34話 謁見へ向けて
初感想を見て少しでも楽しんで頂けているのを感じて、嬉しく思います。
これからも宜しくお願いしますね!
翌朝、ノルンは早くに目覚めた。
やはりシトリーと一緒だと落ち着いて寝られなかったのだ。
だが、外に出ると騒ぎになると面倒なので部屋で瞑想をしていた。
そろそろタルトも起きた頃かと部屋に呼びいこうとドアの前に立った時だった。
「ふああああーーっ」
部屋の中からリーシャの声が聞こえた。
「リーシャちゃん、久々だから溜まってるんだよー」
「タルトさまー、くすぐったいです…」
「この辺がくすぐったいの?
こっちはどうかな?」
「ひゃうっ!そこはだめですー」
「リーシャちゃん、可愛い声が出てるよー。
おっ、この辺が…」
「ふわわわぁー、おくはだめですよー」
ノルンは一瞬、思考が停止していたが、すぐに我に返りドアを思い切り開けた。
「朝から何をやってるんだーっ!」
タルト達はビックリして動きが止まった。
「何って…リーシャちゃんの耳掃除ですけど…」
「どうしたんですか、ノルンさま?」
ノルンの顔は真っ赤に染まっていた。
「なっ、何でもないっ!
部屋から変な声が聞こえた気がしたんだが…」
「はあ…、私達以外は誰もいませんが。
顔が真っ赤ですけど大丈夫ですか?」
「これは早起きして訓練してただけだ!」
「あまり目立たないでくださいね。
昨日みたいな騒ぎは困りますから」
「そうだな、気を付けよう…。
そろそろ朝食に行くか?」
「そうですね、行きましょうか!」
シトリーも呼んで、レストランで朝食にした。
朝食を済ませたところに昨日お願いした服が届いた。
「これは…どうやって着たら良いんですか?」
届いたのは社交用のドレスであった。
忘れがちだが普通の中学生だったのだから、生まれてからドレスなど着たことはないのである。
「聖女様のドレス姿は見たことがありませんでしたな。
使用人がお手伝いするものですからご安心下さい」
「助かります!
ドレスって一度は着てみたかったんですよね」
別室に案内をされ、各自使用人が着替えを手伝ってくれた。
ついでに生まれて初めての化粧もしてもらった。
「ちょっと苦しいですね…。
あんなに締め付けなくてもいいのに…」
「少し動きづらいな。
それにこれでは帯刀出来ないではないか」
「剣が必要になる場面はないと思いますが…。
ノルンさんがドレスを着るとより天使っぽく見えますよー」
「アラ、天使はだらしないデスワネ。
これくらい着こなせないナンテ」
「わあ、シトリーさん、黒いドレスがよく似合ってますね!
大人の女性って感じです!」
「タルト様もとても可愛らしいデスワ!
普段から着ていただきたい程デスワネ」
ハーフだけあってタルトのドレス姿も様になっていた。
そこに尻尾で手間取っていたリーシャがやって来た。
スカートに膨らみがあるので上手く隠されていた。
「タルトさま、へんじゃないですか?」
「わああああっ!!
お人形みたいに可愛いよ!
この世界にカメラがあれば…ぐぬぬ」
タルトがリーシャに興奮しているとオスワルドがやって来た。
オスワルドも普段と違い正装しているからか、より貴族っぽく見える。
「これは皆さん、よりお綺麗になりましたな!
聖女様も良くお似合いです、ぜひ今度、新しいドレスを仕立てさせて頂きます」
「ふ・つ・う でお願いしますよ!
