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106話 真相

「まだしらを切るつもりか?

では、これを見てもらおうかな」


ノルンが部屋から出ていくと一人の男と籠のようなモノを持って戻ってきた。


「村から少し離れた所にこの籠のようなモノを無数に発見した。

なかなか頑丈に出来ていて、中には今回、村を襲撃した魔物の毛が落ちていた。

つまり今回の襲撃は誰かが意図的に起こしたものと推測できる。

ここへの道中、怪しい一団を発見したので問い詰めるとどうやら魔物使いで依頼を受けて、村の近くで魔物を放ったと白状してくれたぞ。

そして、代表である男を連れて来たのだ。

さあ、誰から依頼されたのか教えて貰おうか?」


ノルンの鋭い視線に怯える男。

ここに来るまで余程怖い思いをしたのだろう。

その震える手で一人の人物を指差す。


「ほう、貴殿はこの国の大臣のマレーであったな?

成る程、それなら兵士にも命令出来るし筋が通るというものだ。

問題は王もこの一件に関わっていたのかだな」


明らかに劣勢に立たされたマレーは助けを求めたそうにディアラ王をチラチラと見ている。


「ええーい、その怪しい男が襲撃犯だとしてマレーに罪を擦り付けようとしているに過ぎぬ。

我らが関わったという証拠など何処にもないであろう!」


苦しい言い訳だが実際に確たる証拠は残っていなかった。

状況証拠だけでほぼ間違いないが国のトップである国王を裁ける人間などいないのだ。


「あなた達は自分の都合で関係ない村の人たちを巻き込んだんですか…?」


襲撃の真相を静かに聞いていたタルトがポツリと呟く。

そして、ゆっくりと王のほうへ歩みを進める。


「ワシらは関係ないと言ったであろう。

それにそもそも奴隷上がりの獣人の村など我が国が守る義理などない。

元々、魔物と同じようなヤツラなのだ。

それがお互いに縄張り争いのようなものだろう。

そんなもの知ったことか!

そこの鬼や悪魔が同じ闇の仲間同士なのだ!

畜生同士、助け合えば良かろ、ふべえぇぇぇぇっ…」


タルトの右ストレートが炸裂し、綺麗に吹き飛んだディアラ王。

本気で殴れば死んでしまうので怒りがあるとはいえ、手加減していた。

あまりの想定外の出来事に場の時間が停止したが、桜華の笑いにより再び時間が動き出す。


「あーはっはっはっ、おいおい、見たかよ!!

タルトのやつ、王様をぶん殴ったぜえ!

いやあ、いくらうちでも王様を殴るのは気が引けてたのになあー」

「サスガ、タルト姉ダゼ。

気持ちがスッキリしたナー」

「それにしても怒ったタルトはマジで怖エナ…」


問題児達は反省もなく囃し立てる。

呆れて天を仰ぐノルンとゼノン。


「私はもう怒りました!

私を利用したいなら直接、来ればいいじゃないですか!

それを関係ない人を傷付けて!

それに獣人の人達や私の家族を馬鹿にするのは止めてください!

王様がどんだけ偉いかなんて知りませんけど、他人を馬鹿にする権利なんてありません!

弱い人を守るのが偉い人の役目でしょう!

そんなに争いたいなら私が相手になります!!

どうせ親にもぶたれた事がないんでしょう!

そっちが王様ならこっちは女神の使いです!

私が何度でも殴って痛みを分からしてあげます!!」


怒りが爆発し一気に捲し立てるタルト。

ディアラ王も何とか起き上がり、激しい憎悪を込めた目でタルトを睨み付ける。


「よくも殴りおったなっ!!

やはり悪魔らを従えていて野蛮な奴だ!

これは戦争だぞ!

ディアラとバーニシアの戦争だ!!」


場所は変わりバーニシアの王都。

ディアラ王をぶっ飛ばして宣戦布告したタルト達は問題が大きくなったので、バーニシア王に報告と相談に寄っていた。

すっかり怒りも収まり頭が冷えたタルトはやってしまった出来事の大きさを反省していた。


「ごめんなさぃ……」


床に頭をつけて最上位の土下座をしている。

それを見て困るバーニシア王。


「頭を上げてくだされ、聖女様。

悪くないとは言えませんが、ディアラ王のやり方はワシも非道だと思います。

過ぎた事はもう良いのです」

「王様…」

「そうだぞ、タルト。

過去なんて忘れて楽しむやろうぜー」


寛ぎ酒を飲んでいる桜華がチャチャを入れる。


「誰のせいでこうなったと思ってるんですか!!

勝手に依頼書を持っていって騒ぎを起こすんですから!!

桜華さん達は少しは過去を振り返って反省してください!」


怒り心頭のタルトと頷くノルン。

怒りの矛先が向いて不味いと思ったリリスが話をそらす。


「そんなことより今は戦争の事ダロ?

やっぱり全面戦争になるノカ?」

「あんなヤツラ、アタシが皆殺しにしてヤルゼ。

タルト姉が恐怖で支配すればこんなこと起こらねえダロ」

「やめてよ、カルンちゃん!

私は優しくて慈悲深い聖女様路線でいきたいのにっ! 」


正拳でいきなり殴る慈悲深い聖女はいないだろと、心のなかでツッコむ一同。


「まあ落ち着いてください、聖女様。

お優しいのは皆、分かっておりますから。

そして、戦争について説明させて頂きます」


ゼノンが方向修正しようと説明を始めた。


「古い時代には血を血で洗う凄惨な戦争をしていたようですが、現代では事前に取り決めた取り決めに従った戦いを行います。

審判役の国を決めて戦いの勝敗を決めるのです。

一般的なのは相手の大将を捕らえるか倒すのが多いですね。

今回はバーニシアから挑戦した事になってますからディアラがルールを決めれます」

「どんなルールだろうがタルトが負ける訳ねえだろ。

普通の人間がどうやったって勝ち目ねえなあ」

「桜華様のおっしゃる通りだと思いますが、ディアラもそれは理解しています。

その上で勝てるルールを提案してくるでしょうから、油断は出来ません」

「ちなみに負けるとどうなるんですか…?」


不安そうに聞くタルト。


「事前に敗者へ望む事を決めておくのです。

今回は聖女様を思い通り操りたいという思惑から始まってますから、それに関する事かと。

それと向こうの主張が正しい事になるので桜華様達にも何かしらの罰を求めて来るでしょう。

下手したら死罪を求めるかもしれません」

「死罪って…」

「心配するなよ、タルト。

もし負けてもうちが大人しく死刑になんか従わねえよ」

「それは難しい問題ですね。

国家間で取り決めた取り決めを破ると他の六国が協力して攻められても文句が言えなくなります」

「そんなぁー、ますます負けられないじゃないですか…。

はぁ…あの時の私を止めれたらなぁ…」

「どんなルールを提案されても出来る限りフォローしますよ。

聖女様なら負けないと思いますが卑怯な手を使ってくるかもしれませんからね」


この日は王都に泊まることにした。

そして、翌日にディアラから戦争のルールが記載された手紙が届くのであった。

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