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メンヘラの待ち伏せ

誤字報告ありがとうございます^^

書き手側がフワッと読んでいて、読者様が一文字一文字読み取って頂いているという体たらく…。痛み入ります!もっと精進致します。




中間試験も無事終わり、明日の試験休み初日に某モールに皆で遊びに行く約束をして、萌ちゃん達と別れて一人、駅に向かっているとソレが駅前に立っていた。


今日は平日なんだけど?あ、ソレの仕事は確か営業だったっけ?ソレはまるで()()()()()()()()()ように私を見て笑った。


「麻里香、久しぶりだな。元気だったか?」


とうとう出たなっ!篠崎 亮暢、元父親のメンヘラ。悲劇のヒロイン野郎だ。


予め篠崎家で取り決めたことを実行することにした。まずは携帯電話の篠崎家グループメンバーに一斉にメッセージを送信。


『亮暢、現る!シュアリリス学園前駅だ!』


一気に4人の既読がつく。恐らく真史お父さん、由佳ママとばあちゃまとじいちゃまだ。翔真はサッカークラブでサッカープレイ中と思われる。


『落ち着いて行動しろ。人の多い所にて待機。出来れば会話を録音しろ』


真史お父さんより


『駅員さんに助けを求めなさい』


ばあちゃまより


『電車は乗れそう?でも後をついて来られても怖いわね』


由佳ママの中では亮暢はストーカー扱いのようである。


『駅前のロータリーで待ってなさい、じいちゃんが車で迎えに行くよ』


じいちゃま助かる!


じいちゃまのメッセージにじいちゃんGJ!とか、頼んだ親父。とかのメッセージが追加されて、篠崎家では『その場で待機』『取り敢えず会話を録音』『じいちゃまの到着をロータリーにて待つ』で…意見がまとまった。


「シュアリリス学園に進学したんだって?すごいな~あそこお金持ち学校だろう?授業料高くない?学校の施設は豪華なの?」


私はロータリーのある所までゆっくりと移動を開始した。亮暢は大胆にも横について歩きながら話しかけて来る。


亮暢ってこんなベラベラ喋るおじさんだったかな?相変わらずお腹は真っ黒だし、ああこれアレだな…先日の斎藤先輩の呪いと一緒で自分で呪いをお腹の中に貯め込んでいるんだな。


「この間、お金持ちの友達と海外の無人島旅行に行って来たんだろう?いいよな~お金があるってさ~俺なんか毎月、好きなお酒も飲めないくらいビンボーなのにさ」


私は静かに会話の録音を始めた。


「お前知っているか?俺がお前達に養育費払ってたの?でもさ、真にぃと由佳、結婚したんだろ?だったらもう慰謝料とかいいよな?だってお前達は金持ちなのに、貧乏人の俺からむしり取ろうとするなんてしないだろう?」


私は息を吸い込むと、ゆっくり吐き出した。よし…。


「慰謝料の話は弁護士の東條先生とお話し下さい」


私がゆっくりとそう答えると、亮暢の魔質が変わった。


「お前…麻里香は昔っから俺に懐かないよな?へへっ…もしかしてさ、お前俺の本当の子じゃないのかもね。真にぃと由佳の間に出来た子だったりしてな!それで二人して俺を()()()()()結婚して…いいご身分だよな~こっちは底辺だっていうのに、自分達は高みに居て俺を見下して…」


これさ…私だから耐えられるっていうか、異世界からの転生者で見た目より中身が老成しているオバサンだから、この程度のショックな感じで耐えられているけれど、もうすぐ誕生日で16才になる普通の女の子ならトラウマ案件だよ?誰が追い出したよ?お前が私達を捨てたんだろ?真実を捻じ曲げてどういうつもりだ?言って良い事と悪い事の区別もつかないの?


「本当にそうだったら、良かったのにね…」


「え?」


「私が本当に真史お父さんの子供だったら良かったのにね。でもね、もしそうだとしても、あなたと私は叔父で姪の関係に変わりはないよ。家族の括りに入っているの。私やママや翔真達…それ以上に、ばあちゃまやじいちゃま、実のお兄さんのマー君を捨てて…いらないって最初に言ったのはあなただよっ?!いらないって言われた私達がどれほどショックだったか、あなた分かっているの?!」


亮暢は顔色を変えるとプルプル震えながらこちらに踏み込んできた。また叩くつもりかっ?!すると横から走り込んで来た影が私の前に立ち塞がった。


「いい大人が子供に手を挙げるのですか?」


か、海斗先輩!まさかストーカーしていたの?この際それはどうでもいいか?いや良くないか…。


「なんだ、お前?」


「麻里香の彼氏です」


海斗先輩は亮暢にものすごい速さで返答を切り返した!


