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46話 児童誘拐事件簿3


「ええ、これで結構です!

これは貴方様の死刑執行書とでも言えるものだったのです」


奴隷商人は満面の笑みを浮かべたままだった。

それが逆にかえって不気味さを増している。


「これ、商人よ。

何を冗談など言っているのだ?

あまりふざけたことをいうと、お前でも捕らえるぞ」

「冗談ではありませんよ。

そのままの意味でございます」


その時、何処からともなく可愛らしい女の子の声が聞こえてきた。


「ひと~つ 可愛いモフモフを拐い、

ふた~つ 不埒な悪行三昧、

み~つ 醜い浮世の子爵を、

退治てくれよ桃太郎」


変なお面を被った少女が馬車の荷台から現れた。


「この世の悪を罰する為に、魔法少女 タルト、ここに見参です!」

「桃太郎とは誰だ…?それにお前も…?」


ユルゲス子爵は何が起こってるか分からず、ポカンとしている。


「もう貴方の罪は明白です!

私が月に代わってお仕置きさせて頂きます!」

「もしかして、お前が噂の聖女か!

こら、商人、これはどうなってる?」

「まだ、気付いてないようですね。

魔法解除!」


タルトの声と同時に商人達の姿が変わった。

商人とチンピラはあっという間に、オスワルド、ノルン、カルンに変わった。


「リーシャちゃん達ももう大丈夫だよ!」


寝ていたはずの三人のハーフの女の子も、急に起き上がった。

リーシャ、ミミ、リリーの三人である。


「これは一体どうしたことだ…?

奴隷商人どもはどうしたのだ!?」

「まだ、理解できてないようですね。

良いでしょう、よーく聞きなさい!」


遡ること、数日。

タルトの部屋にリリーが訪ねてきた。


「お願いってなーに?」

「学校、友達、助ける」

「うぅーん、皆で頑張って探してるよ?」

「私、囮」

「囮って!?

わざと捕まるの?」

「そう、手掛かりない」

「だからって…危ないよ」

「大丈夫、私強い」

「むむむ…じゃあ、姿を消して私も付いてくから。

それでいい?」


コクンッと頷いて、リリーは部屋に帰っていった。

翌日、リリーは付け耳と付け尻尾でハーフに変装して、人が少ない通りを歩いた。

案の定、日が暮れた頃に誘拐犯に出会い、わざと捕まった。

勿論、タルトは姿と音を消して付いていっている。

そうとは知らずに意気揚々の誘拐犯達。

そして、リリーが地下室に連れていかれた。

チンピラが去ると寝ているリリーに二人の子が心配そうに近寄る。


「大丈夫かな…?寝てるだけかな?

あれっ、この子、リリーちゃんに似てる?」


寝たふりをしていたリリーが、むくっと起き上がった。


「わわっ、クスリで眠らされてなかったの?」

「あんなの効かない…リタ、大丈夫?」

「私達は大丈夫…なのかな?

怪我とかないけど、逃げられなさそうだし…」

「大丈夫…タルト」


そう呼ばれると何もなかった空間にタルトが一瞬で現れた。


「本当に心配したよー、この子で合ってる?」

「ん、そう…」

「二人とも少しだけここで我慢してくれるかな?

黒幕含めて捕まえたいから、協力してくれる?

何かあればリリーちゃんが守ってくれるから」

「えっ、あっ、もしかして聖女様ですね!

はい、出来ることでしたら協力します!」

「ありがとう!

