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痴漢注意!


生徒会長に食って掛かったが、なんだかんだとかわされて…火の玉騒動の次の日の放課後…


「半径2メートルは近づかないで下さいね」


「嫁ぇ…」


「人のお風呂写真まで隠し撮り?だかなんだか知りませんが、所持しているなんて破廉恥以外の何物でもないですよ!」


私は放課後の見回りを不本意ながら、本当に不本意ながら栃澤 海斗先輩(元旦那)と一緒に回ることになった。


「何だよ、嫁の裸体なんて昔はよく見て…」


「それは昔ですっ!あの頃はナイスなバディのマリアティナ姐さんのボンキュッボンな体じゃないですかっ!あれなら見られても恥ずかしいですけど、まあいいか?と思わせられる説得力のある体でしたけど、今は違います、絶対ダメです!」


とか大声で言い合えるのも、周りに誰もいないからだ。無人…とまではいかないが、私達の声の届く範囲に人はいない。


「でだ…。火の玉の出た物理の移動教室、その部屋に魔力の残滓が残っていたのか?」


「はい、間違いなく魔力の残滓でした」


急に真剣な話題に変わるのも相変わらずだ。この切り替えの早さがナキート殿下っぽい。


「火魔法か…」


「しかし、火の玉が発見されていても直接的な火災に至っていないのは何故でしょうか?」


「燃え移らない火魔法か…そんなものあるのか?」


海斗先輩でもご存じないことがあるのね。…いや、ご存じないことはあるねっ!世の常識と言うものをご存じないねっ!


チラリと横を歩く芸能人っぽい元旦那を見上げる。この世界でも、モテているんだよね…。ハッキリと聞いたことはないけれど、ご実家だって超お金持ちだ。当然海斗先輩にもご両親や親族、存在するはずだ。


私みたいな庶民に熱心にストーカーしていることを保護者の方はご存じなのだろうか?


あの執事のロマンスなグレーに今度聞いてみようか。もしかすると、今のご両親からは私の事は猛反対されている可能性もある。というか、私が親だったら反対する。


普通の庶民で平々凡々な容姿の女なんて…お前に釣り合うか!…とか言っちゃいそうだ。


「おい、嫁どうした?気分でも悪いのか?」


海斗先輩から声をかけられてハッとして顔を上げた。心配そうな瞳で私を見詰める海斗先輩に笑いかけた。


「大丈夫ですよ、何も問題ありません」


海斗先輩はヒュッと息を飲むと顔を歪ませた。


「前もそう言った!それで安心して、油断して…少し席を外したら、もう亡くなってた。死に目に会えなかった!何度も同じ思いをさせるつもりか…。嫁のくせにっ俺をまた一人にさせるつもりか…」


海斗先輩は少し涙ぐんでいた。あのナキート殿下が泣いている?衝撃だ。


先輩は目を擦ると、殊更に大声ではっきりと言った。


「お前の大丈夫は信用ならん!俺はお前が大丈夫だと言っても…今度は絶対に諦めないし、お前が先に死に行くのは認めない!」


「それは…そのすみませんでした。ですが私だって好きで先立った訳ではありませんので、怒られてもどうしようもなく…それに今もそうですが、当時も出産で亡くなる方はいらっしゃるわけで…。」


海斗先輩は目を真っ赤にして更に言い募った。


「分かっているっ!何もティナだけがなったことじゃない…出産で母子共に亡くなる場合もある…ザイードを無事に産んでくれたことは褒めてあげるべきだ…とハルバッツにも随分言われた」


ハルバッツ様とは、ナキート王太子殿下の子供の時からの大親友で同じく軍部で共に戦い、副官でもあられた方だ。


「そうですよ。ハルバッツ様の仰る通りで、不慮の事故で亡くなる方も病で亡くなる方も沢山いらっしゃいます。私だって寿命であったと思います」


ナキート殿下…海斗先輩はゆっくりと私を抱き締めた。こんなにもヤンデレ、ていうのかな?になっちゃったのもある意味仕方ないことなのかな~と私…若干絆されかけているね。


そうこうしていると、海斗先輩が顔を近づけて来た。後、もう少しでお互いの唇が触れそうな所で…魔力の気配を感じた。中庭だ!


