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ゆーきやこんこ

クリスマスに乗り遅れました。

イチャコラしています。


12/26誤字修正しています


「クリスマスは仕事だって言ってたよね?ソレなのに何、この女?」


「美紗…店内では静かにしなさい」


何故離れたテーブルでの痴話喧嘩がここまで鮮明に聞こえているかと申せば…集音魔法を使っているからでありまして、私はその痴話喧嘩に耳を傾けている次第です、はい。


その時、店内にブワッと濃密な魔力の気配を感じた。思わず顔を上げて魔力の発生源を見た。


例のテーブルだ。


背の高い綺麗な女の人が何かをテーブルの上に置いた。その置いたものから濃密な魔力の気配を感じる。


「これはもういらないわっ!」


そう言って濃いめ赤色のワンピースを翻してその綺麗なお姉さんは店を出て行った。


ドラマみたいだな~と思ったけど、そのテーブルの上に置かれた…多分、指輪かピアスなどの装飾品が入ったケースから魔力が立ち上がっているのが気になる。


「彼女もあんなに激高する人ではなかったのにな…」


「ねえそれ…何?」


「ああこれは曾おばあ様から譲って頂いた指輪だよ」


そう言って、テーブルの座っている男性(20代半ば、まあまあのイケメン)は指輪を同じテーブルの女性に見せている。


「まあ素敵!」


「良ければ受け取ってもらえるかな?」


「まあフフフ…それはプロポーズ?」


私はそこでカップルの会話の聞き耳を止めた。その曾おばあ様からの指輪からはまだ濃密な魔力が流れて来る。


「あの指輪は良くない魔力の方…かな?」


海斗先輩もどうやら聞き耳を立てていたようだ。私は頷いて見せた。


「しかし、先ほどの赤いワンピースの女性、どこかで会ったことある気がするんだが…」


「私は…分かりません。でもすごく綺麗なモデルさんみたい方でしたね…」


「モデル…」


私達はその修羅場カップルより先に店を出た。早めに出たのには訳がある。


24日の夜11過ぎにはサンタコスをして篠崎家に待機しておかねばいけないからだ。


「麻里香もコスプレするか?」


と散々誘われたけど、なんでまた私がそんなもの着なきゃならないんだ!とごねていたので…コスプレは回避できた。


出来たと思っていた。


篠崎家の裏口からこっそり自宅に侵入?し、私達はキッチンで私の帰りを待っていた由佳ママを見て仰天した。


「ママァァ?!サンタ?サンタ?!」


ママは年甲斐もなく…失礼、年を超越したお姿のミニスカサンタコスで小首を傾げてテーブルに座っていた。


「由佳さんっ!いいですね!」


カシャ…カシャ…。一眼レフの変態こと、元旦那が由佳ママを褒めちぎりながら、スマホのカメラで由佳ママの姿を激写する。


「あらあ~まあ!うふふ。撮って撮って!」


由佳ママもノリノリだ…。するとサンタコスに着替えた真史お父さんもキッチンにやって来て、普段着の私はものすごいアウェイ感に苛まれる。


おまけにサンタは3人で固まって集合写真なんぞを撮っている。私1人だけものすごい孤独感だ…。


結局…孤独に負けた。アウェイ感に負けた。


「麻里香ー!素敵だっ最高だ!」


カシャ…カシャ…。


私がサンタコスに着替えて登場すると変態は色めき立った。私のサンタコス姿をカメラに収める変態サンタ。


「静かにして下さい!子供達が起きます!」


「消音魔法を使ってるよ~」


ぐぬぬ…。ムカつくなぁ。


そして、子供達の枕元に海斗先輩のプレゼントと真史お父さんのプレゼントが置かれた。プレゼント内容はお互いに被らないように配慮したらしい。


由佳ママと真史お父さんはサンタコスのまま夫婦の寝室へ向かった。多分イチャコラするんだろう。


私はサンタコスのままキッチンに座る海斗先輩にコーヒーを入れてお出しした。


「こういう風習…モッテガタードにないよな」


「そうですね、クリスマスパーティーのプレゼント交換もありませんよね」


海斗先輩は嬉しそうに微笑んでコーヒーを飲んでいる。


「心が温かくなるイベントだな」


あ、もしかして…


「このコスプレも黒革の手帳…死ぬまでにやりたい事…の中に入ってます?」


