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213話 聖剣

羅刹の猛攻は激しく一瞬の隙も許されない。

未来予知で動きを予測しながら回避しつつ雷で攻撃するが休む暇なく常に集中してるのだ。


(どうしよっ、どうしよっ!

何か決め手が欲しいよぉー!!)


心のなかではかなり焦りを感じ今にも叫びだしたかった。


(昔から持久走とか大嫌いだったのにー!

相手の体力対私の魔力量って感じかなぁ)


だが、いくら攻撃しても羅刹の動きは一向に衰えない。

寧ろ楽しそうで速さが増してるようにも感じる。

それに対しタルトも魔力はほとんど消費しない攻撃方法であることから持久戦になると思われた。


「面白くなってきたな、聖女よ!」

「私は全然、楽しくないんですけどぉー!!

そんなバトルマニアじゃないですからっ!」

「少し攻め手を変えるぞ。

無手の極み、涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)!」


タルトの未来予知は驚くべきものを見せる。

回避不能なほど大きな掌が襲いかかってきてるのだ。


(こんなの避けれないってーー!

全力の魔法障壁とエアクッションだあー!)


次の瞬間、羅刹の掌から放たれた巨大な掌がタルトを襲う。

涅槃寂静とは武器や防具を使わず己の肉体のみで闘い抜いてきた羅刹が辿り着いた無手の極みである。

己の魔力を闘気に変換し纏うことで攻撃や防御に利用できるのだ。

それは放つことで遠距離にも応用でき実体化した闘気が相手に襲いかかる。


「ふぬぬぬぬぬぬぬぬーーーー!!」


タルトが幸運だったのは放たれた闘気自体に魔力無効の効果はなく魔法障壁で防御可能であったのだ。

だが、その威力は半端なく両手で障壁を抑えてるのに数十メートルも圧されてしまう。


「これも耐えきるとはやるな」


どちからというとやっとのことでガード出来ただけなので、もう二度と受けるのは願い下げたい気持ちであった。


(近距離からあんな広範囲の攻撃を放たれたら予知出来ても避けれないよぉ…)


タルトは距離を保つように空へと逃げる。

相手が飛べないことから制空権は完全に制し安全地帯でもあった。


「ずるいですけど退避させてもらいます。

これでちょっと休憩って、わわわっ!?」


空中で安全だと思って油断していたタルト目掛け何かが高速で飛んできた。

紙一重で避けれたがスカートの一部を引き裂かれる。


「鬼簇が飛行できないから何も出来ないと思ったか?

天使を想定した闘い方もあるのだぞ」


すると羅刹は親指をはじくと闘気が弾となって離れた相手に襲いかかる。

それを連続で放たれるので空にいても全く安心出来なかった。


「おわっ!

うわわわわわわわあああ!

連射し過ぎですってっ!!」


弾幕の嵐が収まり肩で息をしているタルト。


「降りてくるがいい。

こんな闘いなど面白くもない。

それとも、蜂の巣になりたいか?」


諦めたかのように地面に降り立つ。


「少しくらい休みたかったのにぃ…。

もうスカートが破れちゃったよぉ」

「服くらいで軟弱だな。

さあ、もう一戦いくぞ!」


再び突進してくる羅刹に対しタルトの思考はフル回転する。


(せめてもう少しリーチが延びて攻撃力が上がればっ!

あああああー、そんな都合良くいかないかっ!)


そんなタルトが無意識に放つ。

魔法とはイメージだ。

今、欲しいものを心の奥底でイメージしたものをウルが魔法として再現する。

突っ込んでくる羅刹に対しステッキで応戦しようとしたら先端から光輝く刃が現れた。


「何だとっ!?」


ステッキの間合いは完全に把握しておりギリギリで回避してカウンターを狙っていた羅刹だったが想定外の攻撃に回避出来ない。

それでも、何とか踏み止まり皮一枚だけにダメージを抑えた。


「やったぜ!

あの皮膚を簡単に斬り裂いたぞ!」

「なんて美しい魔法デショウ。

タルト様に相応しい魔法デスワ」


タルトのステッキの先に煌々と輝く剣が出現している。

自分自身でも驚いており、その輝きに魅いっていた。


(なに…これ?

ウルが制御してるの?)

『マスターのイメージを元にしてます。

原理はプラズマのようなもので剣を型どることで攻撃力をあげています』


一方、羅刹は胸から滴る血を眺めていた。

最高の防御を破られたのは最強の大天使ミカエル以来だろう。

そう思うと沸々と喜びが沸き上がってきた。


「ふははははははっ!!

闘いとはこうで無くてはつまらぬ!

命と命のやりとりがあってこそ真の闘いであろう!

聖女よ、名は何と言う?」

「えっと…名前は…タルトです」


今更?と思いながら素直に答える。

羅刹が力を込めると傷が塞がっていく。


「タルトか…久々に出会う強敵よ。

我が防御を簡単に貫くとはな、その剣に名はあるのか?」

「えっ!?

名前!?」


自分自身でも驚いていたばかりで名前なんて考えている訳がない。

じっと剣を見ながら必死に考える。


(名前、名前、名前…。

何か格好いい名前…。

…私は聖女だからやっぱり…)


タルトは両手でステッキを握り構える。


「この剣は聖剣。

そう…聖剣エクスかリバー!!」

「聖剣か…その威力に相応しい名だ。

ここからは己の命を賭した闘いに興じようぞ!!」


再び激しい攻防が始まった。

今度は羅刹もタルトの剣を警戒し容易に踏み込めないことから互角の闘いにみえる。


「いい感じじゃネエカ!

これなら勝てるんじゃネエノカ?」


互角に闘うタルトにリリスは喜びの声をあげる。

だが、桜華やオスワルドの表情は厳しいままだ。


「一見、互角に見えるがまだだな…。

これじゃタルトは勝てねえ…」

「何でダヨ!

さっきの威力をみたダロ?

あの羅刹でさえ攻めきれてネエゼ!」

「ああ、それは事実だがもう少し見てればわかるぜ」


お互いの攻撃を回避しながらカウンターを仕掛け合う。

そんな中、羅刹が距離をとり動きを止めた。


「実に惜しい。

タルトよ、我が娘にならぬか?」

「えっ!?」


あまりにも突飛な提案にその場にいた全員が驚いた。


「その魔力量、技の幅広さ、身体能力は申し分ない。

だが、動きが素人過ぎる!

我が娘になり格闘の真髄を叩き込んでやろう。

そうすればこの世で最強になれぬやも知れぬ」


タルトも薄々気付いていた。

リーチが延び攻撃力が上がっても動きが単調な素人に変わりなく当てるのは無理だということを。

羅刹の言うように本気で格闘術や剣術を学べば身体強化の効果も重なり最強に近づくことだろう。


「私は鬼じゃなくて人間なんですけど…」

「種族など些末なことよ。

強きことが我が一族に必要な条件よ。

さあ、我が軍門に降るが良い。

このままでは勝てぬことはぬしも分かっておろう?」


死闘から思わぬ方向へ変化していった事でじっと経過を見守る仲間達。

そんな中、タルトの答えを待つようにその場は静まり返っていた。

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