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221話 報告会

遠征から帰ったタルト達はお互いに事の顛末を報告しあっていた。

タルトからは羅刹との闘い、謎の人物の助け、宝物庫での出来事、クローディアについて、神についてを簡単に説明する。

続いてノルンから獣化と悲劇について説明した。


「そんな辛い出来事があったんですね…。

ユンちゃんは今、大丈夫そうですか?」

「ああ、モニカのところで他の同年代の子達と接しているうちに少しずつ元気になってきている」

「それは良かったです!

私がいたら助けられたのかな…?

その…獣化っていうんですか、原因は分かってるんでしょうか?」

「それが全くもって不明なのだ。

ここ数百年でも聞かない事例で古い文書や言い伝えに残ってるだけだからな」

「そうなんですか…。

これ以上、拡がらないと良いんですが」


溜め息をつくタルトの前に音を立てずにそっとお茶が差し出される。

それは後ろに待機しているクローディアがタイミングを見計らって出したものなのだが、それを忌々しそうにシトリーが睨み付けていた。


(おい、シトリーはどうにかならんのか?)

(知らねえヨ。

触らぬ神に祟りなしダゼ)


ノルンが隣に座っているリリスに耳打ちするがそっけない返事が帰ってきた。

クローディアが現れてからタルトの身の回りの世話を全て奪われてしまい不機嫌だったのである。

気付かないのはタルトだけで周りは困っていたのだ。

そんな場の雰囲気を感じとり話題を変えようとティアナはシトリーに質問を振る。


「まあ…なんだ、こちらの事件は再発は起きずにいるから暫くは問題ないのかもしれん。

それよりも羅刹との死闘はともかく謎な部分が多いようだな。

助けてくれた謎の白ローブの人物、妖刀、クローディア、神についてと多すぎないか?

妖刀は問題はほぼ解決してるとして他の件について何か情報はないのか?」

「白ローブの人って私が気絶してる時ですよね?

見てないから分からないんですけど知り合いだったりしないんですか?」


タルトのフォローもあり話が逸れていきシトリーも元に戻ったようだ。


「いねえだろ。

バカ親父とあれだけ対等に闘える奴なんて数えるほどだが、うちらを助ける奴がいると思うか?

この街は光と闇の両方の勢力から狙われてるだからなあ」

「そうなんですけどぉ…。

でも、どこの誰かは分からないんですけど助けてくれる人がいるのは嬉しいですねー」

「ただ、近くで感じた存在感はかなりのものデシタワ。

まるで大天使並に感じましたし顔を隠すことから名の知れた者なのデショウ」

「またどこかで会えたらお礼言わないとですね!」


正体は不明だが新たな協力者は非常に嬉しい事実である。

鬼、天使、獣人と連続で襲撃を受けている状況としてはどんな助力でもお願いしたいところだ。

それも羅刹と闘える程の実力者であれば尚更である。

この問題は小さいが微かな希望にも思えた。


「謎の人物について良い問題として保留としておこう。

次はクローディアだが何者なんだ?

これだけ身近において危険はないのだろうな?」


ティアナもここ数日調べてみたが得たものは少なかった。

過去の調査でもクローディアのような存在について見聞きしたことはなかったのである。


「本人は何も知らないようなんですよねー。

それと言えないように制限もあるみたいなんですよー」

「制限とはなんの事だ?」

「例えばですね…。

クローディアさん、あなたは何者ですか?」

「ワタシハ魔導人形デス」

「答えられるのはこうやって教えてくれるんですよー。

でも、駄目なものを聞くとですね。

クローディアさん、造られた目的が何ですか?」


クローディアは一瞬の間の後、話し出す。


「ソノ情報ニハアクセス出来マセン」

「こんな感じなんですよー」

「魔導人形か…その名称をいくら調べても何も出てこないんだ。

人工的に造られた存在のようで身体は柔らかいが素材は流体金属のようだ。

そんな技術も聞いたことがない。

全くのお手上げだよ」


ティアナは両手を挙げて溜め息をつく。

興味は尽きないが情報が全く得られず不完全燃焼も良いところだ。


「分かったのは魔導人形ということとタルトを主人と認識してることだけだ」

「それで良いんじゃないですかー。

私は色々助かってますし危険なんてないですよー」

「怪しい素振りを見せたらすぐに廃棄処分にしてやりマスワ」


シトリーの機嫌が斜めになってきたのを察したティアナはすぐさま話題を切り替える。


「えー、こほん。

クローディアの事はこれからも要観察して判断するとしよう。

後は羅刹が忠告してきた神についてだが桜華はどう感じたのだ?」

「そもそも両方の勢力から狙われていて、その頂点にいる奴に気を付けろって言われてもなあ」

「えっ?