海斗先輩ニヤッと笑った。


「ああ勿論だ。『嫁とサンタのコスプレをして子供達にプレゼントを配る』だ」


嬉しくて笑顔になる。


「素敵なやりたいことですね。これは許可しますよっ」


海斗先輩がテーブルに置いた私の手にご自分の手を重ねた。


「麻里香…プレゼントを配る子供達は何も篠崎家の子供達だけとは限らないぞ。未来の俺達の子供達も数に含まれている」


俺達の子供達…ああ、それって!想像してカーッと顔が赤くなる。海斗先輩が優しく私の手を撫でる。


「楽しみだな」


「そ…そうですね」


「ザイードを自分の手で育てられなかった分…今度はしっかり見てやってくれよ」


「が…頑張ります」


海斗先輩の顔が近づいて来る。ああ、もうこの世界の未来もこの人と一緒なんだ…と思うと嬉しい反面、怖いな~とちょっぴり思ったのは元旦那には内緒だ。


チュ…。チュッ。


音をたてて唇が優しく吸われる。段々深くなってきたが、海斗先輩が一度口を離した時に呼吸を整えていると


「麻里香、愛している」


と私の耳を舐めながらそう囁く元旦那。はあ…刺激がすごいな…。


その後、私はメリークリスマスの朝を海斗先輩と一緒に過ごすことになった。


翌朝、海斗先輩の所持する(!)マンションの一室で目覚めた。


気絶しなくて良かった。今世の私は基礎体力はあるほうだ。リズム感と運動神経はないけれど…。


横を見ると綺麗な顔で寝ておられる元旦那、今彼。携帯電話の画面を見る。


朝6時なのだが、そろそろ戻ろう。


今更真史お父さんも怒ったりはしないだろうけど、高校生が朝帰りはマズイ。


「ん…麻里香」


「はい、おはようございます」


海斗先輩は目を擦りながら私の方へ手を伸ばした。私の肩まで伸ばしたストレートヘアーをサワサワと触っている。


「何時~?」


「6時です。家に帰りますね、流石に高校生が朝帰りはマズイと思いますので」


海斗先輩は完全に目覚めたのか、私を自分の方へ抱き抱えると私の頭にキスをしている。


「体、辛くないか?」


「何とか…昔のマリアティナの時に比べたら全然大丈夫です」


海斗先輩が笑ったのか体に振動が伝わる。


「やっぱり魔力相性が良いと、気持ちいいな、最高だ」


「ナキート殿下の時と同じこと言ってますよ?」


「言ってたっけ?だって気持ちいいんだもんな~。ああ、早く帰さないといけないけどもっと一緒にいたいな。あ、そうだ~初詣は行くのか?初日の出を見に行くか?」


「初日の出?素敵ですね!」


「だろ?富士山の初日の出は荘厳だぞ。……なんだその俺の恋心も吹っ飛びそうなほどの、すごい顔は?」


私はクリスマスを共に過ごした彼女あるまじき、般若顔になっている自覚はある。


「何故わざわざ元旦から苦行を噛み締めながら山登りをせねばいけないのですか?」


「馬鹿だな!富士登山の醍醐味じゃないか。登りきった先にあるご来光!日本人に生まれて良かったっと感動で咽び泣く瞬間だぞ!」


何が咽び泣くんだっての〜元異世界人、青い目の金髪バリバリのくせに…。


帰り際までご来光の素晴らしさや初日の出の神々しさなどを、力説する海斗先輩に負けて、『初日の出を拝みに行こうツアー』が決定してしまった。


「祥吾とタイガは参加。ハルと玉ちゃんは眠いから不参加だそうだ」


へえ、玉田先輩のこと玉ちゃんて呼ぶんだ〜じゃなくって!


「ちょっと待って下さいよっ!私以外のメンバーはラオウとケンシローの肉肉コンビじゃないですか!」


ケンシローとは橋本先生世代のお兄さん達を熱くさせた某世紀末漫画の主人公で、橋本先生がゴリマッチョ系の藤河 太我先輩を勝手にそう呼んでいるのだ。


気になったので橋本先生に


「じゃあ海斗先輩はその漫画のキャラクターに例えるなら誰ですか?」


と聞いたら


「レイ」


と即答された。しかも


「篠崎は間違いなくリンだな」


と言われたので気になって調べたら、海斗先輩が例えられたキャラクターはすごく人気のある悲劇のヒーロー的なキャラクターで、一方リンは……ケンシローにくっついている小さい女の子だった。


いやさ、更に調べたら〇リアさんや〇ミヤさんとか美女枠のキャラクターがいるじゃないか。なんでまた私だけそんなチビッ子キャラなの?


