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嫁と赤リップ

12/29誤字修正してます。ご報告ありがとうございます。


「それはそれは……。マリアティナに成り代わりましてお礼申し上げますわ。ティナの時のことはこちらの確認ミスもあり、行き違いがあったこともありますので、良いでしょう。ですがっ!今世で私の姿を盗撮し、追尾魔法という姑息な手段でストーカー行為を行ったのは事実で真実です!私は栃澤 海斗の事は信用なりませんのでご了承下さいませ!そしてさようなら!」


私は逃げた。魔法も駆使した。


瞬間転移して、最近購入した一戸建ての我が家に急いで逃げ込んで門扉を閉めると、魔物理防御障壁を張る。


「あ、ねえね~おかえり~」


彩香が玄関ドアを開けて私を見ていた。私は急いで玄関ドアを閉めて……戦慄した。


何だか朝方に見たことのある革靴が綺麗に揃えて玄関の土間に置いてある。


「あ、麻里香~今ね麻里香のお友達だって言う……」


由佳ママの呑気な声が聞こえて私は猛ダッシュで居間に駆け込んだ。


「よ~麻里香おかえり!」


「な……な……」


居間にはソファに悠真と一緒に仲良く座って絵本を読んでいる、栃澤 海斗がいた。


嘘でしょ嘘でしょ!?だって私の方が先にダッシュしたよ?転移魔法ですぐに帰って来たよ!?


「帰って来るの、遅かったな~?」


ニヤッと笑った栃澤 海斗に、またも怒りが込み上げてくる。


「ママっ!知らない人を家にあげるなんて不用心じゃない!?」


由佳ママは洗濯物を畳みながら、小首を傾げている。


「だって栃澤君、生徒手帳まで見せて自己紹介してくれたわよ?制服だって麻里香の高校のものだし、おまけに在校生の祝辞の子でしょ?すごいわね~」


っおおい!のほほん由佳ママのせいでストーカーを家にあげちゃったじゃないか!


のほほん由佳ママは疲れてガックリしている私の背中に声をかけてきた。


「麻里香、お昼はどうするの?」


「適当に食べるよ……」


そうだ、ストーカーなんて無視だ、無視。


取り敢えず、着替えよう……。重い足取りで居間を出て、二階の自分の部屋に入った。


「へ~結構可愛くしてんのな」


「!」


いつの間に!?


後ろを向くと部屋の中にストーカー(元旦那)が入って来ていた。


「ママー!?ストーカーが入って来……」


「ばーか。魔法で空間を隔離してるから声なんか外に聞こえないよ」


栃澤 海斗(元旦那)をジロリと睨む。


「本当にどういうつもりですか?」


「やっとお前に会えて浮かれている自覚はある」


「やっと?」


「孫が出来る年までぼっちで生きてたんだぞ?そりゃ、ザイード親子が構ってくれたから寂しさは感じなかったけど、ティナがいてくれたらな……と思うことばかりだった。死ぬ時も不安と恐怖しかなかった。もし……願いが叶えられずに生まれ変わってティナがいなかったらどうしよう、また廻り会うまで会いたくて、会いたくて……苦しいのが続くのか……とか」


知らなかった……ナキート殿下って結構重い愛し方なんだわ……。そりゃストーカーにもなるわ。


「この世界に生まれ落ちて…お前の魔力を確かに感じて…歓喜に打ち震えた。早く会いたくて、自由に動けるようになったら捜しに行って……」


え?


「やっとお前の魔力を追尾出来て、個人を認識出来てから居住所、家族構成、すべて調べ上げた」


ええ?


「ティナが事あるごとに、進学希望をアルバイト可で制服が可愛くて、奨学金が出て、家から電車一本で通学出来て……と言っていたので、色々働きかけて、上手く俺と同じ高校に進学してくれた時は堪らんかった」


えええ?


「尾行……盗撮、あげくに盗聴……ですか?」


本当に重度の強烈な異世界を跨いだストーカーじゃないかっ!