亮暢は暫く呆けていたが、急に笑顔になった。


「そ…そうか!君が金持ちの彼氏か!」


随分と失礼な呼称をつけて呼ぶのね?海斗先輩は金持ちの~なんてつけなくても、変態でストーカーで、匂いフェチで……海斗先輩を表す呼称が道徳的に問題のある呼称ばかりだった。


「麻里香やったな!金持ちの彼氏か~じゃあもう慰謝料はいいよね。ママにもそう言っておいてよ」


本当にコレ嫌味で言っているのじゃないのよね?自然に発言してみえて、ものすごく私にも失礼だし、金づる扱いしている海斗先輩には更に失礼だよ。


目の当たりにするメンヘラの悲劇のヒロイン症候群の話術に唖然としてしまう。


「慰謝料は由佳さんにお渡しすること以外にも、子供達の養育費も含まれているはずですよ。あなたは子供達の将来の保証をしなくてはいけませんよ。養育とはそういうものです」


な…何で知っている?栃澤 海斗!やっぱり筋金入りのストーカーはすごいね。そしてメンヘラに動じずに鋭く切り返す海斗先輩が賢く見える!いや実際Sクラスに在籍されているし賢いのは分かっていたけれど変態だけじゃないんだね…。


「ま、麻里香本人が真にぃの子供だと今言ってただろう?!自分の子供じゃないのになんで養育費を払わなきゃならないんだよ!そこまで俺を苦しめて楽しいかよ?あっ?」


怒りの為に眩暈がする。こんな人が私の父親なの?子供をこれ以上ないほどに傷つけて自分が更に可哀そうだって?


「でしたら…もう二度と麻里香の前に現れたりしないで下さい。あなたと麻里香は他人なのですから」


海斗先輩がはっきりと言い切った。亮暢は海斗先輩の元国王陛下圧に完全に押し負けているようだ。次の反撃の言葉を探しているのか目を泳がせている。


「こ…高校生なのに君は偉そうだね?ああ、お金持ちだから常に上から目線なのかな?」


本当に嫌味な言い方!海斗先輩、気を悪くしちゃったかな…と海斗先輩の顔を覗き込んだら…


「麻里香の元父親は知らないのか?俺は偉そうじゃなくて、事実偉いんだ。知っているか?俺はあなたの会社の取引先の会長の息子だ。あなたの嫌いな権力やお金を行使すれば、あなたなんて一撃で社会から抹殺できる。だが、それは抹殺しがいがある相手だからこそ権力や力を使うのだ。あなたには俺の権力を使う魅力も無い。俺や麻里香からしたら、あなたを苛めたいほどあなたには興味は無い。分かるか?あなたは篠崎家の家族に興味なんて持たれていないんだ。あなたは自意識過剰だ、あなたを苛めるほど皆、暇じゃないし忙しいんだ」


とものすごい言葉の反撃を繰り出してきた。流石元国王陛下…。


これは亮暢は堪えているね…アイツの魔質がさっきまでと全然違う。悲劇のヒロイン症候群を患っている方々は皆…自意識過剰気味で、かまってちゃんで尚且つ、常に自分が注目されていると思いたいらしい。


「興味を持って欲しいのなら構って欲しいのなら、遠くから悪口を言うのじゃなくて…ホラ、直接向き合えばいい。そして良い意味で興味を持ってもらえる人間になればいい」


ホラと海斗先輩が指差した所を見ると、じいちゃま所有の車がロータリーに入って来た。あれ、ばあちゃまと和真と彩香もいる。車の窓を開けて子供二人が車中から叫んでいた。


「ねぇね~!カイちゃん!」


「ね~!」


ばあちゃまがびっくりしたような顔のまま車の後部座席から飛び出してきた。


「亮暢…あんた」


ばあちゃまが私の前に走り込んで来た。亮暢と母親は睨みあっている。ものすごい修羅場?かなコレ。


「亮暢、あんた今ちゃんと生活してるんでしょう?だったら、由佳さんに何をして欲しいの?子供達に会いたいなら、真っ直ぐに会いに来なさい。私達は隠れたり、逃げたりしないよ?アンタが裏側に回りたいなら好きに回りなさい。由佳さんや麻里ちゃん達は付き合わないよ」


ばあちゃまの言う裏側…が何なのかよく分からないけど、つまりは精神的な日の当たらない場所?のようなものの例えかな?


