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264話 闇の精霊

死の王の内部に広がる真の暗闇の空間。

上下左右も分からず、止まっているのか進んでいるのかさえ不明な状態だ。

だが、タルトはそんな状況でも落ち着いていた。


「よし。

囚われた精霊を探さないと!

ウル、具体的に気配を感じるようになったかな?」

『ええ、今ならはっきりと感じられます。

気配は小さいので距離があるように思われます』

「じゃあ、方向は指示してね。

真っ暗でよく分からないんだけどねー」


ウルが示す方向が感覚で理解でき、その方向へ飛行を試みる。

進んでる実感はないが気配が大きくなっているので近づいているのは間違いないと思われた。


『止まってください!』


急にウルが叫んだので急停止する。


「おおっと!

急にどうしたの?」

『気配からするとすぐ近くだと思われます。

ただ、近すぎて気配が大きく正確な方向が定まりません』

「そっかー。

じゃあ、どうしよう、あたっ!!」


結構な速度が出ており急停止しようとしたが、完全に止まる前に何か硬い物がおでこにクリーンヒットした。

暗闇で一人頭を押さえながらゴロゴロと悶絶する。


「うっ…うっ…痛いよぉ…」

『もう傷は完治してますので、しっかりしてください』

「まだ、痛さの余韻が残ってるんだもん…。

ところで何にぶつかったんだろう?」


恐る恐る暗闇の中へ手を伸ばして辺りを探ってみる。

おそらく先程、頭があったであろう高さを中心に手を振り回してる様は、変な踊りをしているようであった。

そして、暫くの後に探し物が見つかったのである。


「これだー!

ひんやりしてる…。

金属ではなさそうだけど硬い感じがする」


四角く小さい箱のようなモノは表面がツルツルしている。


「どうやって開けるんだろう??」


見えない中、手探りでそのモノの表面を確認するが、ボタンなど一切の凹凸が見当たらないのだ。


「こうなったら力付くですねー。

スイカ割名人の二つ名を持つ私に割れないものは存在しないのです」


タルトはステッキを両手で握り大きく振りかぶった。


「とりゃああああああああ!!」


渾身の力を込めたステッキを思い切り振り下ろす。

無音な世界に甲高い金属音が響き渡る。

それと同時に何かが砕けた音が聞こえたのだった。


「割れたみたいかな。

ん…これは…?」


パラパラと箱のようなモノの表面が崩れていき、黒い火の玉のようなモノが浮いている。


「まさか封印を解く者がいるとは…」

「あなたが精霊ですか?」


タルトが物怖じせずに話し掛けてみた。


「人の子か…。

いや、同胞の気配を感じる…。

何者か…?」

「えっとー、私はタルト。

精霊の力を借りて魔法少女やってます!」

「魔法少女…?

同胞が選びしものということか…。

我が名はシェイド…。

闇の精霊よ…。

ここに来た理由を語るがよい…?」


ここでタルトから他の精霊が飛び出て、これまでの経緯を説明した。


「そのようなことが…。

幾年月をここに封印されていたことか…。

良かろう…。

我が力をそなたに授けよう…。

その力にて皆を導くのだ…」

「ありがとうございます!

私は絶対にみんなを救ってみせます!」


シェイドはタルトの方に近づき消えていった。

その瞬間、タルトの中で今までに感じたことのない力が湧き出てくる。


「これは…凄い!

何だか不思議な感じだよー!」

『通常、魔法少女一人につき精霊は一つのみです。

マスターは光、闇、水、火、風、土と全ての精霊を宿しているのです。

そして、女神の加護によって絆によって魔力強化することで只でさえマスターの魔力量は強大なのを更に増加させてます。

過去も未来も含めて史上最強の魔法少女と言っても過言ではないでしょう』

「最強って…そう言われると何だか恥ずかしいね。

でも、この力が必要なんだもん。

自分に出来ることを頑張らないと!

さあ、用も済んだし脱出しようかー」

『はい!

エネルギー源であった精霊を失った死の王です。

既にこの空間の大きさも測れるように変化していますから、倒す糸口となるでしょう』

「じゃあ、内側から脱出ついでにやっちゃおうかー」


タルトが闇の精霊を探索中に外では苦戦を強いられていた。

アイアンゴーレムとピンキーもどきはそれぞれ数百にも及び、倒しても倒しても次々と補充される始末である。

実力的には驚異ではないが、数の脅威をひしひしと感じていた。


「あの嬢ちゃんはまだ時間が掛かるノカ?

終わりの見えない戦いは趣味じゃねえんダヨナ」


ルシファーは愚痴をこぼす。


「無駄口を言うだけのぉ余裕はぁあるのねぇ」

「俺様がこんな奴らに敗けるわけねえダロ。

だが、永遠って訳じゃねえカラナ」

「タルト様はすぐに戻ってこられマスワ。

それに撤退という選択肢は今回存在しませんモノ。

ここで敗ければ全ての命は消えてしまいマスワ」


ルシファー、ガヴリエル、シトリーは高度な戦闘を行いながら会話を続けている。


「ん、何ダ…?

様子が変ダゼ」


ルシファーは死の王の僅かな変化に気付く。

強大な気配は変わらないが、今までのような湧き出てくるような感じが消えていた。

死の王自身も無言のまま全く動かなくなっているのも不自然である。


「嬢ちゃんが何かやったヨウダナ」


その直後、死の王が悶え始めた。


「馬鹿な!?

無限の闇で生きて精霊を解放したというのか!?

空気もない無の世界だというのに…」


死の王の衣の内側より光が溢れてくる。

眩い光に包まれ、白の世界に染まると懐かしい声が聞こえてきた。


「ふう、やっと脱出出来たよー」


タルトはシェイドの解放後に魔力を放出し、闇の空間を光で満たした。

その漏れた光で先程、死の王から光が溢れるように見えたのである。

最後は空間の境界を見つけて突き破って脱出したのであった。


「みんな、お待たせー!

無事に帰って来ました!」


笑顔のタルトに皆の心から不安は消え、安心感で満たされ力が湧いてくる。

そして、光が落ち着くと変わり果てた死の王の姿があった。


「これがヤツの正体って訳ダナ」


骸骨と衣という見た目だった死の王は黒い人型の影へと変化していた。

圧倒的な気配は消え、指と呼ばれたピンキー達と同等の存在感しか感じられない。


「嬢ちゃんに力の根源が奪われたみたいダナ。

今度こそ止めを刺してヤル」


背後に回ったルシファーの一太刀で死の王は断末魔をあげ、完全に消滅したのであった。

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