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190話 女神の涙

バジリスクをシトリー達に任せ、桜華はどんどんと奥へと進んでいく。

すると左右に分岐する場所に到達した。


「二手に分かれてやがるな…。

微かにだが左の道の先に階段が見える」

「そっちではないな。

長の話ではこの階にあるらしいから右に行ってみよう」


ティアナの提案に素直の従い右の道を進む。

今までは道の先は真っ暗闇であったが、うっすらと青白い光が見えてきた。

そこまで一気に駆け抜けると大きな空間へと出る。

部屋の奥には優しい光を放つ不思議な液体の入ったガラスのような瓶が鎮座した祭壇が見えた。

だが、それよりも桜華の注意を引いたのは祭壇前で瓶を守るように一匹の魔物が立っている。

鋭くねじれた二本の角を持つ牛鬼に見えるが知ってるそれよりも巨躯を持ち計り知れない能力を秘めていそうだ。


「只の牛鬼じゃねえ。

うちの本能が逃げろって叫んでるようだぜ…」

「こいつは…ミノタウロスだ。

牛鬼に似てるが比べようもないくらいの化け物だ!」

「相手にとって不足はねえ。

ティアナとリーシャは下がっていな。

コイツをぶっ倒していかにもそれっぽいお宝は頂くぜ!」


桜華の殺気を感じ取ったのかミノタウロスはこちらを向き雄叫びをあげる。


「グゥオオオオオオオオオオオオオオオォォォ!!!!」


部屋全体に衝撃波のようなものが広がる。

桜華が盾となりやり過ごし、間髪入れずに突っ込んでいった。


「出し惜しみなしでいくぜえ!

四の太刀、影桜一閃(かげざくらいっせん)!!!」


最速の抜刀術でミノタウロスを一刀両断すべく全力で技を放つ。

ギイィンと甲高い金属音が響き渡ると同時に桜華が部屋の壁に吹き飛ばされて衝突した。


「何が起きたんだ…?」


目で捉えきれぬ一瞬に起きた攻防に驚きと戸惑いが隠せないティアナ。

結果だけみると桜華が吹き飛ばされ壁に衝突してるのは分かるが過程が全く見えなかったのだ。


「ちっ…やべえな…。

コイツは…強え…」


刀を地面に刺し何とか立ち上がる桜華。


「おい、大丈夫か!?

一体、何が起きたんだ?」

「ぺっ、まだいけるぜ。

うちが出せる最速の技で一気に片付けようとしたらヤツは反応してきやがったんだ」


桜華の技の発動と同時にミノタウロスが持つ金棒のような武器を振り上げたのだ。

その巨躯から想像できない反応速度をみせ武器と武器が衝突し火花が舞い散ったが桜華が押し負け吹き飛ばされたのである。


「桜華、お前はまだ前回の負傷が完治してないだろう?」

「ああ?

七割は回復してるから問題ねえ。

万全でもアイツとどっこいどっこいかもなあ」

「厄介なことにミノタウロスが女神の涙を守るように立ち塞がってる。

まるであの光に魅了されてるようだ」

「だが、単純でいいぜ。

ヤツをぶっ飛ばして宝を頂く。

難しいことは何もねえ、弱肉強食が摂理だ」

「逆にそれ以外は殺気を発した桜華だけに反応した。

タルトをリーシャに任せワタシが援護に入ろう。

弓で支援するから何とか突破口を見いだしてくれ」

「言われなくてもやってやるさ。

いくぜえ!!」


桜華は再び斬り込んでいく。

今度は必殺の間合いまでは入らずヒットアンドウェイでミノタウロスを翻弄していく。

更にミノタウロスの注意を分散させるため、ティアナが弓を休みなく射ち続けた。


「コイツ、なかなか隙を見せねえ!

こうなったら持久戦だぜ」


二人の連携攻撃は休みなく続けられミノタウロスの動きを完全に封じられたように思えた。

それは一瞬であった。

桜華とティアナが直線上に重なった刹那のタイミングに強烈な一撃が放たれる。

まず桜華は刀でガードし受け流そうとするが耐えきれず吹き飛ばされ、後方にいたティアナにも巻き起こる風によって突風が襲いかかった。


「何だこの強さは!?

