしたヨ。

断言するが、これは毒物ではねえナ…)

(何ですッテ!

でも、リリスが言うなら間違いないのデショウ…)

(特に魔力も感じねえナ…。

一体、何で出来てるんダ…?)


「美味しくなかったですか…?」


不安そうな顔でタルトが見つめている。


(クッ、何てピュアな目で見つめているのカシラ!

とても、不味いなんて言えマセンワ…)


「えぇ…とっても美味しくて天に昇りそうデシタワ…」

「本当ですか!!

初めて作ったから不安だったんですよ!

美味しいならいっぱい作らないと!」


タルトは満面の笑みで喜んで、跳びはねている。


(オイッ、シトリー!

何で正直に不味いって言わねえンダ?)

(ソウダゾ、こんなものが大量に作成されたら死亡確定ダ!)

(なら貴女達が言いナサイ!

ワタクシには、あんなタルト様に言えマセンワ…)


「カルンちゃん、美味しかったなら全部、食べても大丈夫だよ!

今からもっと作るから」

「エッ!?

イヤ、その…ダナ、朝食を食べ過ぎてダナ…。

お腹いっぱいだから、後で食べるゼ…」

「そっかー、じゃあ、これは皆で食べてね」


何とか誤魔化せてほっとするカルンであった。


「そうだ!

リーシャちゃん達は学校にいるから、持ってってあげないと。

子供達は甘いもの好きだからいっぱい作らないとね!」


(オイッ、どうするんダ?

このままじゃ、あの最終兵器(リーサルウェポン)が世の中に拡散してしまうゾ!

アタシ達でさえ、あの状態になるくらいダ。

リーシャ達じゃ絶対に死ぬゾ!)

(あのドアが開かれることは、パンドラの箱が開くのと同意義ダナ…。

シトリー、どうにかシロヨ!)

(何でワタクシデスノ!?)

(年長者だろうガ!)

(これ以上、被害者が増える前に止める方法を考えろヨ!)

(全く、都合の良い時だけ年長者を引き合いに出すのデスカラ…)


「タルト様…ちなみに、このお菓子は何というモノでしょうカ…?」

「これはチョコレートというお菓子を出来るだけ、再現したものです。

この前、商店街で似たような植物を見つけたものですから、試しに作ってみたんですよ!

このお菓子はある特別な日に好きな相手に気持ちを伝える為にあげるものです。

私は日頃の感謝の意味を込めて皆に作ろうかなあなんて」

「ソ、ソウデスワ!

ぜひ、作り方を見せて頂けマスカ?」

「もちろん良いですよ!

じゃあ、キッチンに行きましょう」


(二人とも時間を稼ぐから、援軍を呼んで来なサイ!

可能であれば、調理過程で原因が分かるかもしれマセンワ)

(サスガ、シトリーダナ!

待ってろよ、すぐに連れてくるカラナ)


二人はこそこそと外に出ていった。

残されたシトリーはタルトの調理を観察することにした。


「この果物の種が使えたんですよね。

これを発酵、乾燥、焙煎すると、こんなものが出来るんです」


(これは特に毒性のない果物デスワネ。

種も無害だったはず…)


「これを粉にしてバターや砂糖、ミルクなどを混ぜ合わせて…」


(特に問題ない材料だけデスワネ。

一体、何処に問題ガ?)


シトリーは部屋の中を見渡したが、特に変な物もおいていなかった。

一瞬、目を離した隙に混ぜていたものが七色に光っていた。


(ナッ…馬鹿ナ…食品が七色に光る…ダト…。

そんな現象は聞いた事もないデスワ…)


「タルト様…何故、光ってるのデショウ?」

「えっ?こういうものじゃないんですか?

