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24話 お茶会

一度、アルマーニ村に戻ると入り口で村長を見つけた。

入り口に簡易な門を作り、看板を掛けていた。


ー 聖女降臨の町 アルマーニ ー


「……なんですか……これは?」

「おおっ!これは聖女様!

村も大きくなりましたので町を名乗ろうかと」

「いや…この看板は…?」

「村の皆で一生懸命考えました!

おきに召しましたでしょうか?」

「そうですか……皆納得なら良いんじゃないですか……あはは…」


一生懸命考えたものを否定できなかったタルトは引きつった笑いしか出来なかった。

その後、リリス達と合流した。


「無事だったカ!

心配したぜ、カルンの服だけがボロボロだな」

「無事じゃアリマセンワ。

カルンは一度、死んでタルト様に救われたのデスヨ」

「マジカ!?

全然、元気そうジャネェカ!」

「本当にもう駄目かと思ったよ!

何とか助かって良かったよねー。

でも、村の人は助けられなかった方も多くいてね……」

「みなさんがぶじでよかったです!」


リーシャはカルンの胸に飛び込んだ。

カルンは優しく頭を撫でた。


「全くリーシャは甘えん坊ダナ……」

「カルン殿があの時、村の子供を必死に守ろうとした理由が何となく分かるな」

「カルンたらこの天使に助けられたノヨ」

「チッ、その話はもうスルナ!

ちゃんとお礼も言ったダロ」

「天使が助けるなんて何があったンダ?」

「リリスちゃん。

皆仲良くなったって事だよ。

そういえばそろそろ行かないと」


タルトはオスワルドの事を思いだし、皆で向かうことにした。

空を飛んでの移動だったがリーシャはカルンに抱えられて嬉しそうだ。

タルトはそれを見て悔しそうだった。


領主の町は周囲を高い壁に囲まれていた。

中央に領主の館があり、放射線状に道が伸びている。

正門から入り中央の広い道を歩くと町には活気があり、人々は幸せそうに見える。

館の前まで来ると門番が立っていたが、顔パスで入れてくれた。

大きい玄関をくぐるとメイドと執事が出迎えてくれた。


「よくおいで下さいました、聖女様。

旦那様は客間でお待ちです」


(本物のメイドがいっぱいいるっ!

でも、イメージしてたのより地味な感じ.......)

『秋葉原をイメージされては全然、違いますよ。

実際のメイドは家政婦と同じですよ』

(家政婦と一緒にしないでっ!

夢は見るもんなんだから壊さないで!

いつの日かケモミミメイドを雇ってやるんだから)

『夢を見るのはタダですからね……』


こんなやりとりをしながら客間に着いた。

部屋に入るとオスワルドが待っていた。


「お待ちしてました、聖女様。

すぐにお菓子とお茶をご用意させます」

「……??

誰だコイツ、こんなヤツ会ったことアルカ?」

「やっぱり分からないよね......。

この前、村に来た領主のオスワルドさんだよ、リリスちゃん」

「ナッ!?タルトにボコられてとちくるったノカ?

殴られて顔の形が変わったみたいに別人ダロッ!!」

「私、そんなに殴ってないからっ!!

ちゃんと治癒して元に戻したよ!」

「ああ…あの熱い聖女様の一撃、一撃で私のパッションに火がつきました」

「ヤッパリ、殴った場所が悪かったミタイダナ。

頭がイカれてるヨウダ……」

「だから違うってばぁ~ーー」


ここでお茶とお菓子が運ばれてきたので、話を中断し椅子に座ることにした。


「あまくておいしいですー」

「リーシャ、こっちも美味しいゾ。

一口食べてミナ」


子供らはお菓子にすっかり夢中だ。

甘いものは貴重なため、珍しいのだ。


「それでお話とは?」


お茶を飲みながらオスワルドから話を聞いた。

目が覚めてから領地の事を改めて調査をし、問題の解決に取り組んできたらしい。

畑の改良はアルマーニ村から技術を教わり、他の地にも広めているらしい。


「さすが豊穣の女神様です。

村人も飢えから解放され、納税も我先にと納めてくれています」

「豊穣って初耳なんですけどっ!?

まあ、皆さんが喜んでくれてるなら良いですけど……」

「ですが、最近魔物の襲撃が増えてるようなのです。

我が兵だけでは足りず、どうしようか悩んでおりまして」

「私も今回の事件で防衛について、ちゃんと考えようと思っていたんです!」


聞いてみると人も物資も明らかに足りないようだ。

しかも鉄は製法を王都で独占しており、作ることも出来なかった。

皆で色々と意見を出しあったがなかなか良い案が出なかった。


(もう無理......ウル...ヘルプ!)