「かっ帰れーーー!!」


私は元ナキート現ストーカーに渾身の風魔法をぶつけた。


ぶつけた途端、ストーカーは逃げた。逃げやがった……逃げやがりましたよ。


その日の夜、


祖父母も招いて皆で、祝!麻里香高校進学のお祝いパーティーが催された。料理は私と由佳ママの合作だ。


から揚げはスパイシー味とノーマル味の二種類を作った。とんかつも食べたい!と翔真が言ったので、カツを揚げた残り油でピリ辛味のフライドポテトも作った。お父さんとじいちゃまは美味い美味いと喜んでくれた。


そしてピり辛から揚げとポテトを少しだけ小皿にとってコッソリと自室の窓辺に置いた。


あちらの世界で美味しいモノを沢山食べているだろうけど……気持ちだけ我が息子、ザイードに手料理を食べさせたくて……用意した。


「辛い食べ物好きだって言ってたものね~ふふ」


お腹を押し上げるあの子の元気な魔力を思い出す。私は一人窓辺で祈りを捧げた。どうか異世界で幸せでありますように。


翌日


電車に乗って通学路に降り立つまでは順調だった。シュアリリス学園こっち、の看板の前で私はものすごく悩んでいた。


このまま学校に行くべきか、逃げるべきか……いやいや、何故私が逃げないといけない?あれ?これ昨日も同じ事考えてなかった?


悩んでいても仕方ない。私は緩い坂に向かって足を踏み出した。


「嫁ー!おはよう」


「…………」


元旦那のストーカーは兎も角、栃澤 海斗と愉快な仲間たちまで何で勢ぞろいしているのよっ!


私は無視をして坂を歩き出した。


「おいおーい。先輩が朝のご挨拶してるんだよ?新入生の分際で無視するわけぇ~?」


大きい声で言うなっ!確かあなたは2-Bの旭谷 祥吾(あさたにしょうご)先輩だね!


「おいっ嫁!聞いているのかっ!」


「いい加減にしてよっ……あんたの嫁じゃないってばっ!」


私は出来るだけ目立たないように早歩きしながら、坂を登る。校門の所には私のS組の担任の橋本先生が立っていた。


「お、おはよ~さん」


「先生、おはようございます!ストーカーに付き纏われています、助けて下さい」


橋本先生はポカンとした後、私と私のすぐ後ろにいるストーカーを交互に見ると


「ストーカーって30㎝くらい後ろについて来るもんなの?5mくらい後ろの電柱の陰に隠れて、ついて来るイメージなんだけど?」


となんとも頼りない発言をした。私はキリッとして言い返した。


「30㎝だろうが5m後ろだろうが、42.195キロ離れていようがストーカーはストーカーです!」


「はあ……」


橋本先生は後ろのストーカーに声をかけた。


「おはようさん、栃澤。お前の嫁がそう言ってるからあんまり刺激してやるなよ?」


「おはようございます橋本先生、ご忠告痛み入ります」


「嫁じゃありませんっ!」


私は、栃澤 海斗を睨みつけた後、走って教室に飛び込んだ。


「おおぅ嫁、おはよう!」


「嫁じゃないっ、おはよう笠松君!」


「また絡まれていたの?おはよ~麻里香!」


「麻里ちゃんおはよう」


「おはよう!」


私は女子3人が固まっている自分の机に座って突っ伏した。


「おはよ…菜々、萌ちゃん、花音ちゃん」


「旦那さん朝から乗り込んで来てたよ?まだ登校してないって言ったら先輩達とどこか行ったけど?」


菜々がそう言いながら、萌ちゃんに聞くと萌ちゃんも苦笑いしていた。


「皆個性的で格好良いけど、変わってるね~」


「皆、内進の方々よね?」


内進……花音ちゃんの方を見た。つまりは子供の時からシュアリリス学園に在学のお金持ちのお坊ちゃま達だ。


関わりたくないのに……。


「でも麻里香と接点……無いのよね?なんであんなに嫁嫁言ってるの?」


菜々の疑問ももっともだ。どう説明したらいいんだろう……。


「私がいない間にも家に上がり込んだりしているしさ……」


「ええ?栃澤先輩が?」


「そりゃストーカーじゃない」


萌ちゃんも花音ちゃんもびっくりしている。


そうよね……本人にも言ってるのに堪えないんだよ、あの人……あ、馬鹿だからか?


