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179話 お祭りしたい!

今年最後の投稿になります!また来年もお楽しみに♪

アルマールはタルトが戻り慌ただしくあるイベントの準備を行っていた。

数日に及ぶ準備も終わりを迎えイベント当日の朝を迎える。


「ほらリーシャちゃん、じっとしててねー。

…よし、出来た!」


リーシャの着替えが終わると部屋を出て皆と合流する。


「これは…聖女様、お美しいお召し物ですね。

花柄など色鮮やかでよく似合っております。

何処と無く桜華様の服に似てませんか?」

「これは浴衣といって今日のイベントでは女子はみんな着るんですよ。

桜華さんは着物っぽい服ですから似てますよねー」


そんな話をしていると他の女性メンバーも着替えを終え集まってくる。


「わあー、みんな良く似合ってますよー!」

「マア、これぐらい当然デスワ。

タルト様にご用意頂いた服ですから着こなしてみせマスワ」

「何かいつもと変わんねなあ」


桜華は自分の格好を確認しながら動きやすさを確認している。

ただ、その格好はタルトの知っている浴衣ではなく着崩して生足と胸の谷間が見えていた。


「ぐぬぬぬぬ…。

桜華さん、何か気付けが間違ってますよ」

「これで良いんだよ。

動きやすいし胸も苦しくないし」

「姫様、もう少しで良いから羞恥心を持って頂けると…」


雪恋が桜華を見て諦めた様子で落ち込んでいた。


「そんなことはどうでも良いから早く行こうぜ!

祭りって聞いただけで待ちきれねえよ」


タルトは不満そうな顔をしながらも街の様子を見に外に出た。

外はところせましと出店が並んでおり、美味しそうな匂いが漂っている。


タルトはその中の一軒に立ち寄り店主に声を掛けた。


「どんな感じですか?

お願いしたものって出来そうですか?」

「これは聖女様、待ってたぜ!

ほれ、試作品を見てくれよ」


店主はそう言いながら白っぽいものを取り出す。


「おお、これは!

良い感じですよー!

はい、ミミちゃん、食べてみる?」

「ふわふわでくちにいれるととけてなくなっちゃうのです!」

「これはわたあめっていうお菓子だよ。

さあ、次を見に行こう!」


今度は数件先にある出店の立ち寄ると色鮮やかな液体が並んでる。


「こんにちはー、出来ましたか?」

「これは聖女様!

やっと納得のいくものが出来ました。

ぜひ食べてみてください」


店主はリズミカルに何かを削り最後に色のついた液体を掛けてタルトに渡した。


「はい、リーシャちゃん、アーンしてごらん」

「はむ…わ、つめたくてあまいです!」

「良い感じのふわふわした氷に出来ましたね!」

「この薄さを出すのは難しかったですよ。

でも、他ならぬ聖女様のお願いですから努力しましたよ」


そうこれはタルトが企画した夏祭りの縁日を再現したものであった。

勿論、この異世界で再現できるものには限りがあるので出店の中にはこの国の料理が多数出展している。

各店舗の準備を確認してうちに日が暮れ始め明かりが灯り雰囲気が増してきた。

人手も増えてきていよいよ縁日の始まりである。

タルトも一人の客としてリーシャ達と祭りを楽しもうとしていた。


「さあ、リーシャちゃん!

ここでお姉ちゃんが良いところを見せてあげる!」


そういいながらポイを持って金魚のような小さな魚が泳いでいる水面を見つめる。


「全集中、水の呼吸!ほりゃあ!」


ぽちゃんっ


「なんですとー!?」


あっさりとポイが破れ魚が逃げていく。

隣ではあっさりと魚を上手にポイで持ち上げてるリーシャの姿があった。


(まずい!

このままでは出来るお姉ちゃん像が崩壊してしまう!

