表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/293

126話 フランク城跡、再び

フランク王国の城跡は以前、リーシャの救助に向かいカドモスと戦闘したときと何も変わっていなかった。

前回同様に広場に降り立つとすぐに兵士が駆け寄って来る。


「お待ちしておりました、聖女様!

オスワルド様より遺跡に案内するよう指示を受けております」

「ご苦労様です!

何か不便な事とか危険はありますか?」


ここは新しく最前線の要所となった為、いつ魔物に攻められて不思議はないのだ。

その為、ここの調査部隊は選りすぐりの人選と時々、ノルンやシトリーが巡回している。


「これくらい何でもありません!

厳しい訓練にも耐え抜いてきた精鋭ですので。

では、こちらへ。ご案内します」


兵士について城内へと入る。

石材からは相当な古さを感じるが、大広間にあるステンドグラスがとても美しく当時の技術の高さが伺える。

ちょうど、外からの光が射し込み神々しい雰囲気が漂っていた。


「わあああ、すごおーい!

綺麗ですよー、桜華さん!!」

「ああ、うちは芸術は分からねえがこれは見事だなあ」


最近の殺伐とした日常を忘れられた一時であった。

その後、脇にある廊下を進み地下への階段を降りていく。

かなり深く降った所には鉄格子がある部屋が並んでいた。


「ここは…牢屋ですか?」

「ええ、そうです。

ここ自体は何も残されていないのですが、突き当たりの牢をご覧ください」


一番奥の牢を覗くと薄暗い石造りの部屋となっている。


「何もないですよー」

「我らも最初はそう思ったのですが、ここを見ると石が崩れていて奥に空間があるのが分かったのです。

こうやって押してみると…」


ズズッと音を立てながら壁が後ろへずれていく。

その先には更に地下へ続く階段があり、周囲にあるレリーフは前に遺跡で見たものに似ていた。


「ここを発見してすぐに遺跡の話を思い出しました。

かなり強い魔物がいたら危険ですので入り口を再び封をして報告した次第です」

「確かに前回は強敵でしたねー。

皆さんはここで待っていてください。

私と桜華さんで行ってきますので」

「前回は付いて行かなかったから強敵と戦えなかったからなあ。

今回はどんなやつか楽しみだねえ」

「お二人ともお気をつけください」


案内をしてくれた兵に別れを告げ、地下への階段を降りていく。


「ここってどれくらい古いんでしょう?」

「それをうちに聞くかぁー?

聞く相手を間違えてるぜ、そういうのはティアナやノルンだろお」

「まあ、そうですよねー」

「そう簡単に納得されてもイラッとすんなあ」

「ええぇー、どうすれば良いんですかー!?」

「まあ、うちの専門は知識じゃなくこっちだからなあ。

気にすることねえか」


桜華は背負っている刀を撫でている。


「そういえば桜華さんの武器ってあまり見掛けない型ですよねー」


この世界の武器は西洋風の剣が一般的で日本刀など見たことない。


「鬼族は昔からこの武器を愛用してるんだ。

一本一本、職人が丹精込めて打ってるからなあ」

「そうなんですか…最初は誰から教わったんでしょうね?」

「さあなー。

使い勝手や切れ味を突き詰めたら、この形になったとかじゃねえか?」

「そう…なんでしょかねー」


何となく違和感は感じるが、西洋風の町並みも人間の文明は似るものかもしれないと納得することにした。


「おっ、やっと入り口みたいのが見えてきたぞ」

「ほんとですねー、あそこを開けると何かいるかもしれないです」

「やっとか、待ちくたびれたぜぇ」

「開けますよー、警戒してくださいねー」


階段を降りきり大きな扉の前にたどり着いた。

そのまま間を空けず扉を開け始める。

ズズッと重い扉が少しずつ開くと、ムワッと獣臭が立ち込める。


「いるぜ…いるぜぇ!

ひいふうみい…沢山の殺気に満ちてやがる」


真っ暗な部屋の奥に明かりに照らされて反射する複数の目が見える。


「一気に明かりを増やします!」


タルトのステッキから火の玉がいくつか飛び出し部屋全体を照らす。

前回と同様にドーム状の造りで周囲に彫刻などのレリーフで飾られている。

そして、奥には醜悪な獣がこちらをじっと眺めており品定めしているようだ。

上半身が鷲で下半身がライオンのようで体長が2mは超えており、その数、ざっと10頭はいる。


「グリフォン…」

「何だあ、そいつは?

あんなヤツ見たことねえぞ」


神話に出てくるグリフォンに似た獣は最近、この世界に来たタルトはともかく桜華も知らないのだ。

前回のキメラも同様に遺跡の魔物は古代の生き残りで地上では現存していないようだ。


「今回はうちに任して貰おうかぁ。

最近、こういった命のやり取りはご無沙汰だからねぇ」

「ええぇ、危ないのに…。

もう、しょうがないですねー。

危なそうならすぐに加勢しますから」


桜華は背中から刀を鞘ごと下ろし抜刀の構えをとる。

全身から漲る殺気を放つ桜華にグリフォン達も次々と起き上がった。


「さあ、何処からでも掛かってきな」


タルトは邪魔にならないよう後方の空中にプカプカと浮いて待機している。

グリフォンも狙いを桜華に定めたのか円を描くように周りを取り囲む。

想定通り未知の魔物との戦闘が始まるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