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38 発表しました

大きな扉の前に連れてこられると、カタリーナさんは私達に頭を下げた。

「それでは、私はここまでですので。」

「ご苦労様」

ロナン様が声をかけるとカタリーナさんは背中を向けた。

が、数秒後何かを思い出したようにロナン様に何かを耳打ちすると私に近づいてきた。どうしたんだろう?


「由奈様、こちらをお被りください。」

カタリーナさんが私に差し出したのは顔を隠すようなベールだった。

「·····どうしてこれを?」

「この国で黒目黒髪が現れたのは何百年ぶりのことだからね。入ってそうそうその姿だと収集がつかなくなる恐れがある。」

私はロナン様の言わんとしていることがわかった為、静かに頷く。

「それでは、お付けいたしますね」

カタリーナさんは手に持つベールを私の頭に取りつける。

スっ、とレース状のベールが下ろされて視界が僅かに見づらくなった。

私がつけ終わるのを確認するとロナン様が話し始めた。


「さて、この扉の向こうには城に勤めているものはほとんど集合している。これから、僕達はこの国を根本的に変えるよ」

まるで自分にも言い聞かせるようにロナン様がそう説明すると、シナン様が頷いた。

「この国の過ちを認め、その責任を取ると共にこの国を再生させる。それが俺達の目標だ」

強い眼差しで未来を見すえるシナン様に私は心から安心した。

「いこう」


ロナン様の合図とともに大きな扉が音を立てて開く。


その向こうには様々な表情を浮かべた家臣達がいた。


未だに戸惑ったような表情の者、何かを覚悟したような表情の者、青ざめている者、期待に胸をふくらませてる者。

本当に様々だ。


ロナン様とシナン様はそんな人々を隅まで見渡す。

「この国は僕達によって革命が起きた。」

先に話し始めたのは兄であるロナン様だった。


「ここにいる皆、様々な思いを抱えていると思う。だが、僕達が願うことはただ一つ。それはこの国をより良いものにしたいということだ。パイネマの差別がなく、民が心まで豊かなそんな国を。」

パイネマの差別という言葉に全体がどよめく。

きっと、今まで誰も触れてこなかった問題なのだろう。

「そもそもパイネマの差別は過去の王族の過ちによって始まったものだ。それならばそれを終わらせるのも王族である僕達であるべきだと、僕は考える。」

「し、しかし!パイネマは国へ危害を与える者では·····」

「そんなもの、思い込みに過ぎないよ」

一人の家臣があげた声にロナン様は静かに返答した。

「僕達は間違えたんだ。人としての在り方を。それを正せるのは今しかない。」

それでもただ止まらないどよめきにシナン様が声を上げた。

「それでも疑うというのならば、城下へ行って自分の目で見てくればいい。そうすれば分かるだろう。パイネマだって俺達と何も変わらない一人の人間だということが。いわれのない差別に怯えるただの被害者だということが。」


どよめきが静かにひいていく。


「俺もかつては、盲目的にパイネマを蔑み、差別していた。だが、パイネマが差別かれているのは全て王族のエゴにすぎなかった。俺達は、この国は目を覚まさなければいけない。」

シナン様がその場を見渡すと、数人がその言葉に気まずそうに目を逸らし、顔を俯かせた。

「そしてこの度、革命によってこの国は新体制を迎えることになった。」

ロナン様が声を張り上げる。


「新国王として、僕がこの国を背負う。そして、僕の右腕となってくれるのが、シナンだ。」

どよめく会場から「ついにおふたりが」というような声がいくつか上がった。

「俺は過去の自分の過ちを忘れることなく、この国の為に命を賭そうとおもう。」

シナン様の力強い言葉に集まった人々は強い意志を感じたのだろう。少しずつ、場が活気づく。


それと相反するように顔を青くしていくのが元の幹部達だ。

きっと、これまであの王をいいように扱い、私利私欲を貪ってきた過去を思い出しているのだろう。今更自分の罪に気づいたところで、もう手遅れだ。


「宰相として、グレンを。専属魔術師は引き続きラヴィルが行うと共に、由奈にサポートをしてもらう。」

ロナン様が続々と新しい主要幹部を発表していく中、私の名前が出ると場がまたざわめき出した。


「ユナ·····?」

「ユナって誰だ?」

「しかもあのラヴィル様と一緒だぞ?」



そんなざわめきの中、私はロナン様にぐいっ、と腕を引かれた。

そして、悪ガキのような顔をしたロナン様はゆっくりと私のベールをめくった。


隠れていた色彩と顔が皆の前に曝された。


「く、黒目黒髪?!」

「パイネマだ!!」

「だ、誰だ?!」


皆が困惑する中、私がちらりとロナン様を見るとこくりと小さく頷かれたので私はゆっくりと頭を下げてから、口を開いた。

「皆様、お初にお目にかかります。私は、聖女候補として召喚された由奈と申します。」


私の挨拶に「あの人が」という声がいくつか上がる。

「見ての通り、私は黒目黒髪のパイネマです。ですが、私は生涯皆さんに危害は加えないと神に誓うことが出来ます。

ですから、皆さんにもこの国の輝かしい未来の為にパイネマをパイネマとしてだけではなく、その人の人柄を見て欲しいのです。·····どうか、お願い致します。」

もう一度深く頭を下げる。

しばらくそうしていると、隣に立ったアリスちゃんが「私からもお願いします」と頭を下げたのがわかった。


既に聖女はみんなが国のシンボルとして認知している。

そんなアリスちゃんが黒目黒髪のパイネマである私と共に頭を下げたことが皆には衝撃的だったようだ。

どよめきがさらに大きくなってゆく。

しばらくそうしていたが、そろそろ緊張と不安で私の何かがリバースしそうになっていると、パラパラと拍手が聞こえ始めた。

その拍手は徐々に大きくなり、そして会場全体を包み込んだ。


頭をあげれば、そこには笑顔の人々が力一杯手を叩いていた。

全員とはいかない。それでもその光景は私にとってとても、とても嬉しかった。

私はアリスちゃんと顔を見合わせて笑った。



それからしばらく、また新幹部の発表が続き、もうすぐ終わるという頃、まさかの人物の名前が呼ばれた。

「最後に、ジョズ・スラフィンダンに王城専属騎士を任ずる。」


·····え?


私がバッとロナン様を見ると彼は最近では見慣れつつある、いたずらの成功した小学生のような表情を浮かべ、笑った。


「はい」という凛とした声と共に1歩前に出てきたのは紛れもなく、あの心優しいジョズさんだ。


パイネマの差別が嫌だからという理由で門番を続けていたジョズさんは正攻法で騎士へと戻ってきた。


それがなんだか嬉しいやら、不思議な気持ちがするやらでどんな顔をしたらいいのかわからないでいると、ジョズさんと目が合った。

ニッといつも通りに笑ったジョズさんにつられて、私も思いっきり笑った。





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