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149話 悪魔の軍勢

ティート軍と桜華達を見送った後、最後に出発したのは悪魔達を迎え撃つシトリー、ノルン、セリーンである。

ある程度の方向は分かるが飛行できる悪魔が正確にどっちから来るかが分からなかった為、アルマール近くの畑にて待機することにしたのだ。

多少、畑に被害が出てもやむを得ないという判断である。

三人とも飛行が可能なため目的の場所にはあっという間に着いてしまった。


「相手は千を越えるのか…対してこちらは二人とはな」

「所詮、雑魚の集まりに過ぎまセンワ。

戦いが始まったらセリーンは何処かに隠れてナサイ」

「お役に立てずにすいませんっ、すいませんっ、すいませんっ!!」


高速で頭を上げ下げするセリーン。


「結局、襲撃が昼間になってしまったからな。

吸血鬼といえど日中は人間と能力は変わらないのだろう?

守ってやる余裕などないから隠れてくれたほうが助かるよ」


今にも泣き出しそうなセリーンに優しく宥めるノルン。


「ぁ…ありがとうございますぅ…。

ところで、相手は大人数ですから半分は街へ行こうとしても止められなくないですか?」

「ふむ、その事については予想の範疇だがおそらく大丈夫だ。

今回、奴等の狙いは名前を知らしめる事であって、人間を虐殺するのではない。

ここに格上の相手が二人きりでいるのだぞ。

戦力が分散しているうちに確実に叩くのが定石だ。

我先にと襲いかかってくるだろう」

「それってある意味、ピンチって事では…?」

「身の程も弁えない汚物を消毒するだけの簡単なお仕事デスワ。

それがちょっと数が多いだけデスノ」

「その言葉通り死ぬんじゃないぞ」

「アラ、奴等は天使の貴女の方が狙うんじゃないカシラ?」

「さあな、それか裏切り者の同族を狙うかもな?」


顔は笑っているが視線同士がぶつかり合い火花が生じているようだ。


「あわわわわわわっ!

シトリー様もノルン様もどちらが怪我されてもタルト姉さまが悲しみますよぉ!

ここは協力した方が良いと思うんです!」


ギロリと二人の視線がセリーンに向かう。


「ひいいぃぃ…こんな私なんかが意見なんてすいませんっ、すいませんっ、すいませんっ!!」


再び平謝りするセリーン。

そんな様子を見て二人は力が抜けてしまった。


「ふっ、お前に諭されるとはな」

「ワタクシはタルト様のご意志に沿うだけデスワ。

こんな馬鹿馬鹿しいことで怪我なんてたまったもんじゃナイモノ」

「どうしてこの二人は仲が悪いんでしょぅ…」


そもそも天使と悪魔は険悪であるが、何かにつけて張り合ってるように見える。

ノルンもリリスやカルンとは意外と仲が良いのだ。


「さて、無駄話の時間は終わりデスワ」


シトリーが指差す方向に黒い点々が遠い空に見えたと思ったら、点が段々と大きくなり悪魔の姿に変わっていく。

シトリーとノルンは上空に飛び上がり進行方向の途中で停止した。

セリーンは森の中に身を隠し様子を見ている。


「まさかお前に背中を任せる日が来るとはな」

「天使に背中を預けるなんて全く忌々しい事デスワネ。

でも、貴女は天使の中では嫌いではナクテヨ」


二人は横並びで静止し悪魔の到着を待つ。


「私が左を受け持とう」

「では、ワタクシは右で宜しくテヨ」


悪魔達も二人に気付き少し距離を空けて静止した。


「どこに行くのカシラ?

この先はタルト様が統治するアルマールがありマスノ。

ここから先は進入禁止デスワヨ」


シトリーが凍りつくような冷たい視線で睨み付ける。

その威圧感に少したじろいだが、数で圧倒している悪魔達はすぐに勢い付く。


「オマエが裏切り者のシトリーダナ!

その気障な口調はイライラするぜ!」

「第二階位だからって調子に乗りやがっテ!