亮暢は体を震わせると頭を抱え込んだ。


「何だよっ何だよっ!皆して俺のこと…!俺はお前達みたいに金持ちじゃないんだよっ!そんなに俺が嫌いかよっ!どこまで俺を苦しめるつもりなんだ!」


ちょっと待って…これ?ばあちゃまの言葉が響いているどころか…逆効果だったのか?海斗先輩もばあちゃまも唖然としている。そこへチャイルドシートを外して彩香が私と海斗先輩の足元に走り込んで来た。


まだ小さい子とはいえ、大人が何か異様な雰囲気を出していることは察したんだろう。海斗先輩の背後に回りながら亮暢を見て


「おじさん、誰?」


と聞いてきた。亮暢は何故だかヘラヘラと笑いながら


「初めまして~君の叔父さんだよ」


と彩香に目を向けた。見られた彩香は海斗先輩から私の背後に逃げ移ると、私のスカートを引っ張った。


「怖い…ねぇね、帰ろ…」


と言いながら彩香は本当に怯えている魔質を放っていた。彩香は魔力の感知能力が高いのかもしれない。亮暢から放たれたどす黒い魔力が空中に煙草の煙のように吐き出された後…ポタポタとまるで雨のように変わって、亮暢の足元に落ちて広がっている。


確かにこれは怖いね。


そして和真を抱っこしながら、じいちゃまがゆっくりとばあちゃまの前に立った。亮暢の笑顔が消えた。


「お前にはお前の家族が待っている。もう帰りなさい。そしてその家族の皆で俺達に会いにくればいい。いつでも待っている」


じいちゃまがそう言うと亮暢は、何も言わずただ一歩後ろに下がると踵を返して歩いて行った。


皆、固まっていた。


そして沈黙を破ったのは、ばあちゃまだった。


「でさ、このカッコいい男の子~この間の旅行時に一緒に写真に写ってた子かい?実物は更に何倍も格好いいね!」


海斗先輩はばちゃまに褒められてふんぞり返っていた…。その後ばあちゃまとじいちゃまに海斗先輩はしつこいぐらいに


「麻里香さんの彼氏です。宜しくお願いします」


を連発してから、おべんつさぁんで先に帰って行かれた。


しかし時に変態(元旦那)も役に立つことがあるのだね。あそこで海斗先輩が助けに入ってくれなかったら…いや、待てよ?亮暢に叩かれたフリでもして駅前で騒いでやっても良かったんじゃないか?


いや、ダメだ。またその騒いだことを逆手にとって、亮暢がメンヘラを発動して『俺可哀そうアピ』を始めてしまっては元も子もない。全く扱いづらいメンヘラだ。おっと、録音したままだった。私はスマホの録音を停止した。


