204話 集会
翌朝、タルトは念のため集会があると思われる当日の桜華にこっそりついて行こうと思っていた。
朝はいつも通り朝食を共にして自然な感じで別れたのである。
だが、すぐさま少し離れた後ろをピッタリと付いていく。
「おや?
あれは誰だろう?」
何とタルトの前にもう一人、桜華を尾行するものがいるのである。
フードを被っており誰かは不明だがあからさまに怪しい人物であった。
気付かれないように接近しステッキを不審人物の背中にピタッと当てる。
「あなたは誰ですか?
フードをとってこっちを向いてください」
その人物は不意をつかれたのかビクッと驚きつつこちらを振り返ったが、その顔に今度はタルトが驚く。
「雪恋さん!?
何してるんですか?」
そうフードの人物は雪恋であった。
「タルト様と同様かと思われます…。
姫様が疑われてると聞き及んだので無罪を証明しようと尾行しているのです…」
「そうだったんですね!
わわっ、追いかけないと見失っちゃう。
一緒に行きましょう!」
「はい、ありがとうございます!」
こうして目的を同じくした二人は桜華の後を付けていく。
通りを外れの方に向かって歩いていたかと思うと急に立ち止まった。
暫く止まってたかと思うと右の路地に入っていき近くにあった飲み屋へと消えていく。
「こんなお店に入るなんて珍しいですね」
「私めも聞いたことがありません。
店自体は至って普通ですし酒を頼んで飲み始めたから不審な点はありませんね」
「尾行に気付かれちゃったんですかね?」
「姫様ほどの達人なら気配に気付いても不思議ではありませんが…。
暫く様子をみましょう」
数杯、飲んだと思われるところで店から出てきた。
その後も数軒を飲み歩き何事もなく神殿へと戻っていく。
「特に変な行動もなかったですね」
「ここまでは不審な点はなく安心しました。
神殿に戻りましたし後は私めにお任せください」
「じゃあ、お願いしてカルンちゃんの様子でも見てこようかな」
雪恋と別れ廊下を歩いて行くと険しい顔をしたオスワルドと出会った。
「あっ、オスワルドさん。
今日はずっと桜華さんを尾行してましたけど何もなかったですよー」
「それは何よりです。
私の方は多数の情報が集まってきてますが聖戦を企んでいるというものが多いのです」
「聖戦…ですか?」
「ずっと続いている光と闇に戦いも聖戦と呼べますが、警戒すべきは悪魔崇拝者です。
奴等は死を厭わず聖戦と言い張り惨劇を起こす事が昔からあるのです」
「この街でそんな悲劇が起こるんですか…?」
「まだ確定ではありませんが可能性があるという事です。
私は更なる情報を集めますのでこれにて失礼します」
オスワルドは早足でその場を離れていく。
タルトはその背中が見えなくなるまで不安な表情で見送っていた。
「そんな恐ろしいことに手を貸すわけないよね…」
桜華とカルンを信じたいが一抹の不安を覚えるタルト。
気を取り直してカルンを探しにいくことにした。
いつも通りならリーシャと一緒のはずなので自室へと向かう。
「リーシャちゃーん、カルンちゃーん、いるー?」
ドアを開けて覗き込むと中にはリーシャとミミ、リリーがベッドの上にいるだけでカルンの姿はなかった。
「あれっ、カルンちゃんは?」
「カルンさまはすこしまえにでかけていきました」
「どこに行ったか知ってるかな?」
「とくにいきさきはいってなかったです」
「そっかー」
ふと、桜華の事が気になり再び来た道を戻っていく。
すると廊下で慌てたようにキョロキョロしている雪恋を見つけ声を掛ける。
「雪恋さん、どうしたんですか?」
「それが…姫様が消えてしまわれました」
「えっ!?
今、カルンちゃんもいなかったんですよ」
「もしかして先程は尾行に気付いて一旦、帰ることで安心させて気配を消して出ていったのかもしれません!」
「もうあの二人はぁ…」
「どうしましょうか…?
