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202話 夜明け

ラファエルの傷口は思った以上に深く出血も激しかった事から治癒には時間が掛かりそうである。


「ソイツを治療したら自分がまた狙われるのにどうして助けるのさ?

ほっとけば敵が減ってお得じゃないか!」

「私は別に誰にも死んで欲しくないです!

分かり合えなくて衝突するかもしれませんけど…。

でも、いつかは手を取り合えると思うんです」

「そんな苦労しなくても良いように手伝ってあげるよ。

復活されると面倒だしね」


ピンキーは手に持ったナイフを使い接近してからの連続攻撃を繰り出してくる。

ステッキで応戦するタルトだが治癒魔法が止まりラファエルから遠ざかってしまう。


「あはっ!

楽しくなってきたのさ。

ほら、あっちがお留守になってるよ!」


横目でラファエルの方を見るとピンキーの分身が今まさにナイフを振り上げ止めを刺そうとしていた。

だが、タルトは攻撃を捌くので手一杯だった。


「駄目ぇー!」

「もう遅いのさ!」


次も瞬間、甲高い金属音が響き渡る。

ピンキーのナイフをノルンの剣が弾き返した。


「こっちは任せろ、タルト!

ラファエルの事は気にせずソイツを倒すんだ!」

「助かります、ノルンさん!」


ノルンはピンキーの分身を袈裟斬りにすると地面へと吸い込まれるように消えていった。

だが、すぐに現れて襲いかかってくる。


「あの天使、いつまで保つかな?

いくら斬っても意味ないのにさ!

聖女様も早く諦めたらどうなのさ?」


次々と攻撃を繰り出しながらタルトへと話しかけてくる。

まるでゲームをしてるように楽しそうな口調だ。


「ノルンさんは大丈夫です。

私を信じてくれてますから諦めるなんて出来ないですよ!

それに不死身なんていませんから、その謎を解いてみせます!」


タルトは攻撃を受け流しながら今までの戦いを思い返す。

少なくとも斬撃などの物理攻撃は一切通じないと思われた。

その上、粉々に成る程の魔法でも元通りになるのも見ている。

そこで他の手段を色々試してみることにした。


「炎はどう?」


ステッキから灼熱の炎が吹き出しピンキーを焼いていくが効果があるようには見えなかった。


「次はこれでどう?」


次にタルトはピンキー周辺を一気に凍らせた。

ピンキーの動きも止まったがバラバラに崩れ落ち再び動き出した。


「火も氷も駄目なのぉー。

んー、じゃあ、これでどうだー!」


空高くステッキを振りかざすと周辺に次々と雷が落ちてピンキー目掛け恐ろしい電圧が襲い掛かる。


「くぅ…」


今までと違いピンキーはダメージがあったかのような反応をした。


「効いた!?

電撃は効くのかな?」

「危険なのさ…。

アタイにダメージを入れるなんて本当に危険なのさ。

今日はもう引いてその危険性を報告するよ。

いずれ必ず息の根を止めてみせるのさ」

「待ちなさい!」


更にもう一撃、雷が直撃したが先程と違い反応がなかった。


「今度は効かないの?

雷が弱点じゃなかったの?」

「そんなこと教える気もないのさ。

いつでも狙ってるんだから!」


そう言い残し地面へとスッと消えていくピンキー。


「待って!

どうしよう…あの能力はいつどこで襲われても不思議じゃないよ…。

帰ったらみんなに警戒するように伝えないと」

「大丈夫かタルト?」

「あ、はい、大丈夫です。

怪我もないし元気いっぱいです。

そうだ、ラファエルさんを治療しないと!」


タルトが動き出そうとするのをノルンが制止する。


「わわっ!

どうして止めるんですか?」

「一応の確認だ。

お前はラファエルを助けるんだな?

敵に情けをかけるなど普通あり得ない。

明日には逆の立場になるかもしれないからな」


ノルンの言うことは正しい。

そういう意味ではピンキーもその部分では真っ当な考えである。

どちらかといえばタルトの方が非常識なのであった。


「助けるのは当然じゃないですか!

目の前に困ってる人がいたらほっとけないですよ」

「助けた男がリーシャを殺すかもしれないんだぞ?」


別に脅すわけではなく起こりうる可能性が高い。

ここで助ければいつ街を襲われるかもしれないのだ。


「…それでも助けます。

みんなのことは私が守ってみせます!」

「まあ、タルトならそう言うと思ってたよ。

その時がきたら私も全力で協力するよ」

「わあ、ありがとうございます!」


嬉しそうにはしゃぐ姿は子供そのものだ。

そして、意気揚々と治癒魔法を掛け始めるタルトを見守るノルン。

タルトに大丈夫と言われると不思議と安心感があり信じてしまう。

昔の自分なら容赦せず殺してしまうところだが変わったことに笑みを浮かべた。


「ん?

ノルンさん、面白いことでもありました?」

「秘密だ」

「えぇー、いいじゃないですか。

ケチケチせずに教えてくださいよー」

「さあな、もう忘れたよ」


和やかな雰囲気で話をしているとラファエルの指がピクッと動き緊張感が走る。


「…」


無言で立ち上がり傷跡や指の動作を確認するラファエル。

臨戦態勢のままその様子を眺めるタルトとノルン。


「治癒魔法か?」

「そうです。

でも、まだ無理はしないでください」

「何故、助けた?

再び襲われると思わないのか?」

「また、その話ですか…。

目の前に困ってる人がいたらほっとけないですよ」

「そんな甘い考えでは生き残ることは出来んぞ?」

「それが私のやり方です!

いつの日かこの世界から争いを無くしてみせますよ!」

「ノルンはその夢物語を信じているのか?」

「ああ、この目で見てきたものは信じるに足ると思っている」


ラファエルはじっと考え込む。

暫く沈黙が続いた後、口を開いた。


「命を救われたからといって仲間になるつもりもお前の考えに従うつもりもない。

だが、主より命令がない限り手を出さないと約束しよう」

「ラファエルさん!」

「馴れ馴れしく名前を呼ぶな!

お前らより先に影とやらが優先なだけだ」


そう言い残してラファエルはあっという間に飛び去ってしまった。

残された二人は暫く空を眺めていたが夜が明けはじめてきたのに気付き町へ戻るため飛び立つのであった。


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