私達はじいちゃまの車で自宅まで帰った。


ばあちゃまはずっと怒っていた。いつもは(かしま)しいばあちゃまが無言なのが逆に怖い。逆にじいちゃまは運転席から私にさかんに声をかけてくれた。


「亮暢が来た時に栃澤君が助けてくれたのか?」


「う、うん。間に入ってくれた」


「しかし亮暢にも困ったもんだな~。いくら実の娘とはいえ、待ち伏せなんてストーカーじゃないか」


ギクゥ…そう言えば先ほどは10代と40代のストーカー同士で鉢合わせしておりましたね。


「亮暢…顔色悪かったね…」


ばあちゃまがポツンと言った。その言葉で車内は静まり返った。子供達も大人が神妙にしているので、妙に大人しい。空気を読む篠崎家の弟妹達。


そして、どんよりした雰囲気のまま私達は家に帰った。由佳ママは悠真と一緒に青ざめた顔で、私達の帰りを待っていた。


「麻里香っ…大丈夫だった?!」


由佳ママは私の肩とか頭を何度も撫でている。心配かけちゃったな…。でもアッチが勝手に会いに来たんだし…防ぎようがないと申しますか…。


気分を変えるためにもばあちゃま達も今晩の夕食に誘い、私とママは天麩羅作ることにしてまずは下準備をすることにした。


由佳ママは台所でかき揚げのタネを作りながら、小声で聞いてきた。


「亮暢さんどうだった?」


「はっきり言っちゃうと気持ち悪さに拍車がかかっていたよ」


「そ…そう」


「詳しくはお父さんが帰って来てからね」


と由佳ママに返しておいて、私は天麩羅の下ごしらえを手伝った。


さて、翔真が帰って来て、真史お父さんも戻り…皆で夕食を食べた後に、篠崎家家族会議が設けられた。


「では麻里香、例の襲撃犯の録音データを聞いてみよう」


「はいっ!」


私は真史お父さんの言葉に元気良く返事をしたものの…再生を躊躇ってしまった。よく考えたら…よく考えなくても亮暢のやつ結構酷い事言っていた気がする…。


「麻里ちゃん、早く」


ばあちゃまにも急かされたので、致し方なく携帯電話を食卓の真ん中に置いてスピーカー機能にして再生を始めた。


『お前知っているか?俺がお前達に養育費払ってたの?でもさ、真にぃと由佳、結婚したんだろ?だったらもう慰謝料とかいいよな?だってお前達は金持ちなのに、貧乏人の俺からむしり取ろうとするなんてしないだろう?』


『慰謝料の話は弁護士の東條先生とお話し下さい』


『お前…麻里香は昔っから俺に懐かないよな?へへっ…もしかしてさ、お前俺の本当の子じゃないのかもね。真にぃと由佳の間に出来た子だったりしてな!それで二人して俺を追い出して結婚して…いいご身分だよな~こっちは底辺だっていうのに、自分達は高みに居て俺を見下して…』


真史お父さんがカッと魔質を上げてきた。由佳ママが小さく悲鳴をあげた。ばあちゃまも食後に食べていたお煎餅を手で割り潰していた。


私は一旦携帯電話の再生を止めた。


「この後も結構酷い事を言っているんだけど、まだ聞く?」


真史お父さんと由佳ママにそう聞くと2人は泣きそうな顔をしていた。


「私は聞きたいわ」


ばあちゃまが固い声でそう答えた。真史お父さんはばあちゃまの顔を見て一度頷いてから私に再生を促した。私は再び再生を始めた。


『…のにね…』


『え?』


『私が本当に真史お父さんの子供だったら良かったのにね。でもね、もしそうだとしても、あなたと私は叔父で姪の関係に変わりはないよ。家族の括りに入っているの。私やママや翔真達…それ以上に、ばあちゃまやじいちゃま、実のお兄さんのマー君を捨てて…いらないって最初に言ったのはあなただよっ?!いらないって言われた私達がどれほどショックだったか、あなた分かっているの?!』


『いい大人が子供に手を挙げるのですか?』


そうそう海斗先輩!ここで海斗先輩が登場してきたんだった!


「きゃっ栃澤君?!」


由佳ママが女の子みたいな歓声を上げた。


『なんだ、お前?』


『麻里香の彼氏です』


ぎゃああ…!思わず再生を止めた。翔真や由佳ママがニヤニヤしながら私を見ている。


「麻里香~彼氏だって!」


「もうっ!いいでしょっ…今回のコレには関係ないじゃない!」


そう言って由佳ママに睨みを利かせていると、翔真のアホが勝手に再生を始めてしまった!


『そ…そうか!君が金持ちの彼氏か!麻里香やったな!金持ちの彼氏か~じゃあもう慰謝料はいいよね。ママにもそう言っておいてよ』


由佳ママとばあちゃまが食卓の真ん中置いてある携帯電話に向けて一斉に怒鳴った。


「卑怯よ!」


「踏み倒しかい?!」


『慰謝料は由佳さんにお渡しすること以外にも、子供達の養育費も含まれているはずですよ。あなたは子供達の将来の保証をしなくてはいけませんよ。養育とはそういうものです』


「よく言った!栃澤君!」


真史お父さんが拍手している。


『ま、麻里香本人が真にぃの子供だと今言ってただろう?!自分の子供じゃないのになんで養育費を払わなきゃならないんだよ!そこまで俺を苦しめて楽しいかよ?あっ?』


「無茶苦茶な言い分だな…」


じいちゃまがボソッと呟いた。


『でしたら…もう二度と麻里香の前に現れたりしないで下さい。あなたと麻里香は他人なのですから』


『こ…高校生なのに君は偉そうだね?ああ、お金持ちだから常に上から目線なのかな?』


「嫌味な言い方ね!栃澤君に失礼よね」


由佳ママも私と同じことを思っているみたいだ。ね~?失礼だよね!