ウルから現実的に出来る案を聞いた。

各村から若者や移住者を募って調練をし、自警団を結成する。鉄の製法と鍛冶技術を教えて武器と防具を揃える。連絡手段として狼煙の使い方と鳩のような鳥の調教などなど。


「さすが聖女様です!

様々な知識もお持ちなのですね!」

「魔力といい知識といいタルト殿は不思議な御仁だ」

「タルト様に不可能はございマセンワ」

「あはは…それほどでも…」


自分ではないので素直に喜べなかった。

この件によりひっそりと知恵の女神の肩書きが増えたのであった。


この後も人員配置や有事の際の対応について話し合った。


「戦いは私達にお任せください。

自警団は私達が着くまで防御と村人の避難に注力してくださいね」

「ご指示通りに指示を伝達させます」

「道の整備もしっかりお願いします。

伝令や兵の移動に重要ですから」


これで当面の計画がたった。

ただ、費用の計上をしてみると現在の財政ではとても足りなかった。

領地の収入が増える案については後日、話すことにした。

もうお開きになる頃、タルトは不思議に思っていた疑問を聞いてみることにした。


「ところで町の人たちも幸せそうなんですが、生活は結構質素ですよね。

農工や戦に関する技術もあまり発展していないように感じるんですが」

「聖女様はフォス教にはあまり詳しくないようですね。

フォス教とは光の神を崇めた宗教で人は生まれた時に洗礼を受けます。

ですから、人属は全て光の神の眷族といえます」

「悪魔が全て闇の眷族なのと同じデスワ」

「フォス教では贅沢をせずに神を敬うように教えられます。

過ぎた技術は堕落の原因とされ禁止されることが多いです。

こんな田舎では単純に知識も技術もないだけですが」

「そうだったんだ。

色々と新しい技術を広めちゃったけど大丈夫かな.....?」

「生活に必要な技術ばかりですので、おそらくは大丈夫かと思われます。

しかし、それよりも懸念なのは....」


そこでオスワルドはノルンやシトリー達を見た。

ノルンはそこで意図を理解し口を開いた。


「そういうことか。

オスワルド殿が懸念しているのは、闇の眷族は討伐するようにフォス教では教えられているのだ。

教えに逆らう場合は天罰の対象となる」

「天罰?

神様が攻撃してくるの?」

「直接、神が行うのではない。

それは我ら天使の役割なのだ」

「天使が人を襲うのっ!?」

「堕落した人間をだ。

教えに背いたものは悪魔となる可能性もあるからな。

程度によっては厳罰となる」

「私も祖父から話を聞いた事があります。

数百年前に技術がかなり進歩していて、商業都市としても栄華を誇っていた都市が神の怒りに触れ歴史から消えたという話を」

「これだから天使は石頭ばかりなのデスワ。

こうやって共存出来る道もありますノニ」

「私もこの場所を知るまで間違った教えだと思っていなかった。

他の天使にも広めたいところだが、逆に堕天とみなされ討伐対象にされそうだ」

「確かに教えを真っ向から否定することをしている訳かー。

戦わずに説得して信じて貰えないかな?

ノルンさんみたいに」

「可能性は低いがゼロではないだろう。

その為にも実績を積み上げる必要があるだろう」

「よしっ!

襲撃にはしっかり備えて出来る限りの説得を試みよう。

考えを広めて味方が増えれば、信じて貰いやすくなるし」

「歯向かうヤツにはアタシが瞬殺シテヤルゼ!」

「今の聞いてた、カルンちゃんっ!?

説得するんだから殺しちゃ駄目っ!」

「光と闇の眷族から解放されれば信じて貰えると思われマスワ。

各々の加護には相手を憎むような思考誘導が加護に含まれてると思われマス」

「確かにタルト殿の眷族になってから、心が穏やかになったようだ」

「なるほどー、教えに従うようにしてるのかもね。

相手を説得して眷族に加えればいいんだね!」

「私もぜひ聖女様の眷族にっ!!

ああ、聖女様の血を頂けるなんてっ!

このオスワルド、天にも昇る想いです!!」

「..........気持ち悪いので、丁重にお断りします」

「なっ!?

この通りでございます!

トイレ掃除でも何でもしますから何卒ーーーーーーー!!!」


オスワルドは土下座をしながらタルトに迫ってくる。


「タルト姉、眷族にしてヤレヨー。

暑苦しいし余計に気持ち悪いゼ」


この後、1時間ほど続き根負けしたタルトはノルンに1滴だけ抜いてもらった。

オスワルドは興奮し息をはあはあと荒げながら飲んだという。

勿論、その場の全員ドン引きしていたが。


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