午前中の授業は問題なく終わった。流石に授業中に乱入して来たり……とかはしないらしい。


「は~お昼だ!食堂に行く?」


菜々に聞かれて私はお弁当箱を取り出した。


「お弁当だけど、いいのかな?」


「持ち込み可だったはずだよ、行こう!」


女4人でキャッキャッしながら食堂に行ったら、また待ち構えていましたよ、アレが……。


「麻里香!おい、弁当だと?俺には無いのか!?」


「…………」


4人用のテーブルで食事をしていたら、栃澤 海斗が乱入して来た。


「栃澤先輩、あちらで旭谷先輩達がお待ちになっていますから、どうぞお戻り下さい」


こちらに向かって手を振っている旭谷先輩達を手でくいっくいっと指し示すと、栃澤 海斗はものすごい顔で睨んでくる。


「明日は絶対弁当を作って来てくれ!因みに好き嫌いやアレルギーは無い!辛い味のものが好みだ!」


「……」


「ねえ明日、お弁当作ってくるの?」


菜々が遠ざかって行く栃澤 海斗の後ろ姿を見ながら聞いてきた。


「まさか?材料費も頂いてないのにただ働きなんてしないわよ」


「麻里香、ちゃっかりしてる!でも、このから揚げ美味しいね。そりゃ栃澤先輩も食べたいだろうね~」


いやいや、萌ちゃん。あの人は昔だって私の手料理なんて食べた事ないんだよ。そして今だってやっぱり食べる事のない別世界の人なんだよ。


私は自分のから揚げを食べながら、少ししんみりしたのだった。


お昼を食べて教室に戻ろうか……とした時に


「ちょっと宜しいかしら?」


と昔懐かしいフレーズで呼び止められた。後ろを向くと虹川深絵里が今日も赤リップを輝かせて、さながら伯爵令嬢とお友達の令嬢のように複数人の連れとそこにいた。


「場所を移動しましょう」


虹川さんが赤リップの口元をギリッと歪ませてそう言ってきた。


ああ……まただ。また令嬢に囲まれて……ナキート殿下の事をあれこれ言われて……。


「虹川さんのお話はここじゃ出来ないお話ですか?」


ハッとして菜々の顔を見た。菜々は怯むことなくサザービンス伯爵……じゃなかった虹川 深絵里を見詰めていた。


虹川 深絵里は少し顔を引きつらせると


「こちらでも問題ありませんわ」


と言って話し出した。ああ、今の篠崎 麻里香……私にはこうして一緒についていてくれる友達がいる。


私の肩を背中を摩ってくれている萌ちゃんと花音ちゃんの魔力が優しい。隣の菜々からは好戦的な魔力を感じる。


伯爵令嬢……じゃない虹川さんは私をビシッと指差した。


「あなた、栃澤様に近づくのをおやめなさい」


あ…………。


あ……………………。


思わず菜々の顔を見てしまった。菜々も萌ちゃんも花音ちゃんも皆、私の顔を見ていた。皆の顔は複雑な表情をしていた。


「栃澤様はTZoneのご子息なのよ。シュアリリス学園の王子様なのよ。あなたなどとは住む世界が違うのよ」


現王子?かどうかは知らないけど、元王子なのは知ってます。


「何を勘違いなさっているのか、朝から押しかけて一緒に登校されるなんて、栃澤様の迷惑をお考えなさい!」


本当、朝から迷惑を考えて欲しいですよね…………。


菜々は若干笑いを堪えていそうな顔で私の方を見てきた。うん、ウケルよね、菜々の気持ちは分かるよ。


「あなたが栃澤様の特別になれることはないのです!厚かましく目の前をうろつかないで大人しく……」