そうだ!ポイを魔力で強化すれば破れることはない…)


端っこの柱に魔法禁止と張り紙が貼ってある。


(ちょっぴり使うくらいならバレないよね。

こんな小さな魚だから超微弱で…)


タルトはこっそりとポイに魔力を流していく。


「さあ、ここからが本番だよ!」


勢いよくポイを水に入れた瞬間。


「あばばばばばばばばば!!」

「駄目だよ、聖女様。

こいつらは小さくても魔物で微弱でも魔力を感じると電気を流すんだからズルは駄目だって」

「それを早く教えてよぉ…」


電気攻撃を喰らいポイは焦げて横たわるタルト。

どう声を掛けて良いか分からずオロオロするリーシャ。

呆れて何も言えないミミと無関心で魚を見つめるリリー。

その後も良いところを見せようと色々とチャレンジするが結果は芳しくなかった。

すっかり辺りが暗くなった頃、気分を一新しやる気を取り戻したタルトはメインイベントの準備に取りかかろうと意気込む。


「見ててね、リーシャちゃん。

これから大きくて綺麗な花火を打ち上げてあげるからね!」


その日のメインイベントはタルトの魔法による花火大会であった。

時刻も近付き中央広場には多くの人々が集まっている。


「これよりメインイベントの聖女様による花火の打ち上げを開始します」


オスワルドの開始の合図によりタルトが一発目の花火を打ち上げようと思った時、真っ白な濃霧が通りを進み広場を包んでいく。


「これじゃ花火が見えないじゃん。

もう何なのよ、しょうがないから魔法で吹き飛ばそうかなー」


何処からともなく風が吹き荒れ霧を引き飛ばしていくが一向に視界は晴れず次から次へと霧が湧いてくる。


「何これ?全然晴れないんだけどー」

「聖女様、これは何処か変です…。

そもそもアルマールはこれ程の霧が発生する地域ではありません」

「どういうことですか、オスワルドさん?」

「少なくとも自然に発生したものではなく誰かが魔法で…」


その時、襲撃を知らせる鐘の音が響き渡る。


「オスワルドさん、みんなを家の中へ避難するように指示してください!

家が遠い人は神殿へ入れちゃってください!」


それだけ言い残すと一目散に鐘が鳴る方角へと飛んでいくが、途中あちこちで悲鳴が聞こえてきた。

先行して先を走る雪恋は誰かに襲われてる人影を見つけ一気に駆け寄ると襲撃者を鞘に納刀したまま銅を薙ぎ払う。


「何者か分からぬがそこで寝ているがいい。

後でじっくり取り調べをしてやる」


相手が人間であったので斬り捨てず峰打ちにしたが、相手は何事もなかったようにゆっくりと立ち上がる。


「何かおかしい、人間が私めの一撃で倒せないなんて…。

やむを得ません、死なない程度に動けなくさせます」


抜刀から斬るまでの身のこなしさえ人間では目で追えぬ速度で正確に足の腱を狙う。


「安心するが良い。

後でタルト様が治癒魔法で治してくださる」


これで動けなくと思っていたが痛みもないのか這いつくばって尚も人間を襲おうともがいている。


「何だお前は!何故、動ける!?

それに痛みを感じ…」


そこで相手をじっくり観察したことであることに気づいた雪恋。

明らかに皮膚の色がおかしいのだ。

人間の姿でありながら人間とは思えぬ様子に戸惑い動けない。

だが、後ろから風のように現れ得体の知れない何者かの五体を斬り裂く。


「何をしてる、雪恋!

容赦はいらねえ、斬れ!」

「姫様…でも、相手は人間では…?」

「どうしてるかは知らねえがこいつらは死体だ。

さっき向こうで腐りかけの奴を斬ってきた。

首を斬っても止まらねえから動けないよう手足を斬り落とすしかねえ」

「死体が動くなんて…そんなことが!」

「考えるのはあとだ!

まずは逃げ遅れてる奴を救出するぜ!」

「そうですね、急ぎましょう!」


そこへタルトが追い付き合流する。


「一体、何が起きてるんですか、桜華さん?」

「よく分からねえが死体が動いて人間を襲ってるみてえだ」

「何ですかそれ!?

怖すぎなんですけど!

ゾンビ映画はちょっと苦手なんですよぉ…。

これじゃお祭りしたいのに死体祭りじゃないですか」

「ビビってる場合じゃねえ!

ほれ、次に行くぞ!」


少し先も見通せない濃霧の中、あちこちであがる悲鳴に駆けつけ人々を救出していく。

先程までの祭りの楽しそうな笑い声は消え、街全体が得体の知れない恐怖に包まれていった。


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