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166話 旅の終わりに

アルマールで一騒動が起きている頃、ウェスト・アングリア王国でマリアの御披露目が行われていた。

広場での民衆に対する表明を終え、続いて城にて貴族階級との挨拶を次から次へと対応している。

終わる頃には日も暮れ始めており自室に戻ったマリアはベッドに倒れ込む。


「疲れたぁ…。

駄目駄目、女王としてこれから頑張らないといけないのに…。

タルトちゃん達が帰っちゃたら一人なのか…」


この先の不安やのし掛かる重圧が疲れと合わさって襲い掛かってきている。


「はぁ…こんな普通の女の子が女王なんだから他の人より倍以上に頑張らないと…。

でも、落ち込んだときに支えてくれる人が近くにいて欲しいよ…。

マティルダ…会いたいよぉ…」


涙が出そうになるのを必死に堪えていると部屋の外を駆けてくる足音が近づいてくる。

やがて、バンッと勢いよく扉が開き誰かがベッドにダイブしてきた。


「きゃっ!?

誰って…タルトちゃん!」

「えへへー、部屋に戻ったって聞いて急いで来ちゃった」

「もう…これでも私は女王なんだからね」

「女王である前に友達だもん。

私も聖女だけどマリアちゃんの前なら只の友達だよ」

「タルトちゃんには勝てないよ…。

それでどうしたの?」

「今日は大変だったし昨日の今日だからね。

励ましに来たの!

さあ、行こう!」

「行こうって何処に?

って、腕を引っ張らないでー!」


マリアの手を引っ張り部屋から連れ出すタルト。

そのまま建物から出たと思ったらマリアを抱えて空に飛び立つ。


「ええええええぇぇ!?

何処まで行くのぉおおお!!」


空高く雲の中へと飛行しやがて何処かの山頂に降り立った。

そこは全方位遠くまで見渡せ遥か下に王都の生活の光がキラキラ光っている。

上を見上げれば満点の星空が広がっていた。


「綺麗…」

「でしょー。

でも、驚くにはまだ早いよ。

さあ、こっちに来て」


タルトに着いていくと小さな池のように水面が見えてきた。


「これは…温かい」

「さあ、入ろう!」

「えっ、入るってここに!?」

「そう!

さっき急いで作った露天風呂だよ。

それー!!」


タルトがマリアの服を掴み引っ張るとスポンと脱げて一気に裸になる。


「やだっ!

どうやったの、一体!?」

「ふっふっふっ、秘密です!

さあ、入ろー!」


いつの間にかタルトも服を脱いでおり二人はお湯に飛び込んだ。


「うわあー、生き返るー」

「もぅ…強引なんだからぁ」

「マリアちゃん、温泉は命の洗濯とも言うんだよ。

色々と辛いことがあったけど全部、流して頑張ろう!」

「その為に作ってくれたの?」

「どうやって励まそうか色々と悩んだんだけどねぇ…。

お湯に浸かると疲れもとれてリフレッシュにもなるかなって」

「タルトちゃん…ありがとうね!

いっぱい、いっぱい貰ってばっかりで何も返せないんだけど…」

「えぇー、別に見返りなんて求めてないよー。

まあ、もし返すなら私じゃなくて国の困っている人達に返してあげてね」

「うん!

でも、何か私に出来ることがあれば何時でも言ってね!」


マリアは満面の笑みを浮かべて大きく頷いた。


「それはそうとぉ…」


タルトが怪訝そうな顔をしてマリアの背後に回り胸を鷲掴みにする。


「きゃっ!」

「あなたの背後に這い寄る混沌…じゃなくてっ!。

同い年くらいなのに、このたわわに育ったけしからん胸はなんなのー!!

こんなふよふよして許されるわけがない!」

「だめぇ…タルトちゃん、くすぐったいよぉ…」

「このこのぉー、私に少し分けなさい!」

「もう、怒ったんだからぁ、えい!!」


マリアがタルトをぎゅっと抱き締める。

そのまま抱き締めたまま動かないので不思議に思うタルト。


「マリアちゃん…?」

「タルトちゃん…帰っちゃやだぁ…ずっと傍にいて欲しいよぉ…ぐすん」


涙声で嘆願するマリアをタルトがぎゅっと抱き締め返す。


「ごめんね、マリアちゃん。

私、まだまだやることがいっぱいあるの…。

でも、全速力なら数時間で飛んでこれるから困ったらすぐ呼んでね。

そうじゃなくてもたまに顔出しちゃうけど!」

「そうだよね…聖女様だもんね…。

うん、我が儘言っちゃったけど私もタルトちゃんのように頑張る!