「でしたら、虹川さんもご一緒に栃澤先輩の前でそのようにご説明して下さい。私も栃澤先輩から直に説明を頂けたら納得して二度と関わらないように注意致します」


私が虹川 深絵里の話をぶった切るように言葉を続けると、虹川 深絵里は視線を彷徨わせた。


「ど、どういうことですの?」


この子は頭の回転は良くないのかな?私はもう一度噛んで含めて言い直した。


「今、虹川さんがおっしゃったことを栃澤先輩の前で栃澤先輩にお伝えすれば、先輩から賛同を得られるということでしょう?でしたら今すぐ、先輩の所へ行って私が宣言致しますから、二度と栃澤先輩には近づかない。世界が違うから関わらない。さあ、一緒に行きましょう!」


私は有無を言わせず令嬢達を先導して栃澤 海斗の所……2-Sクラスへ突撃した。


私に呼び出された栃澤 海斗はスキップしながら戸口にやって来て、令嬢達を見て明らかテンションを下げていた。魔力に感情を出し過ぎだよ……。


「なんだ?」


「ささ、虹川さん。どうぞ!」


私は虹川さんにどうぞどうぞ……というジェスチャーをした。虹川さんは戸惑いながらも、何とか話し出した。


「この篠崎 麻里香と私達とは住む世界が違いますわよね?」


「はぁ?同じ世界に住んでるけど?」


うむ、栃澤 海斗の回答も間違いじゃない、ずれてるけど。


「目の前をウロウロされて迷惑ですわよね?」


栃澤 海斗は目を細めて虹川さんを見た後、私を見た。


「いい加減認めろ!麻里香は俺の嫁だ!」


「嫁じゃない!」


条件反射で切り返してしまったが、咳払いをして居住まいを正した。


虹川さんはやっと栃澤 海斗の発言の意図が分かってきたのかワナワナ震えながら私を見た。


「どういうつもりなんですのっ!?栃澤様はあなたとはレベルも違うすべてが違う選ばれし人間なのですよ!?早く宣言なさいっ今後一切栃澤様に近づかないと……!」


いやだからさ、何で私に向かって言う訳?


「栃澤先輩にそう言いなよ……」


思わず菜々がそう呟いた時、悲劇?は起こった。


「分かってないな、お前!俺と麻里香は結ばれし運命なんだ!神が引き裂こうともそれに抗い廻り会う運命。愛し合う二人!世界が別とうとも俺達を止められないんだ!」


手を大きく開いて栃澤 海斗は一人、スポットライトを浴びたようなポーズをしている。


廊下と2-Sのクラスが静寂に包まれた。


ほら、見ろよ?この元王子はさ、馬鹿なんだよ。重度の重い愛を語る馬鹿なんだよ。


「と……と、と、栃澤様?」


虹川さんが頑張って馬鹿に話しかけようとしたが、馬鹿はズバッと私を指差した。


「麻里香は俺から逃れられない‼運命の伴侶だからな!」


「お断りします」


また静寂が辺りを包む。


「麻里香……」


「昨日会ったばかりで呼び捨てはしないで下さい」


栃澤 海斗は魔力の明かりをしょんぼりと暗めに下げてしまった。ちょっときつくいいすぎたかしら。この虹川さんが赤リップのあの伯爵令嬢を思い起こさせて、イラついたのですこーし元旦那に八つ当たりしてしまったわ。


大人げないわね、私ったら。


しょんぼりした栃澤 海斗の後ろに愉快な仲間たちの眼鏡と講堂でパンフレットを配っていた先輩が近づいて来た。おや?この方々もSクラスか、お金持ちで頭も良いんだね。


「海斗、今日の所は引け。時には引くことも肝心だ」


「嫁もこんなに愛されているのに何が不満なんだかね~」


ちょいこら!?


