21話 天使の季節
いつの間にか21話目です。
出来る限り早めの更新頑張りますので、これからも宜しくお願いします!
タルトはシトリー達と発展してきた村を見て回っていると、エグバートの娘のモニカが走ってきた。
「どうしたんですか、そんなに急いで?
またエグバートさんが誰かと喧嘩でもしました?」
「はあ…はあ…、探したよタルトちゃん…。
急いでうちに来て欲しいの!
怪我人が運ばれて来たから診て欲しいのっ!」
タルト達は急いで酒場に向かった。
そこには大怪我を負って気絶している女性が長椅子に横になっていた。
金髪の整った顔立ちで20才くらいにみえる。
ただその背中には白い翼が付いていた。
エグバートがこちらに気付き声を掛けてきた。
「おう嬢ちゃん、わりいな!
森で倒れてるのをハンターが見つけてここに運んできたんだ」
「もしかしてこの人は天使ですか?
初めて見たけど綺麗な人だねー!」
「もう手遅れのようデスワ。
タルト様のお手を煩わせる価値もありマセン」
「ヨシ、墓穴を掘ってヤルカ!」
「畑に埋めて肥料で良いんじゃナイカ?」
「ちょっと3人とも怖いことばっか言わないでっ!
まだ生きてるし助かるからね!!」
「チッ、相変わらずしぶとくて忌々しいヤツデスワ」
「そんなに天使と仲が悪いの………?」
とりあえず治癒魔法を掛け、ベッドに寝かせる事にした。
………
……
…
天使が目を覚ますと知らない天井があった。
横を見るとリーシャが椅子に座って気持ち良さそうに寝ていた。
「この子は?
獣人と人間のハーフのようだが……。
傷がない……治癒魔法か……?」
「ん……ふあぁ……あっ、おきましたか……?
ちょっとまっててくださいね」
目を覚ましたリーシャが部屋からいそいそと出ていった。
すると何人か連れて戻ってきたようだ。
「リーシャちゃん、ちゃんと看病が出来て偉いねえ」
「えへへへ……」
天使はその光景を見て驚いた。
ハーフは忌み嫌われるのが普通だからである。
更にその後ろにいた人物を見て目を疑った。
「ヤッパリ助かってしまいマシタカ。
害虫のようにしつこいデスワネ」
「なっ、何故悪魔が此処にいるっ!?」
「落ち着いてくださいね。
誰も貴女を傷付けませんから」
「……貴殿は人間のようだな?
此処は何処だ?なぜ悪魔やハーフと普通に会話をしている?」
天使は自分が治療を受けた形跡をみて傷付ける意志がないことは信じられると思った。
「ここはアルマール村です。
だいぶ発展したのでそろそろ町と呼んでもいいくらいですね!
ここでは種族は関係なく協力して暮らしています」
「種族関係なくだとっ!?
そんなことは不可能だ!
何百年も争い続けているんだぞっ!」
「ううぅーん、これは見てもらった方が早いかな……」
タルトが肩を貸して外に出ることにした。
外では人間や獣人、そのハーフがワイワイと入り交じった日常の風景が広がっていた。
喧嘩をしてるものもいれば、一緒にお茶を飲んだり協力して家を建てたりしている。
「馬鹿な……。
こんな光景があり得るのか……」
「見ても信じられないなんて視野が狭すぎデスワ」
「頭が固いんじゃナイノカ?
振って柔らかくしてヤロウカ?」
「二人とも煽るようなこと言わないのっ!
ゆっくり理解してもらえばいいんだから。
ところで貴方の名前を教えて貰えますか?」
「ああ…これは失礼した。
私はノルン、天使の部隊長をしている。
悪魔との戦闘で怪我を負って気を失ったようだ」
「私はタルトといいます。
この子がリーシャちゃんで右からシトリーさん、リリスちゃん、カルンちゃんです」
この時、ノルンは気絶する前の事を思い出した。
多数の悪魔に囲まれ重症を負いながらも、何とか逃げ切った。
だが、治療も出来ないほどの傷で助からないと思っていた。
「一つお聞きしたいのだが、この傷は誰が治療したのだ?
あれほどの傷が綺麗に消えているのだが…」
「あっ、私ですよ。
どこか痛みます?ちゃんと治したつもりだったんですが…」
「あれほどの傷を人間一人でだとっ!?」
「タルト様にとっては簡単な事デスワ」
「タルト姉はアタシ達が束で掛かっても勝てないゼ!」
「貴殿は……何者だ……?」
「嫌ですよー、ただの普通の人間ですって!」
そんな普通の人間いてたまるかっ!と思うシトリー達であった。
ノルンは悪魔達の態度に違和感を感じていたのだ。
明らかにこの人間を敬い崇拝しているようだったのだ。
「この町は全員、タルト様の眷属デスワヨ」
「住人が全員とは…しかも獣人までいるとは…」
「あはは…一応ここで聖女と呼ばれてます。
良ければ傷が癒えるまで、ここで暮らしてみませんか?
そして、もし考えに賛同なら町作りに協力してくれると嬉しいです!」
「……………もし、そのような戦いのない世界があるのなら見てみたいものだ。
もう少しみた上で判断させて貰おう」
「いい答えを期待してますね!」
「ところで気になってたのだが、あの像はタルト殿ではないか?」
「えぇっっと…私を奉った神殿でして…」
「ずいぶん、破廉恥な服装のようだが…」
「ノルンさんもそう思いますっ!!
私だって好きであんな格好してるわけじゃないんですよっ!
どうみても布面積が小さすぎなんですよ!
どうみても痴女じゃないですか……」
段々、タルトの勢いが落ちていった。
「タルトさまのあのふくそうかわいくてだいすきです!」
「うぅ…ありがと、リーシャちゃん」
「タルト殿も苦労しているようだな…。
ところで胸の大きさが異なるようだが…」
「きっ、気のせいですって!?
着痩せするタイプなんですよっ!。
それよりも一緒にご飯でも食べに行きましょう!」
タルト達はエグバートの店に移動した。
「いらっしゃいっ!
天使様も元気になったみてぇだな」
「お話は聞いた。
迷惑を掛けたようだな、すまなかった」
「まあ、気にするな。
治療はそこの嬢ちゃんだしな」
「早く食べヨウゼー。
ソイツのせいで朝から食べてナインダ…」
「そうだね、カルンちゃん。
エグバートさん、元気が出るものお願いします!」
ワイワイと楽しい食事が始まった。
「店主よ、ここは不思議な場所だな」
「これもタルトの嬢ちゃんのお陰よ。
あそこの3人に襲撃され村は全滅するところを助けられたんだ。
殺さずに仲間にしたときはビックリしたぜぇ。
今は家族みたいに仲が良くて殺し合いしてたなんて嘘みたいだろ?」
「ああ、不思議な御仁だ。
本当に平和な世界もあると信じたくなる……」
こうして村に新たな仲間が増えたのだった。