飲み物と食べ物を置いていくね。

数日ここにいるだけで大丈夫だから」


そして、また姿を消して堂々と出ていくタルト。

商人も含めて監視を付け、泳がせる事にした。

そして、後日に樽を持って商人が駆けつけるのを姿を隠しながら、悠々と見ていた。

チンピラが子供を樽にいれて、出発の準備が整ったようだ。


「それで旦那ー、何処に向かうんで?」

「それは隣の領地にいらっしゃるユルゲス子爵様の館です」

「それは大物な顧客ですねー」

「ええ、子爵様は奴隷賛成派ですから。

今でも裏ルートで探されているんですよ。

特にハーフの女の子がお好きのようですね」

「貴族様は趣味が変わってるなあ。

まあ、儲かればいいんですがね」

「さて、出発しますよ」


「残念ですが、此処までです。

とても良い情報ありがとうございました!」

「なっ、お前は別の町に向かったはずじゃ!?」

「別の誘拐事件ですね、それは偽情報です。

私がいなければ、安心して悪さをするんじゃないかと思いましてね」


いつの間にかタルトが馬車の前に立っている。

しかも、周囲はすっかり取り囲まれていた。

商人達はあっさり捕まり、色々と情報を吐かされた。

樽の中の子供をリーシャ達に入れ替え、タルトの魔法で変装したまま、子爵邸へ向かったのだった。


そして、現在。


「と、云うわけで貴方の悪行はバレバレだった訳です。

同じケモミミを愛するものとして残念です…。

諦めて堪忍しなさい!」

「えぇーい、こんなところに聖女様がいるわけがないっ!

お前ら、こいつらを殺してしまえ!

死体に口無しだ!」

「おお、悪者っぽいセリフ、予想通りの展開です!

助さん、格さん、懲らしめてやりなさい」

「私はスケでもカクでもないんだがな…。

まあ、悪人を罰するのは天使の役目か」

「お任せください、聖女様!

このオスワルド、悪人達を捕らえてみせます!」

「全くアタシらに勝てると思ってるノカ?

諦めの悪いヤツラダナー」


館から兵士達が駆けつけ、武器を構える。

多勢に無勢だが、タルト達の個々の強さに敵うはずがなかった。


「ええい、何をしている!

子供を人質にしろ!」


だが、あっさりとリーシャ達に兵士達はやられた。

残されたのは子爵一人だけになっていた。


「くそっ…、だが、私は子爵だ!

その署名も脅されて書いたと証言してやる。

男爵ごときが勝てると思ってるのか?」

「男爵である私では役不足でしょうね。

聖女様はそれも予見して保険を掛けたのですよ」

「保険とは何の事だ…?」

「すいませーん、お待たせしましたー。

ええい、頭が高いですよ、控えなさい!」


タルトが大きな樽の蓋を外すと中から一人の男が現れた。

それを見たユルゲス子爵は顔面蒼白になる。


「あ、あなたは…ゼノン大臣…」

「いや、急に城にノルン様が現れたと思ったら、此処まで抱えられて運ばれたのだよ。

高速な空の旅の後は、樽の中で状況を見ていたわけだが…」

「ゼノン様、これには…訳が…」

「此処に陛下より勅命がある。

この事件が事実であれば読み上げるよう言われている。

ユルゲスは爵位剥奪とし、牢獄行きとする」


ユルゲスは力なく、その場に突っ伏した。


「それとオスワルド殿にも言伝てがある。

子爵に任命するので、ユルゲスの領地も含めて治めなさい。

そして、聖女様の助力になるように」

「ははっ、有り難く拝命致します!」

「おおー、大出世ですねー。

これも日頃の努力の賜物ですね!」

「いえ、これも全て聖女様のお陰です」

「それと聖女様にお願いがあるのですが」

「何ですか、ゼノンさん?」

「そろそろ城に戻って良いですかな?

出来ればゆっくり飛んでいただけると助かるのですが…」

「ああっ、すいません、あの時は時間がなかったので…。

ノルンさん、もう一回お願いできますか?」

「承知した、帰りはゆっくり飛ぶとしよう」


周りにいた兵士達も事態が飲み込めたようで、オスワルド指示のもと、ユルゲスを牢へ連れていった。


「それとリリーちゃん。

大活躍だったね!」

「友達、助ける、当然」

「友達思いで偉いねー。

でも、心配だからちゃんと事前に話してね」

「ん」


こうして誘拐事件は無事に解決した。

子供たちは家に帰り、平穏に暮らしている。

登校時は集団登校させ、見張りの兵士も置くこととした。

これを持ってバーニシア王国では、王命で各貴族の館や城へ、同時に監査が入ることとなった。

奴隷が発見された場合、奴隷の待遇によって大小の罰が下った。

特に奴隷が虐待されていたら、厳罰となった。

保護された奴隷は希望があればアルマールで受け入れることになった。


この事件以降、悪い貴族がいると謎のちりめん問屋を名乗る少女が現れて、貴族を罰する事件が発生したそうである。



リーシャです。

ぶじにがっこうのともだちがたすかってよかったです。

じかいは…えーっと…あたらしいおにのおねえさんがでるそうですので、おたのしみにしてください、


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