あと一歩というところなのに…」


突風で吹き飛ばされたが華麗に受け身を取って体勢をすぐに戻すティアナ。


「桜華、大丈夫か?」


再び壁に衝突した桜華を横目で確認するが先程よりは上手に受け身をとれたようで戦線復帰が早かった。


「あぁ…何とかな。

ひとつ分かったが剣技は大したことないが身体能力とセンスが桁違いに強え。

あれで技術を身に付ける知能があったら恐ろしいぜ」

「それは良い報告なのか悪い報告なのか微妙だな。

他に状況を変える何かはないのか?」

「全然、隙をみせねえ。

お手上げかもしれねえなあ」


起死回生の策も思い付かず時間だけが経過していく。

タルトに残された時間はそれほど多くはないのだ。



同時刻、バジリスクを足止めしているシトリーと雪恋。

直視すると石のように動けなくなる金縛りの呪縛を受けることから攻撃を躱しきれずかなりの負傷を負っていた。

シトリーは完全に治癒してない腕では最大火力が出せず、雪恋の攻撃では硬い皮膚を斬ることが出来ずにいる。


「雪恋、大丈夫デスノ?」

「ええ、何とか致命傷は避けれてます。

ですが、いつかは回避しきれないかと…」

「同感デスワネ。

このままじゃ何も好転しまセンワ」


その時、バジリスクの目が怪しく光る。


「来ますワヨ!!!」


目を瞑り呪縛を回避するが次の攻撃を察知しようと気配の変化に全力で集中する。

すると今までに感じたことのない上からの気配に左右に跳躍しその場を離れた。

目を開け確認するとバジリスクの大きな口がそこにある骨の山を砕いている。

判断が少し遅れた雪恋の服がバジリスクの牙にかすっており溶け出していた。


「毒か!?」


雪恋は毒が服全体に広がる前に侵食された箇所を切断する。


「危なかった…。

バジリスクの牙には恐るべき威力の毒があり、僅かにでも触れれば患部を切断するしかなさそうですね」


地面に落ちて朽ち果ててく服の切れ端を見て雪恋は呟いた。


「音や気配だけで察知するには限界ですね…。

タルト様に教わった魔力感知ですが、相手の位置は分かりますが詳細な動作までは…」

「ある程度の動作だけでも感知出来れば回避は可能デスワ。

今のワタクシ達ではそこマデハ…」


そこまで喋ると急に黙りこんだシトリーであったが、両手を左右に広げ無数の火の玉を出現させた。

おびただしい数の火の玉が部屋の至るところに浮かび上がる。


「シトリー様、一体何を?

これだけの数があれば避けることは出来ないでしょうがバジリスクにダメージを与えるには火力不足では…?」

「そんなこと百も承知デスワ。

これ等は別の意味がありマスノ」


再びバジリスクが攻撃体勢に入り金縛りの呪縛を放つ。


「雪恋、上に跳びナサイ!!!」


目を瞑りバジリスクの動きが見えないなか、シトリーの声に反応して上空へと全力で跳び上がる。

それと同時にバジリスクの巨大な尻尾が地面と平行に襲いかかり、あの場にいたら危険であっただろう。


「これは!?

どうやって相手を見ずに攻撃を察知出来たのですか?」

「一言で言えば魔力感知デスワ」

「でも、それでは相手の位置くらいでは…?」

「イイエ、感知するのは自らが出した炎デスワ。

アイツに触れた炎の揺らぎで動きを補足すればいいのデス。

これだけの数があれば手に取るように分かりマスノ」

「相手の動きさえ分かれば回避は可能です!

時間稼ぎですからそれで目的は達成と言っても過言ではないですよ!」

「倒せないのは口惜しいですが今はこれで十分デスワネ」



シトリー達が善戦してるころリリスとカルンはいまだに逃げ続けていた。


「更にもう一匹増えやがったゾ!!!

マジでどうするんダ、カルン!?」

「知るカッ!!

死にたくなければ逃ゲロ!!」


二人の逃避行はまだまだ続くのであった。

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