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134話 クドゥリ

最初にタルトが聞いた店員からの話を簡潔に説明した。


「さすが、せい…いえ、タルト様です。

お待ちの間にも情報収集されるとは。

他に入手した情報をお伝えしましょう」


オスワルドは周囲には聞こえないように、なるべく小声で話し始めた。


「その寝込んでいる子供というのがクドゥリというらしいですが、大層可愛がっていたのは間違いございません。

病気になった後にラガシュは治せる医者を必死に探していたそうです。

名医と名乗る者が次々と現れ治療と称し高額の治療費やラガシュが造った武器を要求したらしく先程、警戒心が強かったのはこのせいでしょう。

結局、どの医者も治せず去っていったそうです」

「ひどい…」

「まあ、医者と名乗ったらしいが、何人本物がいたのか怪しいな」

「ティアナ様が仰る通り周囲のものは止めたらしいですが、藁にもすがる思いだったのでしょう。

来るものは拒まず治療をお願いしたようです。

親しい者の話ではかなり衰弱し病も悪化してるようで長くは持たないと言われています。

とても武器造りを依頼するどころではない状況ですね。

如何しましょうか、タルト様?」

「私…もう一回行ってきます」


タルトはそれだけ言い残すと急いで酒場を後にしラガシュの家へ向かった。

オスワルドとティアナも後を追い掛ける。

既に家の玄関前に着いて佇んでいた。


「どうされるおつもりですか?

とても話を聞いてくれる状況ではなさそうですが…」


タルトはドアノブに手をかけ鍵が開いてることを確認する。


「頼もおおおおおおう!!」


勢いよくドアを開け大声で挨拶した。

入ってすぐの居間にいたラガシュは驚いて椅子から滑り落ちる。


「な…何だ、さっきの奴等か。

いててて…急に大声出すんじゃねえ。

いや、その前に人様んちのドアを勝手に開けるんじゃねえよ!

何度来ても武器は造らねえぞ」

「今回は武器じゃなくてクドゥリちゃんの事です」

「孫娘に何の用だ?

病気を治すとか言って、狙いは金か?

それとも、武器か?

どっちにしても…」

「馬鹿あああああ!!」「ふべええええぇぇ!!」


ラガシュの頬にタルトのビンタが炸裂し、回転しながら吹き飛んでいった。


「武器やお金なんてどうでも良いんです!

そんなものはこれっぽっちも要りません!

私は病気で苦しんでる女の子を救いたいだけなんです!」

「タルト…」

「はい?」


ティアナが指差す方向を見てみる。


「高説してるところ悪いがラガシュは伸びていて聞いてないぞ」

「え…?」


この後、ラガシュを治癒し正気に戻るのに暫く掛かったという。


「ごめんなさぃ…」

「見た目によらず馬鹿力だな、嬢ちゃんは…。

ワシの事はもういい。

それよりも治療に見返りは要らないだと?

どこの誰かも分からねえ奴等がタダで治療なんて疑いたくなるぜ」

「…分かりました。

これでどうでしょう」


タルトは光に包まれ魔法少女へと変身する。


「私の名はタルト。

人は聖女と呼びます」

「なっ!?

お前が噂の聖女だと!

……もし本物なら何か奇跡を見せてくれ。

聞いた話だと死人も生き返らせたらしいじゃねえか」

「そうですね…万能ではないので何でも出来る訳じゃないですが。

ここにあるクズ鉄を見ててください」


タルトは床に落ちていた錆びた鉄の塊を拾ってラガシュに見せる。


「これが何だってんだ?

ただの…何だと!?」


クズ鉄が一瞬にして真新しい剣へと変化した。


「一瞬で造っただと…だが、これには魂がねえ…」

「そうかもしれないですね…。

私は形は変えれても職人が作るように魂が入らないのかもしれません。

だからこそあなたに造って欲しかったんです。

これでは足りませんか?」

「…いや…こんなのは人間業じゃねえ。

かなりの能力があることは分かったから、治せる可能性もあるってことだよな?」

「絶対とは言えませんが全力は尽くします」

「治せると言い切らねえとこが気に入った!

本音でしゃべってるのが分かる。

付いてきてくれ…」


ラガシュは奥の扉をあけ入っていく。

そこへあまり見せない真剣な顔つきのタルトが付いていく。

奥の部屋は薄暗くベッドと机があるだけの質素な部屋だ。

そこへ横たわる一人の少女がいる。

顔色は明らかに悪く息づかいも荒い。

足に包帯を巻いてあるが血が滲んでおり、ちゃんとした治療を受けたようには見えなかった。


「クドゥリ…起きてるか…?」

「ぅん…おじいちゃん…?」

「喜べ…大好きな聖女様が会いに来てくれたぞ」

「ほんと…?」


タルトはラガシュに促されるようにベッドの横にある椅子に座った。


「クドゥリちゃん。

私はタルト、聖女と呼ばれてるの」

「聖女…様?

うわさで聞いたよりほんとにキレイです…。

髪が金色でキラキラしてる…」

「クドゥリちゃんもとっても可愛いよ」


クドゥリの頭を優しく撫でる。


「でも、どうしてここに…?」

「おじいちゃんに会いに来たの」

「そうなんだ…おじいちゃんはじまんなの。

みんながおじいちゃんがつくった武器をほめてくれるんだ…。

でも、良かった…死ぬ前に聖女様に会えて…。

死んだお父さんとお母さんに会ったらじまんできるもん…」

「クドゥリちゃん…大丈夫だよ。

絶対に私が救って見せる!」


ただ、目の前にいる少女を救いたいと心から思ったタルト。


「みんなこの部屋から出てください。

診察から始めます…」


真剣な眼差しに誰も何も言わずに部屋を出ていった。

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