私は海斗先輩ごと、中庭に転移した。


「ちょっ…嫁ぇいいとこなのに…」


「いい所も悪い所もございません!」


私は急いで中庭の魔力の気配の跡を追った。文句を言いながら海斗先輩も付いて来てくれる。


「ほらっ先輩!シャキッとして下さいよ。ダラダラ走らない!」


「いい所だったのにぃ~」


私とグダグダな海斗先輩は魔力の気配を感じる植え込みの後ろに走り込んだ。


火の玉…。確かに火の玉だ。フワフワと漂いながら校舎と植え込みの間をゆっくりと飛んで移動している。


「火の玉…ですね。しかも紫色です」


「もう一つは緑色だな。これは火魔法ではないな」


海斗先輩は大胆にも火の玉?の近くに移動した。


「これは幻術魔法か…!」


「幻術…と言えば先日、私の顔にマリアティナの顔を乗せたアレですか…?」


すると私達の目の前で火の玉はスゥ…ッと消えて行った。


「消えましたね」


「魔力の残滓を追うぞ」


海斗先輩は探査と追尾魔法を使った。消えゆく力を追い…術者の所へ近づく。


「見つけた…」


思わず息を詰めて海斗先輩を見ていたので、その言葉でドッと息を吐き出した。


「どなたが術を?」


「3-Cの副会長の峰岸さんだ」


「!」


生徒会長の隣に座っていた大人しそうな先輩だ…。どうして?


「彼も直感型の術師だろう。無意識のうちに術を使うということは何か心に引っ掛かりがあるのかもしれないな」


「どうしましょうか?直接…聞いても無意識ですものね。お困りの事はありませんか?でしょうか…」


「困り事か…。峰岸さんの身辺調査をしてみるか…今日はこれまでにしよう」


「は、はい」


海斗先輩に促されて、中庭を後にする。身辺調査で何か分かってくるのだろうか…。


その日から2日後


『パン屋のバイトの後で話がある』


と海斗先輩から簡潔なメッセージが届いた。


何か分かったのだろうか。パン屋にバイトに向かうと、今日はバイト先のパン屋の娘さん、同級生の里美ちゃんが家にいた。


「里美ちゃん、珍しいね~部活は?」


「明日から体育祭の準備があってね~部活は一旦休みなの」


「あ、そうか里美ちゃんの学校は5月に体育祭か~うちは9月だよ」


学校によってバラバラだね~とか話しながら、里美ちゃんもお店の手伝いをしている。


「そういえばさ、麻里香は駅から商店街に来るまでに看板見なかった?」


「看板?」


里美ちゃんが焼きあがった山食パンを商品棚に並べながら、窓越しに外をチラチラ見ている。


「最近、電柱の影に潜んで女の子をジッと見ている変質者が出てるんだって」


ブッと吹き出した。マスクをしていて良かった。それ、もしかして?