この人数差が見えねえノカ?」


強気になって一斉にガヤを飛ばし始める。


「弱者ほどよく吠えるらしいと聞いたが、その通りのようだな。

口を動かさず身体を動かしたらどうだ?」


ノルンが失笑しながら挑発する。


「天使は黙ってろヨ!!

見てるだけでムカつくんダヨ!!」


前列にいた悪魔がノルンに襲い掛かる。

ノルンは腰にぶら下げた剣に手を掛けると一閃する。

その剣閃は光の線としか捉えられず、悪魔は一刀両断されていた。


「剣を振るのも疲れるんだ。

出来ればまとめて掛かって来てくれると嬉しいんだがな」

「舐めやがっテ!!

さっさとコイツらを殺っちマウゾ!!」


千を超える悪魔が次々と襲い掛かる。

同時に様々な方向から仕掛けられる攻撃を躱しながら反撃を行う。

ノルンは思う。

以前の自分であればこれだけ多くの悪魔を同時に相手をする実力はなかった。

タルトの眷属になったことで魔力が増幅しただけでなく、シトリーや桜華等の強敵との訓練で速さや技術が格段に上達したのだ。

シトリー自身も魔法重視の戦いから接近戦の特訓をひたすら行い、どちらでも対応可能になった。

これだけ大勢相手だとどうしても接近を許してしまうことから、接近戦に対応できるのは生死に関わるのだ。

悪魔と共闘など数百年生きてきた常識が考えられず、どこか楽しんでいる自分を実感しタルトという希望に出会えた事を感謝した。


「舞い踊りナサイ、復讐の鞭(エリーニュス)!!」


炎で出来た鞭は動きが読めない不規則な動きに加え、変幻自在に長さを変化させる。

更に炎で出来ているので何処までが実態か見極めづらく、少しでも触れると業火で焼かれる必殺技であった。

一振りで数人の悪魔を屠っていく。


「サア、楽しくなるのはこれからデスワ」


強気な発言だが少しでも気を抜けば一瞬であの世行きであろう程の猛攻を捌いており、余裕など全くないのである。

それがいつ終わるかも分からない長い死闘の始まりであった。


高かった太陽も傾き始めた頃、シトリーもノルンも致命傷を受けていないがアチコチに怪我を負い背中合わせに静止していた。


「はぁ…はぁ…やっと半分といったところか…」

「貴女…サボってたんじゃありマセンノ…?」

「減らず口が叩けるなら、まだいけるな…?」

「エエ、勿論デスワ…」

「もし生まれ変われたらお前とは同族に生まれたいものだ…」

「何を縁起でもないことヲ?

マア、悪くないですケド…」

「続きをいくか、友よ」

「エェ、先に死ぬなんて許しマセンワヨ」


再び悪魔の大群の中へと突っ込んでいく。

シトリーは炎の鞭で薙ぎ払うが最初ほどの威力と変化がない。

一人の悪魔が皮一枚のギリギリで見切り剣を突き立てる。

シトリーもそれを考えるより先に身体が反応し掠り傷で避け手刀で相手の胸を貫く。

だが、それが悪手となった。

手刀を抜く一瞬の隙を突かれ、死角から二本の剣が襲い掛かる。

気付いたときには躱せないところまで迫っていた。


「シトリー!!」


それに気付いたノルンが助けに向かうが間に合わない。

ザシュッと肉に突き刺さる鈍い音が聞こえた。


「貴女…」


シトリーの目に写ったのは剣が突き刺さったセリーンであった。

回避不能であったシトリーを突飛ばし自らを身代わりとしたのだ。


「オッ、こんな雑魚がいたノカ。

これも喰らいナ!!」


更に数本の剣に貫かれる。


「良かった…こんな私でも…お役に…たてた、ごふっ…」


セリーンの顔は笑っていた。

剣に貫かれ血を吐きながらもシトリーを助けられた事が嬉しかったのである。

そのまま力なく落ちてゆき地面に衝突する。

二人の胸に今までに感じたことがない感情が走り抜けた。



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