これをこうやって冷やすと色が元に戻るんですよねー。

不思議な事もあるもんですね!」

「ソウ…デスワネ…。

ところで、味見はした方が宜しいカト…」

「そうだね、ぱくっ…うぅーん、美味しい!」


(やはり、タルト様には効果がないようデスワネ…それとも、味覚が変わってル…?。

イヤ、いつも同じものを食べて同じ感想のハズ…)


一方、その頃、リリスとカルンは助っ人を探して連れてきていた。

リリスはオスワルド、カルンは桜華を連れて来ていた。


「リリス様、急ぎの用件とは何でしょうか?」

「そうだぜ、何も言わず連れてこられたんじゃ、分からねえよ」

「何も言わず、これを食べてみてクレ。

タルトが作ったお菓子ダ」

「何とっ!?これは聖女様の手作りとは!」

「ほお、見たことねえと思ったら、そういうことかあ」


二人は更からチョコレートを取ると、口に入れた。


「くふっ…」

「なっ…」


オスワルドは机に突っ伏してしまい、桜華は座ったまま意識がなくなっていた。

それも束の間ですぐに戻ってきたようだ。


「今、亡き両親が手を振っていたような…」

「何だこの毒物はあ!

これは一体、何で出来てやがるっ!」

「それは分からねえが、どっちでも良いからタルトに不味いと言ってクレ…」


リリスは二人に経緯を伝えた。


「私には死んでも出来ません!

言うくらいなこれを全部食べて死にます!」

「いくら、うちでも言えねえよ…。

そんな気持ちを込められたらなぁ…」


丁度、その時に追加のチョコレートを持って、タルトとシトリーが出てきた。


「あれっ?

オスワルドさんと桜華さんも来てたんですか、チョコレート食べました?

ぜひ、感想を教えてください!」

「このオスワルド、今まで食べたものの中で一番美味しかったです!」

「そ、そうだな…、美味しかったんじゃないか…」

「本当ですか!良かったー」


(何ですか、コレハ?

全く役に立たないじゃナイ!)

(そういうシトリーは何か分かったノカ?)

(それが…材料は問題なく、行程も…。

何故か途中で七色に光って…)

(何だソレ!?)

(どういう理屈ダヨ!)

(ワタクシ達ごときがタルト様を計ることなんて、おこがましかったのデスワ…)


「さーて、学校に行かないと!

リーシャちゃん達も喜んでくれるかな?」


(すまない、リーシャ…。

アタシでは止められなかっタ…)


タルト以外の全員が絶望に立たされていた。

タルトの手が玄関のドアノブを握り、遂に禁断のドアが開けられそうになった瞬間、救世主は突然、現れた。


「おっ、何ですか、これ?

お菓子っぽいですね、いただきまーす!」


ぱくっとチョコレートを口に放り込む琉。


「ぐはっ!!」


パタッ…ブクブク…


琉は白目を向いて倒れ、泡を吹いた。


「ええええぇぇーー!!!

琉さん、大丈夫ですかっ!

しっかりしてください、今、治癒を!」


タルトの治癒魔法により九死に一生を得た琉はだった。


「ぷはっ、死ぬかと思った!

何でテーブルに毒物が置いてあるんですか!

あれじゃ誰かが食べちゃうじゃないですか!」


タルト以外、琉の一言に心で拍手を送った。

それと同時にその勇気を称え、骨は拾うと誓うのであった。

そこには今にも泣き出しそうな目でふるふると震えてるタルトがいた。


「毒物なんて酷いじゃないですかっ!

これでも一生懸命作ったんですから!」


泣きながらステッキで琉を殴打するタルト。

それを皆で必死に止めて、今までの状況を説明した。

タルトは素直に納得できなかったが、琉の惨状と皆の証言に嘘ではなさそうだと思えた。

不思議な事にシトリーが同じ材料と工程で作ったら、普通のチョコレートが出来上がった。

リーシャや町の人々に好評であったのは、いうまでもない。

タルトは一切の料理が禁止された。

この町にバレンタインという新しい習慣が定着し、皆が幸せになりましたとさ。

めでたし、めでたし。



「全然、めでたしじゃないよっ!!

わたしは一生懸命作っただけなのに!

誰か原因を教えてーーーーーーー」


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