「で、電柱の影?」


「そう…大柄な男の人で声をかけようとしたら、逃げたらしいんだって…。しかも、何度も!怖いよね~この辺も小学校近いしさ。子供が攫われでもしたらと思うとさ~。」


心の中でものすごい土下座を繰り返していた。


「うちのバカ(元旦那)がすみません!すみません!すみませーーーん!」


さて、痴漢とか変質者に間違われやがった元旦那は今日は電柱の影でなく、和菓子屋の前でみたらし団子を食べていた。


「ちょっと!気を付けて下さいよ!」


『痴漢注意!』と書かれた看板を指差しながら私は大きな男を睨み上げた。


「電柱の影に潜んでばかりいるから、痴漢と間違われているじゃないですか!」


「ん~?俺、商店街の近くでそんな変な動きしてるかな~?」


「商店街の近くじゃなくても電柱の影に潜んでいれば立派な変質者です!」


先輩と一緒に急いで商店街から離れる。


「この人痴漢です!」


と指差されるんじゃないかとビクビクしながら…。生きた心地がしない。


いつもは転移魔法ですぐ家まで飛ぶけれど、今日は商店街から少し歩いたところにある公園で話をすることにした。


「峰岸さんの身辺調査の結果が出た。彼はご両親が離婚され、母親と一緒に香川県に引っ越し、転校することになったそうだ。3年の大事な時期に…と理事長になんとか残れないかと、かけあってみた。特例で特待生用の寮に住めるようになった。明日、生徒会長と祥吾達とせめて卒業まではシュアリリス学園に通えるようにと本人に話して相談してみるつもりだ。あくまでも本人の意向も確かめながら進めて結果を待つ…これが原因で幻術魔法を出していたのかは分からないが、治まればいいんだけどな」


私は海斗先輩の話に我が事のように気持ちが沈んだ。


「子供って親の離婚に振り回されるんですよね…」


海斗先輩が私の頭をポンポンと撫でてくれた。本当に親って…子供の気持ちを考えないんだからっ!


翌日


生徒会室に峰岸先輩を呼び出して、生徒会長と海斗先輩が話を切り出すと峰岸先輩は泣き出してしまったそうだ。大人しい峰岸先輩は誰にも相談出来ず、勿論親に面と向かって自分の意見も主張出来ずに、思い悩んでいたそうだ。


そして生徒会長に付き添われて、ご両親に話をした峰岸副会長はあっさりと寮住まいが決定していた。


両親共に、何故もっと早く言わないんだっ…と逆に怒られたとか。峰岸先輩のご両親はどこかのメンヘラとは違ったみたいで峰岸先輩を非常に心配しておられたそうだ。


「東京の大学に行きたいのなら、父親と暮らさないか?という話にもなっているらしい。どうやら円満離婚のようで、両親とも不仲?というのではないようだ。離婚にも色々あるな~」


ザイードのホログラフィ?を見ながらニヤニヤしていた私は、いきなり部屋に転移してきて、そう話し出した元旦那を睨んだ。


「何度も言いますが、ここは女性の部屋ですよ?いきなり入って来るって失礼ですよ」


「続き部屋の同じ部屋で生活していたじゃないか~今更だな!」


「今は違います!」


海斗先輩は勉強机に座っている私に近づいて来ると、まるで覆いかぶさるように顔を近づけてきた。


「お前…そんなこと言って俺のこと好きだろう?」


なんだこの自意識過剰発言は?何度でも言おう、何度でも言ってやろう。


「確かにマリアティナとしてナキート殿下はお慕いしていました。ですが殿下から心無い言葉を投げつけられて、おまけにサザービンス伯爵令嬢に、ナキート殿下は昨夜は激しかったわ~とか、先日は宝石を贈られましたのよ~とか、マリアティナは澄ましていて可愛げが無くてつまらない女だとおっしゃってましたよ~とか…会う度に聞かされて、とてもとても深く傷ついたのも事実です。ですからあの時は泣いて泣いて苦しかったので、今はその思いから解放されていますので、今の栃澤 海斗先輩には無の極致で挑んでおりま…」