『麻里香の元父親は知らないのか?俺は偉そうじゃなくて、事実偉いんだ。知っているか?俺はあなたの会社の取引先の会長の息子だ。あなたの嫌いな権力やお金を行使すれば、あなたなんて一撃で社会から抹殺できる。だが、それは抹殺しがいがある相手だからこそ権力や力を使うのだ。あなたには俺の権力を使う魅力も無い。俺や麻里香からしたら、あなたを苛めたいほどあなたには興味は無い。分かるか?あなたは篠崎家の家族に興味なんて持たれていないんだ。あなたは自意識過剰だ、あなたを苛めるほど皆、暇じゃないし忙しいんだ』


篠崎家の大人達から拍手が起こる!まさに国王陛下の真骨頂だものね!


『興味を持って欲しいのなら構って欲しいのなら、遠くから悪口を言うのじゃなくて…ホラ、直接向き合えばいい。そして良い意味で興味を持ってもらえる人間になればいい』


少し車の音とかした後にばあちゃまの声が聞こえてきた。


『亮暢…あんた』


「そうそう!ここで私が飛び込んできたのよね」


とばあちゃまが解説を入れてきた。


『亮暢、あんた今ちゃんと生活してるんでしょう?だったら、由佳さんに何をして欲しいの?子供達に会いたいなら、真っ直ぐに会いに来なさい。私達は隠れたり、逃げたりしないよ?アンタが裏側に回りたいなら好きに回りなさい。由佳さんや麻里ちゃん達は付き合わないよ』


『何だよっ何だよっ!皆して俺のこと…!俺はお前達みたいに金持ちじゃないんだよっ!そんなに俺が嫌いかよっ!どこまで俺を苦しめるつもりなんだ!』


『おじさん、誰?』


彩香の声が聞こえた。


『初めまして~君の叔父さんだよ』


『い…ねぇね、…』


彩香の怯えた声は小さすぎて声を拾えてなかったようだ。じいちゃまのはっきりとした声が聞こえた。


『お前にはお前の家族が待っている。もう帰りなさい。そしてその家族の皆で俺達に会いにくればいい。いつでも待っている』


私はここで再生を停止した。聞き終わった篠崎家の皆は物凄く落ち込んでいた。魔質がマッチの炎みたいだ。


「苦しめるって…あいつが由佳達を苦しめてきたくせに…」


真史お父さんが憤怒の顔をしながら私の携帯電話を睨みつけていた。


「ひどいわ…自分の子供に向かって…実の娘じゃないとか」


「いや、ママ…それは私が亮暢に最初に言っちゃったから、え~と…売り言葉に買い言葉だっけ?そういう感じで…」


「それでもよっ…親ならば絶対に口にしちゃダメなのよ!!自分の子供じゃないなんて口が裂けても言っちゃダメなの!」


ばあちゃまが由佳ママの肩を抱いて摩っている。


「あいつは自分自身がまだ子供なんだよ」


じいちゃまの言葉が心にグサッと刺さってくる。


ばあちゃま達が帰り皆が寝静まった後、静かに海斗先輩が我が家に転移してきた。二人でリビング移動し、部屋に消音魔法をかけて話をした。


「実は俺も子供の時から気が付いていた。亮暢は腹の中の魔質がおかしいな?俺はティナほど魔質の中まで見通せる訳じゃないので確証はなかったが…あれは魔核が出来かけていると見ていいのか?」


私は頷いた。


「子供の時からおかしいな…とは思っていたのですがあちらの異世界でもいましたよね?魔核が出来て、魔人に変異してしまう病気。まさかこの世界でもいるなんて」


「いや…案外腹に魔核を抱えている人間は多いのかもしれない。魔人にでもなったかのような、猟奇的な犯罪を犯すものがいるだろう?異世界でもこちらでも人は魔にとり憑かれやすいのかもしれない」


私はさっき見た亮暢の放つ黒い魔力を思いだして心底ゾッとした。


亮暢の治療をしたほうがいいのだろうか?


「出来れば治療をしてみたいのですが…私は治療術師ではありませんので、魔人になりそうな人を治す術などは知らないのです」


海斗先輩は私をちらりと見て、少し溜め息をついた。


「そうだよな、俺も治療術の才はなかった。あれは魔力があっても才能がなければ一切使えないからな…さすがにティナも無理か…」


海斗先輩と私は解決策を見出せないまま…時間だけが過ぎていったのだった。


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