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114話 捜索

リーシャが行方不明。

前代未聞の事件にタルトの衝撃は計り知れなかった。


「カルンちゃん、リーシャちゃんが行方不明ってどういうことっ!?」

「学校のヤツの話ではミミとリーシャは一緒に学校を出たんダガ、通学路で他の子供が倒れてるミミを発見したンダ。

だが、何処を探してもリーシャは見つからナカッタ…」

「そんな…」


膝から崩れ落ちるタルト。


「すぐに関所へ街道封鎖の指示を出しマスワ!!

通行する全てのものを厳重なチェックを行い、領地から外には出させマセンワ」

「シトリーさん、私も!!」

「タルト様はこちらで待機ヲ。

全ての情報を此処に集めますので、どんな事態でも直ぐに動けるようしておいてクダサイ」

「うぅ…分かったよぉ…。

何かあったらすぐに呼んでくださいね」


タルトは一人、神殿の会議室に籠っていた。

ただ、落ち着かずソワソワと部屋のなかを歩き回っている。

ドアが開く度に凄い剣幕で駆け寄ってくるという始末である。

定期的に各関所から報告はあがっているが、特にこれといった成果はあがっていない。

また、ドアが開きオスワルドが入ってくる。


「緊急事態と聞き、このオスワルド、駆け参じましたぞ!」

「オスワルドさん…リーシャちゃんが…」

「話は聞きました。

兵を総動員して不審者の目撃情報を集めております」

「それで何か分かりました?」

「学校の通学路付近で見掛けない複数人の男達がいたそうです。

もう見当たらないので実行犯かもしれません」


ここでモニカが飛び込んでくる。


「タルトちゃん、ミミちゃんが目を覚ましたわ!」

「すぐに行きます!」


部屋を飛び出して医務室へと急ぐ。


「ミミちゃん、大丈夫っ!?」

「タルトさま、もうだいじょうぶなのです。

でも、リーシャちゃんが…」

「何があったか教えてくれるかな?」

「はい、いつもとおりリーシャちゃんとがっこうからのかえりみちだったのです。

おとこのひとになまえをきかれて…。

それでうしろからおさえられて、くちもとをふさがれたらねむくなって…。

ねむるまえにリーシャちゃんがかかえられていくのをみたのです…」

「他に何か覚えてる?

男の人に見覚えは?」

「うぅ…ん…はなしかけてきたひとは…たしかディアラのえらいひとだったのです」

「偉い人…?

もしかして大臣のマレーさん?」

「パーティのときにいっかいあっただけなので…」

「聖女様、マレーは恨みをもって逃走中ですので動機は持っております」

「そうだね…そうだとするとリーシャちゃんが心配だよ!

怖い思いをしていないと良いんだけど…」


ミミは怪我もなく薬で眠らされていただけのようであった。

目が覚めてからはいつも通りの元気が戻っていた。

その日は夜になってもマレーの情報は入って来ない。

シトリーとカルンも戻ってきて集まった情報の整理を行う。


「まずマレーと思われる人物が学校帰りのリーシャとミミに出会い誘拐されました。

薬を使い二人を眠らせていることから殺すのが目的ではないと思われます。

ですが、名前を確認してるのでリーシャを狙ったものです。

その後、行方をくらまして街道にある関所では見つかっていません」

「まだ領内にいるのかな?」

「聖女様の仰るように領内にいることも想定して全ての建物を捜索しています。

住民も協力してくれてますが吉報はありません…」

「それじゃいったい何処に…」

「街道を抜けてないのであれば抜け道はどうデスノ?

森の中には無数にあるのデショウ?」

「ご指摘の通り抜け道は多数あります。

めぼしいところは監視を配置しましたが、獣道のようなものを含めると把握しきれてません…」

「そんな…」

「尚、範囲を広げてバーニシア及びディアラへも協力を依頼しています。

夜間も含め徹底した検問を実施しています」


捜索として出来ることは全てやり尽くしている。

一人の人物を捜索するのにここまで国をあげての協力はタルトの人徳の成せる事であろう。


「マレーの目的は何か分かりマシテ?」

「それはまだ…。

誘拐したのであれば何か要求があると思うのですが」


結局、その日はこれ以上の進展がなかった。

翌朝、ほとんど寝れなかったタルトが自室を出たら、オスワルドに呼ばれ会議室に向かう。


「今朝、急ぎ届いた文がここに。

何とマレーから聖女様宛てとなっています」

「貸してくださいっ!!

………」

「手紙には何と書かれてるのですか?」

「リーシャちゃんを助けたければベイリー城へ来いと…」

「ベイリー城!?」


その名称はオスワルドに衝撃を与えた。



場所は変わり城の玉座の間にマレーはいた。

横にはぐったりしたリーシャの姿がある。


「我が君、聖女は間違いなく此処にやって参ります」


玉座には尊大な態度の悪魔が座っており、紅い瞳でリーシャを眺めている。


「その雑種を探しに来るト?」

「その通りでございます。

聖女はハーフをこよなく愛し、特にこの娘を寵愛していたようです」

「汚らわシイ。

その雑種を視界に入れるデナイ」

「はっ、連れていけ」


リーシャが男に担がれて何処かに消えていった。


「さてマレーよ、よくやったノ」

「有り難きお言葉!」

「どれ褒美をヤロウ」


マレーは腰から短剣を抜き、刃を自分に向けて構える。


「お待ちをっ!一体これは!?」


必死に抵抗するがマレーの身体は意思に反して動きを止めない。


「これでもう老化の心配はなかロウ。

褒美に死を与えヨウ」

「そんな…まだ死にたくない…ぐふっ」


マレーは自らの心臓にめがけ短剣を振り下ろす。

そのままゆっくりと崩れ落ちた。


「それを片付けてオケ。

フフ…聖女よ、早く来るがヨイ。

人間の希望が堕ちる様が早く見たいゾ」


玉座の間には悪魔が一人で笑みを浮かべて座っていた。

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