神様ってほんとにいるんですか?」


何気ないタルトの一言がその場の時間を止めたようだ。


「タルトは神というものを知らないのか…?

確かに古の女神に関係しててどっちの勢力に属してないといっても流石にそれは…」


呆れたティアナがツッコミをいれる。

見たことはなくてもこの世界の誰もが神の存在を信じていた。


「えーとだな。

古の女神の存在については確証はない。

だが、現在の光と闇の頂点に立つ二柱については疑いようがない。

光の神であるバルドル、闇の神ノアール。

小さい頃からこれだけ教わると思ったのだがな」

「実在するって見たことあるんですか?

何か話だけだと実感がないですよねー」


タルトとしては普通の事を言っている。

日本で神の実在を信じていない人は少なくないだろう。

普通の中学生であるタルトも例外ではない。

いきなり神が存在すると言われても急には信じられなかったのだ。


「見たことと言ってもな…。

エルフにはいないが聞いた話では光の神には大天使、闇の神には悪魔王ルシファー、闘鬼 羅刹、獣帝ケツァールだけが会うことが許されたそうだ。

両勢力の最高戦力である7人がいると言ってるんだ。

それを疑う者はいないだろう?」

「まあ、その一人であるバカ親父が気を付けろと言うんだ。

実際に存在はするんだろうよ。

問題は何を気を付けるべきかだよなあ」

「神様がいるのにどうしてこんな世の中なんでしょうね…。

全知全能ならもっとましなことをして欲しいですよね!

どんな願いも叶う七個のボールとかー」

「流石にそんな万能な力は存在しねえよ。

何でも願いが叶うってどんな能力だよ。

でも、親父が言うには闘う気さえ起きないほどの実力の差を感じたらしい。

あの親父がだぜ」


羅刹の強さは対峙した者なら身に染みて分かっている。

その人物が見ただけで敵わないと思ってしまったほどの相手なのだ。


「それに神は慈悲深いとはあまり思えないな。

現在のこの戦争は二人の神同士の戦いでもあるのだ。

水の精霊であるウンディーネが言っていただろう?

それに我ら天使に伝わる噂だが神に反抗した大天使が一瞬で消されたらしい。

情け容赦がないのはこれで分かるだろう?」

「ノルンさんが言うのが本当なら神様っていってもただ実力があるだけの最低な人ですね!」

「とはいってもこの世は強者が全てだからなあ。

弱者は全て奪われても文句が言えないのが摂理ってもんだぜ」


桜華が言ったことがこの世界では絶対なのだ。

弱肉強食。

強き者が全てを支配することが出来る。

ここはそういう世界なのだ。


「うぅーん、もし神様に狙われたらひとたまりもないですねー。

情報も少ないしなー。

どんな能力か分かるだけでも対策が取れますもんね。

さっきの中で話出来る人はいないんですか?」

「大天使は無理だな。

会ったら殺されるぞ」

「ルシファーはどこにいるか分かりマセンワ。

この街に現れる前は行方不明だった男デスモノ」

「親父もあれ以上は何も言わねえな。

色々聞いても口を閉ざしたままだったからな」

「それじゃあ、あと一人しかいないじゃないですかー。

ケツァールさんでしたっけ?」

「獣帝といえばティートが適任デスワネ。

勿論、面識はあるデショウ?」


皆の視線はティートに集中する。


「あの…小さい頃に会ったことはあります。

ただ何を考えているか分からない人物だった印象です。

届くかは分かりませんが手紙を出してみましょうか?」

「うん、そうしよう!

そろそろご飯の時間だし手紙の結果が来たらまた話しましょう!」


こうして一通りの議題を話し終わってお開きになる。

この時はまだ予想外の展開になるとは思わなかった。

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