「ちょっと待て!何だその、昨夜は激しかったわ~って…ティナはそんな直接的な物言いもされていたのか?」


「そうですよ、もっと過激な事も言われていましたよ。だから…もう…」


「本当にすまん。そんなことまで言われていたなんて…どうして気がつかなかったのか…」


海斗先輩はそう言って私を抱き締めてきた。もう嫌だな…この心地良い魔力、好きなのよね。昔からこうやって殿下の魔力を感じちゃうと気持ちよくてほわほわしちゃうのよね。


花音ちゃんにも漫才が~とか茶化されちゃうけど、前世はしたことさえなかった口喧嘩さえも、会話のテンポが合うのかお互いの呼吸が合っているのか、とてもリズムが良い。


だから漫才みたいに聞こえるんだろうけど。イヤ、だからと言ってストーカーや隠し撮りは看過できない案件だけど…。


海斗先輩の唇が近づいてきた。ああ、前世も好きだった人だけど、今世もまた……。


「麻里香~!和真とお風呂入ってあげて~」


「ねぇね~!」


唇が触れる直前、由佳ママと和真の声で一気に現実に戻る。目を開けたら海斗先輩とすごい至近距離で見詰め合っていたが、お互いに吹き出して笑ってしまった。


そして笑いあった後に素早く海斗先輩はキスをしてきた。軽く触れる…可愛いキス。


「和真と風呂に入ってやれ」


「…はい」


もう一度海斗先輩はチュッ…と音をたててキスをしてから、笑顔のまま手を振ると転移していった。


顔が熱い。


「すぐ行くよ~」


と階下にいる和真にかけた自分の声が震えていた。今頃恥ずかしくなってきた。パジャマを持って、階段を降りると和真が


「イルイル~!」


と、先日水族館で買ってきたシロイルカの水に浮かべて遊ぶおもちゃを持って私を待ち構えていた。


「それお気に入りだね~」


「あぁ?!それ彩香のっ!和真はメッ!」


と和真がシロイルカのおもちゃを持っていると彩香が走り込んで来た。


「順番だよ~和真の後は彩香もお風呂入っておいで」


「ねぇねと入るの?」


「そうだよ」


彩香は私がそう言うともうご機嫌になったみたいだ。


「麻里香、2人もお風呂に入れて大丈夫?」


由佳ママが彩香と和真のパジャマを持って来てくれた。


「何言ってるの~昔から翔真と悠真をお風呂に入れまくった私だよ~言わばお風呂介助のプロだよ!」


由佳ママが苦笑いを浮かべている。


「いつもごめんね、麻里香」


「じゃあそのプロなら、悠真も頼んだよ~」


と、居間で翔真が悠真と某カートに乗って遊ぶゲームをしながら言ってきた。


ふふふ、一人も二人も一緒さ。


「3人纏めてかかってきやがれ!」


…と意気込んで請け負ったものの、流石に悠真を湯舟に入れる頃にはヘロヘロだった。


「マリカ、お水飲んできたら?」


若干6才に気を使われた…悠真ってすごいクールなんだよね。しかもマリカと呼び捨て、まあいいけど。


なんとかヘロヘロしながらお風呂を出て、彩香と一緒に部屋に戻った。


因みに私と彩香は女の子同士で相部屋である。彩香と女子トークをしながら携帯電話に目をやると、メッセージが来ていた。送信者は『シェフェレーゼ』パン屋の里美ちゃんだった。


『麻里香この間バイトに来てくれた帰り、大丈夫だった?変質者に追いかけられたりしてない?』


ギクッとなる。うちの変質者がみたらし団子食べながら待ち伏せしていましたけど…。


『麻里香が来た日にね、変質者が出たらしいのよ。塾帰りの小学5年生が追いかけられたって~』


な、何ぃ?!痴漢は海斗先輩じゃないのか~いやぁ良かった良かった…じゃないよ?!小学生を追いかけた?


『麻里香も小さいから気を付けてね』


「どんな心配だよ!小さくて悪かったね!もう翔真に身長抜かされてるよ!」


布団の中で彩香が動いたので、慌てて口元を押さえた。興奮しすぎた。


しかし世の中に変な人って多いよね。もしかしたら異世界でもいたのかもしれないが、侯爵家のご令嬢出身の私にはうかがい知れない世界だわ。


『私も気を付ける。里美ちゃんも学校の帰り気を付けてね』


メッセージを里美ちゃんに送って、布団にゴロンと寝転がる。


そしてそのままその日は眠りについた。


翌日、そろそろ中間試験の勉強に本腰をいれようかと、パン屋のバイトを暫くお休みさせて下さい~と、夜、電話を入れると、誰も出ない。あれ?思わず時計を見るが夜の8時過ぎだ。


里美ちゃんにも連絡を入れたがやっぱり出ない。


更に次の日の放課後、商店街のシェフェレーゼのパン屋の前まで行くとシャッターが降りている。あれ?貼り紙が貼っているので近づいて見てみると


『しばらくお店を休みます』


と殴り書きみたいな文字で書かれている。どうしたのだろう?すると


「あら?パン屋のバイトの子じゃない?」


と毎日うちのパン屋に通っているという、佐々木さんが自転車に乗って通りかかった。


「聞いたわよ~びっくりしたね!里美ちゃん大丈夫なの?」


佐々木のおばさまの言葉に、息が止まった。里美ちゃんに何かあったんだ!