因みに『初日の出を拝みに行こうツアー』は大晦日から元旦にかけて悪天候が続き、急遽中止になった。ザマア!と思ったことは許して欲しい。


ツアーは中止になったのだが、せっかくだからと年明けの1月2日から旭谷先輩の箱根の別荘にご招待された。私が肉肉に挟まれるのはイヤだ!と叫んだお陰で、花音ちゃんと菜々が一緒に来てくれた。


萌ちゃんは正月は親戚一同の集まりに強制参加らしく不参加である。無念のメッセージが鬼のように送信されてきていたのは萌ちゃんの恨みの深さゆえ…かもしれない。


「いや~別荘に温泉引いてるなんて流石だね~。しかも各部屋に露天付き!ラオウもやるじゃない!」


菜々が上機嫌で旭谷先輩を褒めたたえた。


「だね~気持ちいいね」


「うんうん」


花音ちゃんの言葉に私も相槌を打つ。


お正月早々にお邪魔した旭谷先輩の別荘は、それはそれは豪奢な日本庭園を持つ和風モダン建築の粋でおしゃれな別荘だった。もうお城と呼んでもいいかもしれない。そして各部屋に備え付けられている天然露天風呂に只今女子3人で入浴中だ。


明日はこの別荘の裏山で…なんとスキーとスノボを初体験する。


今は笑っているが内心恐怖しかない。


「菜々はスノボしたことあるんだよね?」


「うん、でもあれはバランスが大事だからさ。上手く板に体重乗せればそこそこ勝手に滑るよ?」


嘘だ!そんな訳ない!運動神経もいるはずだ!そのバランスだか何だかが悪かったらどうしてくれるんだ!


「スキーもスノボも自転車と一緒だと思うけどコツを掴めばいけると思うよ?」


私は湯舟からザッパーンと立ち上がると花音ちゃんを見下ろした。ついでに菜々も見下ろす。


「それは菜々も花音ちゃんも運動神経いいから言えるんだよっ!もう予言しちゃうよっ私、皆様が華麗に滑っている最中にきっと転んでいる時間の方が長いよ!」


「後ろ向きな予言だね」


「麻里ちゃん、怖いと思って腰が引けると余計に転びやすいよ?私がついててあげるから練習しようね?」


「花音ちゃんっ!」


花音ちゃんのふくよかなお胸に飛び込む。生乳の柔らかさを顔全体で確かめる。


さて夜は豪華おせち料理のフルコースだ。


お風呂から上がった私達は貸して頂いた、浴衣に着替えて大広間へ向かう。


「ぐはっ!」


「わあ…」


「……」


すでに大広間で待っていた、浴衣イケメンズの破壊力は凄まじかった。予想通りというかラオウこと旭谷 祥吾先輩は和装が似合う。藤河 太我先輩もゴリッとした筋肉ではあるが流石、着こなしている。


さあうちの旦那は…。


「浴衣の前をはだけさせるなっ!」


「風呂上がりで暑いんだよ…」


格好いいのだが、だらしなく合わせの前を広げて腹立つことにシックスパックをチラ見せしながら、風呂上がりの艶っぽい色気を振りまく変態こと海斗先輩(取り敢えず彼氏)。


「変態だから、肌見せチラリが好きなんじゃないの?」


「そうかもね~!」


菜々と花音ちゃんの海斗先輩への容赦ないツッコミに何度も頷く。海斗先輩はカッ…と魔力を上げた。


「お前達っ…先輩に向かって何という口の利き方だっ俺を誰だと思っている?!」


「変態でしょ?」


これは私。


「変態」


菜々様のお言葉。


「只の変態」


旭谷先輩のお言葉。


藤河先輩と花音ちゃんは微笑んでいる。


変態のシュプレヒコールだ。


騒ぐ変態を放置して旭谷家の専属料理人さんによる豪華おせち料理を頂く。あ、今頃家では5段重のおせちに入っているキャビアや伊勢海老を食べて喜んでるのかな~。


豪華おせち料理のお膳の上には料理長直筆のお品書きが添えられている。菜々は一口食べてはお品書きのコメント?に目を通している。


「わあ…私フォアグラ初めて食べた~」


菜々様、わたくしも初めてで御座います。もっちゃりとした濃厚な味で御座いますね。


「こうやって皆で旅行も楽しいな~」


と、まるで日本酒でも飲んでるんじゃないか?と思うような色気を出して旭谷先輩が目を細めている。


「来年の春の遠足は温泉にしようか?」


「お、それもいいな。」


「高校生の遠足が温泉が良いなんて常識外れな発言は慎んで下さいっ!」


私が叫びながら変態とラオウをジロジロと睨んでいると藤河先輩が、そう言えば…口を開いた。


「海斗も祥吾も修学旅行、欠席してたけどどうして?」


え?…っあ!そうか先輩達は今年2年生だ。当然今年は修学旅行に行く年だったはず…どうして欠席?