これでは追いようもないですね…」
「ちょっと試して見たいことがあるので付いてきてください!」
タルトと雪恋は急ぎ足で神殿の三階にあるテラスに向かう。
外に出ると街を見渡すことが出来た。
「ここで何をされるのですか?」
「まあ、見ててください!」
タルトは魔法少女に変身しステッキを両手に精神を集中させる。
「ふにゃああああああああああああぁあ!!」
ステッキを天に向けて高く掲げると巨大な魔力の波動がタルトを中心に街全体に広がっていく。
目を閉じたまま何かを感じ取ろうと集中し続ける。
「見つけた!!」
突然、大きな声で喜ぶタルト。
「桜華さん、カルンちゃんの魔力を捉えたよ!
二人とも同じ場所にいるみたい。
ん…?
同じ場所に沢山の人がいるみたい」
「それはまさか例の集会でしょうか…?」
「分からないけど…そうじゃないと信じたいです。
とりあえずオスワルドさんに伝えてすぐに行ってみましょう!」
二人は急いでオスワルドに場所を伝え集会所と思われる場所に向かう。
オスワルドは兵を纏めるのに時間が掛かり後から駆けつける事になった。
タルトと桜華、それと偶然に出会ったシトリーを加え薄暗い路地へと辿り着く。
そして、地下へと続く階段を見つけ足音を立てないように静かに降りていった。
「この先にいます…」
不安な気持ちでいっぱいのタルトは二人を信じようと覚悟を決めた。
「この中の全員を燃やし尽くせば宜しいんデスワネ?」
「ちょっ、待ってください!
ちゃんと確認してからですよ!
というか燃やしませんからっ!」
タルトを困らせている奴等に苛つきを覚えるシトリーであったが渋々、炎を消して様子を窺うことにした。
そして、タルトは静かに目の前のドアを開き中を覗き込んだ。
「なに…これ…?」
そこに広がる光景は予想とは違うものであった。
ところ狭しと正方形の机が並べられ四人毎に座って何かに興じている。
ドアの近くに座っていた男がタルトに気付き驚いた声をあげる。
それにより部屋の全員が入り口のドアの方を向き沈黙に包まれた。
そして、タルトはとぼとぼと近くの机へと歩いていき最初に気付いた男に尋ねる。
「何を…してるんですか…?」
「せっ…聖女様、こ、これはその…」
あまりのタルトから発せられるオーラに怯んでしまった男は言葉が出てこない。
「これは…聖女様に授けて頂いた遊戯をしておりまして…」
「へー、そうなんですかー。
そこにいるのは桜華さんとカルンちゃんじゃないですか」
ビクッと反応する桜華。
もう諦めたのか開き直ったようにしゃべりだす。
「そうだぜ、これはタルトから教わった麻雀だよ!
そう…智、技、運…己の全てを懸けて競い会う。
これこそ真剣勝負、命を懸けた闘いと同じだ!
コイツらは聖女が授けた牌を使った戦う…そう、これは聖牌戦争だ!!!」
その場のあちこちから拍手が送られる。
だが、目の前のタルトは無表情のままである。
「でも、賭博は禁止です。
良いこと言ったみたいな雰囲気ですが駄目なものは駄目ですからね」
「お前はこの浪漫が分かってねえなあ!
いいか、これを見ろ!
うちの手牌は幻の役満…九…」
その瞬間、机の上から次々と炎が吹き出した。
「おわあっ!
うちの役満が!!
てめえ、シトリーの仕業だな!」
「ハァ…もうお遊びは終わりデスワ。
そろそろオスワルドが来る頃デスモノ」
オスワルドと兵達も駆けつけその場にいた者は連行されていった。
賭博が禁止になった以降も場所を変えながらこっそりと麻雀大会を開いており、人から人へ噂が伝わるうちに戦争を企ててるような話へと変化していたのである。
連行された連中は軽い罰を受け、桜華とカルンは街への奉仕活動をすることになった。
こうして街は再び平穏を取り戻したのである。