どこか変だったら絶対着ませんからね!」
「善処致します…。
ご準備も宜しいようですので、お城に向かいましょう!」
ホテルの表には馬車が待機していた。
今までと違い天井がないオープンになっている。
聖女の入城を大々的にアピールでもしたいのだろうか。
馬車の装飾をみても、とても豪華で特別な来賓扱いとなっているのが分かる。
噂を聞き付けたのか通りには人だかりが出来ており、兵士が交通整理を行っている。
タルトがホテルから出るとすごい歓声が上がった。
「何か凄いんですけど…。
これで向かうの恥ずかしくない?」
「???。
聖女様は今や有名で人気がありますので、一目見たいと思うのもしょうがないことです。
ぜひお手を振ってあげて下さい」
「どこの貴族よっ!?
いや、オスワルドさんは本当の貴族か。
しょうがないので諦めて乗り込みますか…」
愛想笑いを浮かべ、手を振りながら馬車に乗り込んだ。
沿道には人々が興味津々で眺めている。
噂を聞き付けた者や騒ぎに乗っかった者など様々である。
その中をタルト達を載せた馬車はゆっくりと王城へ向かった。
オスワルドが手を振ると若い女性から黄色い声援が聞こえた。
「オスワルドさんの意外な一面を見た気が…」
「知らない方が良いこともあるのだろう」
「全く愚民デスワネ。
タルト様、調子に乗ってるヤツに調教が必要そうデスワ」
「いつもやってるみたいに言わないでっ!?
調教なんてしたことないからねっ!」
「上手く手懐けたように見えましたガ…。
ああ、あの時のタルト様は思い出しただけでもゾクゾクシマスワ!」
「もうあの時の事は言わないでーっ!?
ちょっとやり過ぎたと思ってるんだから…」
昔話に花が咲いたころ、城の門をくぐり玄関前で馬車が停止した。
玄関前には多数の兵士が綺麗に並び、中央に紳士っぽい中年の男性が立っていた。
「お待ちしておりました、聖女様。
オスワルド男爵もお久しぶりです」
「は、初めましてタルトです。
お招き頂き…ありがとうございます!」
「聖女様、こちらは大臣のゼノン様です」
「私は大臣を努めております、ゼノンと申します。
聖女様のご活躍はこの王都まで届いていますよ」
「活躍だなんてっ!
自分のやりたいようにやって、たまたま良い結果になっただけなんです」
「いえいえ、私もあの日以来たくさんの事を聖女様から教わっております」
「あの日とは何の事ですかな?」
「それはタルト様が初めて調教された日デスワ」
「その日の事はもう忘れてーーっ!」
「はははっ、楽しく過ごされているようで何よりです。
では、中で陛下がお待ちですので早速ですがご案内致します」
玄関を入ると大きなホールになっており、シャンデリアと中央に階段があり2階に繋がっている。
おそらく王の間にいくのであろう。
ここにも至るところに警備の兵士が立っている。
「ゲームで見るのと実物は全然違うねー。
迫力があるし、兵士の緊張感も伝わってくるよ」
「タルトさまー、たってるひとがにんぎょうみたいにぜんぜんうごかないです」
「あれはお城を守ってる人で常に周りに注意を向けているんだよ。
悪い子は捕まっちゃうよー」
「うぅ、いいこにじっとしてればだいじょうぶですか?」
「リーシャちゃんは私が守るから大丈夫だよ。
いつも良い子だから普段通り行儀良くね!」
「はい!」
一行はゼノンに付いて、2階に上がり王の間とは別の方向に向かっていた。
「ゼノン様、王の間で謁見ではないのですか?」
「オスワルド殿、陛下は貴賓室でお会いするとおっしゃっているのです。
他のものがいないところでお話したいそうです」
「そう…ですか。
何か内密のお話でもあるのでしょうか」
「内容については私も聞いておりません。
間もなく貴賓室に着きます」
豪華な扉の前に着くと兵士が扉を開けた。
部屋の中は天井も壁も絵画が描かれており荘厳な感じだ。
テーブルや椅子も高そうな装飾と装飾品で飾られている。
その一番奥の席に髭を生やした老人が座っている。
服装と頭の王冠から王様なのは明らかだった。
「聖女様、こちらがアルワド・バーニシア王になります!」