すると、海斗先輩は何の躊躇も無くこう言った。


「だって行先、ローマとかミラノだろ?個人的な旅行で何回も行ってるしつまらん」


旭谷先輩も同じく流し目を何故だか私達に向けながら、さらりとこう言った。


「海斗が『嫁と行く新婚旅行の下見に行く!』って言うからおもしろそーだからそっちについて行ったんだよ。なんかメルヘンな女子受けしそうな城とか、きゃわゆい街並みのお菓子の家みたいな所とか色々回ったぜ~。嫁ちゃんの今後の楽しみの為に場所は伏せておくけど、何故だかきゃわゆいホテルに泊まった時に現地のおっさんに生温かい目で見られてたんだけど、何でかね?」


「それソッチ系のカップルだと思われたからっ!」


「そうだそうだ!そんな、きゃわゆいホテルに何故肉&肉同士で泊まっちゃうんですか?!危機感ゼロですよっ!」


菜々と私は同時にツッコんだ。旭谷先輩はまだ色っぽい目で私達を見てくる。


「あ、そう?そうしたら今度はそのきゃわゆいホテルに菜々ちゃんと泊まりたいな~」


と言った。言われた菜々は大きな瞳を限りなく細めて、胡乱な目で旭谷先輩を見ている。


「あいつ…日本酒飲んでんじゃね?」


はい、菜々様。私もそうじゃないかと疑っております。


後に


きゃわゆいホテルじゃないけれど、旭谷先輩に休みの度にあちこちに連れ回されている菜々を度々見かける様になった。


あれ?もしかして…旭谷先輩、結構本気なの?菜々と旭谷先輩は魔力の相性的には良い感じなので応援はしますが…。


さてさて


新春初滑りと行きますかー!………怖い。 


「麻里ちゃん、1、2!1、2!」


花音ちゃんの号令の元、スキー板を前へ出す。ぬおおお…体が動かない。あ…斜めになって…。


ズザザザッ…。


またこけた。もう5回目の転倒からはこけた数は数えていない。


「ひゃっほぉぉ~!」


遠くの急斜面でラオウ(王者)とケンシロー(肉)とレイ(今彼)の3人が楽しそうに滑り降りてくる姿が見える。


「さっすが運動神経の良い人達ってどんなスポーツでもこなせるのね」


花音ちゃんがそう言ってはいるが実は、花音ちゃんも結構運動神経が良い。今だって私の方を向いて自分は後ろ向きで滑ってスキー指導してくれている。後ろ向きだよ?花音ちゃんは巨乳で綺麗で運動神経良いって…羨ましい。


「イエーイ!嫁ちゃん~」


「麻里香っ!」


そんなことを考えつつ…ヨタヨタと斜面を下っていると、海斗先輩と旭谷先輩がものすごい速度で私の前に回り込んで来た。


ズジャッッ!


急停止をして雪が飛び散りヨタヨタしていた私にかかった。


「あわわ…わっ」


ちょっとっ!こっちはド素人なんだから少しの振動でもよろめくんだからっ!案の定、風圧やら怖くて腰が引けていた所へ雪がかかり私はバランスを崩し後ろにひっくり返った。


そして遅れて到着したケンシロー(藤河先輩)の急停止により跳ね上がった大量の雪が転んだ私の上に落ちてきた。


ああ…このまま雪に埋もれて死んじゃうんだ…。


「まっ!麻里香大丈夫か?!」


海斗先輩が慌てて助け起こしてくれたけど、雪まみれになった私を見てラオウが


「雪ん子だ!ぎゃははっ!」


と私を見て大爆笑だった。ええ…ええ…全身雪を被って真っ白ですよ。滑れない私をそんなに嘲笑うなんて、旭谷先輩にも呪いの傀儡魔法をけしかけてやりましょうか?毎晩胸の上に乗って寝苦しさを提供して差し上げますよ?


後で雪ん子を検索したが、これまたちびっ子のキャラクターだった。


おいっ!お前ら皆してチビチビチビ…いい加減にしろよぉぉぉ!



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