「あの私、知らなくて…」


「ええ?そうよね、確か昔はこの辺りに住んでたけど引っ越したんだったよね。知らなくても仕方ないね。里美ちゃん昨日の学校帰りに暴漢に襲われてね、頭殴られて怪我しちゃったのよ」


昨日の学校の帰り!


「ち、痴漢…ですか?」


「ああ、違うと思うわよ?そんないやらしいことはされなかったみたい。良かった…って言っちゃアレだけど、頭を殴られただけだって」


そりゃぶん殴られるのも絶対許せないけど、痴漢もだと更にキツイ…。私は佐々木さんにお礼を言ってから、お店のシャッターの新聞受けに、店長(里美ママ)宛てにメモを書いて入れておくと、里美ちゃんにメッセージを送った。


『佐々木さんから聞いたよ。落ち着いたら連絡下さい』


と送信した。


今日は帰ろうか…と、商店街の入り口に差し掛かると、すらりとした体躯の海斗先輩が立っていた。


「どうした?魔力の流れが不安定だぞ?」


無性に海斗先輩に縋り付きたくなった。いいのかな?王太子殿下に抱きついたりして。でも我慢しきれなくなって私は駆けだすと、海斗先輩に抱きついた。海斗先輩は難無く私を抱き込んでくれた。


「どうした?」


私の腰に手をまわしたまま、ゆっくりと顔を覗き込んでくれる海斗先輩に、私は里美ちゃんの事件を話して聞かせた。


「犯人は捕まったのか?」


「そこまでは…まだ」


海斗先輩の魔力が体内で上がってきているのが分かる。


その時私の携帯電話に里美ちゃんからメッセージが届いた。


『心配かけてごめんね~怪我大したことないんだ。今、親達と家に戻るとこ~』


因みにパン職人は里美ちゃんのお母さんで、お父さんはお店の経営のほうを手伝っている。実はここ以外にも二店舗お店を持っていて地元ではそこそこ有名なパン屋なのだ。


「せ、先輩…」


「早く返事を返してやれ」


私は里美ちゃんに今、お店まで来ていると送信するとすぐに電話がかかってきた。


『麻里香~?ごめんね心配かけちゃって!結構元気なんだよ。頭の怪我って言っても転んだだけなんだよ~。あ…!』


と、声がしてお店のロゴの入ったワゴンが道路から商店街の裏路地に入って来て、ワゴン車の中から手を振っている里美ちゃんが見えた。


頭の包帯が痛々しい…でも笑顔だ! 良かったよぉぉ~私はワゴン車に向かって走った。


「里美ちゃん!」


「麻里香ごめんね~心配かけて」


「麻里香ちゃんごめんね~」


と車を降りて来た里美ちゃんとママ店長は、私の後ろにいる見た目イケメンな海斗先輩に気がついた。


里美ちゃんがガバッと体を寄せてきた。


「ちょ…ちょっと麻里香ぁ!後ろのカッコいい人は誰かなぁ?!」


「麻里香ちゃん、もしかして!か、彼氏?!」


里美ちゃん一応怪我人だよね?ママ店長も思ったより元気そうでそれは何よりだけど…。


「初めまして、栃澤 海斗です」


キラキラと効果音がしそうな笑顔で海斗先輩は、里美ちゃん達に笑顔を振りまいた。ま、眩しいっ!


「まあ、それはともかく…里美ちゃん襲われたの?犯人捕まった?」


と、ニヤニヤしている里美ちゃんに慌てて聞くと里美ちゃんは小首を傾げていた。


「ん~警察の人にも言ったんだけどさ、襲われたって言うより後ろから突風が吹いて転んだんだよ。でもね、防犯カメラの画像見せてもらったら確かに後ろに黒い影?男の人かな?が映っているんだよね。不思議…」


海斗先輩と目が合う。もしかしてまた魔力絡み?




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