「盗撮や盗聴してくるストーカーに不満だらけですがね!」


「え?」


虹川さんが、もう流石にこの馬鹿の正体に気が付いたようでドン引きしている。


おっと予鈴が鳴っている。


「帰ろっか、菜々、萌ちゃん、花音ちゃん。付き合ってもらってありがとうね」


私はクルリと体を反すと一階に戻った。菜々はクックッ……と笑いを堪えている。


「相変わらず話を聞かない旦那だね~」


「もはや壮大なコントを見てるみたいで楽しいよ」


「ちょっと萌ちゃんそれやめて~」


私達はSクラスに戻った。午後の授業が始まる。今日の放課後、私は初バイトに出かける日だ。


そして放課後


私は駅前の商店街の一角にあるパン屋さんのレジ前で一人ブルブル震えていた。


寒い訳ではない。怒りに震えているのだ。


店の道路を挟んだ反対側にある可愛いカフェから、例の人の魔力を感じているのだ。今度は張り込みですか……。もう将来の就職先は刑事とかにしたらいいんじゃないでしょうか?


犯罪者、特に変質的な犯罪に手を染める人の心理があの馬鹿には分かるはずだし、犯人と共感性を感じやすいと思うから是非、性犯罪撲滅に力を注いで下さい。


おっとお客様が入って来た。集中、集中。バイトの終わる7時の閉店時間までなんとか集中出来た。


「お疲れ様、麻里香ちゃん。このパンの耳持って帰るかい?」


「わあ、ありがとう。おばさん!」


このパン屋さんは中学の同級生、里美のご実家だ。里美はバスケットボール部に入部しているので、恐らく今日から部活動開始だと思われる。後でお礼の連絡をしておこう。


私は里美のママンからパンの耳を頂くとバイト先のパン屋を出た。


ふぅ……。


「先輩って暇なんですね~」


暫く歩いてから立ち止まり後ろを振り向いた。


5mほど後ろの電柱の陰にサッと隠れるデカイ男。やめてよ、仮にも元王太子殿下なのに……。


「後をつけられると気になるんで、こちらに来ませんか?」


栃澤 海斗は足早に近づいてくると困ったような情けない顔をしていた。


「どうしてそんなに極端な接し方をされるのですか?」


「極端?」


私が歩き出すと栃澤 海斗も歩き出した。私はこの際だからと思い切って聞いてみた。


「今日虹川さんに言われました。栃澤 海斗は選ばれた人間で、シュアリリス学園の王子様だと……」


「そんなのじゃない……」


「周りからはそう見えているのですよ?私から見てもそうです、ねえ?殿下……もう過去は過去、現代は現代で生き直ししませんか?いつまでも昔の事を引きずっていたら新しい出会いもありませんよ?」


栃澤 海斗は立ちどまった。私も立ちどまった。商店街の明かりから少し離れてきたので周りはもう暗い。


「お前は……やっぱり、いや……そうだな。俺は……ティナ、麻里香のことを何も知らなかった。知らないままにたった18年で別れた。知らないから思いが募った。今新たに栃澤 海斗として篠崎 麻里香として新たに付き合っていきたい。ダメか?」


栃澤 海斗は段々声を震わせてきて、泣いているような感じがした。泣かせたい訳じゃない。そう言えば前もティナに先立たれて置いていかれたとか何とか言っていたね。


まだ置いていかれた喪失感に記憶を感情を蝕まれているのかもしれない。


そうか……時が過ぎたら彼だって、ナキート殿下を忘れて……栃澤 海斗として生きて行くことを選ぶかもしれない。その時まで私はマリアティナとして側にいてあげればいい。


昔一番好きだった人の為に……。


私が昔出来なかったことを今少しだけ……。




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