でも、時々はこうやって甘えさせてね」

「もちろん!

今度、可愛い妹も連れてくるね」


こうして絶景の露天風呂でのひとときを終えてベッドで一緒に寝ることにした。


翌朝、窓からの心地よい風で目を覚ますマリアは隣にいるはずのタルトを探す。


「あれ…?

タルトちゃんがいない。

もう起きちゃったのかな…?」


背伸びをしているとドアが勢いよく開けられビクッと驚くマリア。


「おっ、起きたんだね。

おはよー、マリアちゃん!」

「おはよう、タルトちゃん。

ドアはゆっくり開けてよぉ。

ビックリするんだから」

「ごめんねー、それよりも会って欲しい人がいるの!

アンさーん、ほら入ってー」


周囲をきょどきょどしながら恐る恐る部屋に入ってくる女性。

アンと呼ばれた女性は今回の旅でゴドディンまで一緒に同行し仲良くなった人であった。

朝早く呼びに行って若干無理矢理連れてきた感じである。


「タルトちゃん、ここってお城だよね?

私みたいな庶民が入っちゃ行けないんじゃないの?」

「大丈夫ですよー、こちらが紹介したかったマリアちゃんです。

で、こちらがアンさんです」

「はじめましてアンです。

えっとぉ…マリアさんはもしかして…新しい女王様なんじゃ…?」

「そうですよー!」

「ひええええええぇぇ!

すいませんっ、すいませんっ!

寝所に勝手に侵入して許してください!」


その場でひれ伏してしまうアンに対してマリアはベッドから降りて座り込み目線を合わせる。


「アンさん、気にしないでください。

今はタルトちゃんと私だけですから普通の少女として接してください」

「そうですよ、アンさん。

マリアちゃんもこう言ってるんですから」

「タルトちゃんはもうちょっと気づかって欲しいかな…」


二人の気さくなやりとりに徐々に緊張が解けてくるアンに笑顔が戻る。


「ところでタルトちゃん。

こちらのアンさんがどうしたの?」

「それはですねー、マリアちゃんが一人で寂しいだろうから素敵なお姉さんを連れて来ました!」

「えっ!?

ちょっと待ってタルトちゃん…、

お給料の良いお仕事って…」

「マリアちゃんのお側付きです!

アンさんは信頼できるし辛いときはいっぱい甘えられるよ」

「無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!!

私は只の庶民の娘だよ!

作法も知らないし取り柄もないし!」


慌てるアンの手を優しく握るマリア。


「アンさん、私に今、必要なのは信頼できる人物です。

タルトちゃんが間違いないと言うなら私は信じます!

傍にいて支えてくれるだけで良いんです。

駄目でしょうか…?」

「えぇーと、うぅん…もう分かったわよ!

私に出来ることなら頑張ってやります!」


こうして話は纏まりマリアの側付きとして働く事になったアン。

二人が協力して国を発展させてくのはまた別の話。


こうして翌日、タルト達は当初の目的も国の一大事も全て解決しアルマール向けて帰路についた。


アルマールでは襲撃後のバタバタが落ち着いていなく広場で怪我人の治療が続けられていた。

リーシャも医療品を運ぶのに忙しくしていると遠い空から光るものが近づいてくる。

その光は物凄い速さで広場のど真ん中に落ちてきた。

何事かと兵士達が集まってきて落下の土煙が収まるのを待っていると金色の髪をなびかせるタルトが立っている。


「聖女様だ!

聖女様のご帰還だ!」


一気に歓声が上がるがタルトは目もくれず何かを探す。

そして、目的の対象を見つけると一気に駆け出す。


「リーーーーーーシャちゃあーーーーーーん!!!」

「ふわっ!!」


リーシャに抱き付くタルト。


「襲撃があったって聞いて急いで帰ってきたよ。

どこも怪我してない?ちゃんとみせてごらん。

はあ…はあ…リーシャちゃんの匂い…すべすべふにふにの肌…」

「タルトさま…みんなみてるからはずかしいです…」


二人の周囲には人だかりが出来ており温かい目で見守っている。

この街ではいつもの光景なのであった。

そんなタルトの背後に人影が現れ頭に拳骨を落とす。


「帰ってきて早々、何をしてるんだお前は!」

「痛ーい…ノルンさん酷いですよぉ…。

こうやって不足していたリーシャちゃん成分を補ってたんですー」

「それどころじゃなかったんだぞ!

まだ怪我人もいっぱいいるんだ治療を手伝え」

「ふぁーい…」


その後、タルトが治癒魔法で次々と癒し、やっといつもの日常が街に訪れたのであった。

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