37 何も知らないです
「ラ、ラ、ラ、ラララララヴィルさん、ちょっと離してくださいますことっ?」
うお、声が裏返った!
決死の覚悟で伝えた私の言葉にラヴィルさんはキョトンとした顔をする。
「嫌?」
「いやっ、じゃ、ない、です、けど·····!」
「じゃあ、いいよね?」
上目遣いできゅるん、とした顔をしながら問いかけてくる美青年に誰が「ダメ」と言えるだろう。
「いや、その、恥ずかしい·····」
「ロナン様がこうすれば由奈が意識するって」
何気なくぽつりと呟いたその言葉に私は今まで生きてきた中で1番の眼力でロナン様を睨みつける。
あんの、くそ王子!純粋なラヴィルさんに変な入れ知恵しやがったな!!
「やだなぁ、そんな目で睨まないでよ。怖い怖い。僕はただ、ラヴィルが悩んでいたようだったからこうしたらいいよ、とアドバイスをしてあげただけなのに。」
隙なくお綺麗に笑うロナン様に私はぴきぴきと青筋が浮かぶ。
「·····この野郎。·····この前は悩み相談してくれたりあんなに可愛かったのに」
ロナン様、あの時ちょっと涙ぐんでたし。弟想いのいいお兄ちゃんだったのに。
可愛くないロナン様に口をとんがらせるとロナン様からそれはそれはひく〜い声で「は?」というお言葉を頂いた。
どうやら、この話はロナン様の地雷らしい。
「なんでもないです」
ロナン様に素っ気なく返すと、ラヴィルさんが私の手を掴む力を強める。
その縋るような感覚に私はラヴィルさんに伝えなければいけないことを思い出し、ラヴィルさんをみた。
「ラヴィルさん、私·····、時間はかかるかもしれないですけど、もう逃げません。ちゃんと、ラヴィルさんと自分の気持ちに向き合ってみます。」
ラヴィルさんはしばらく何も言わなかった。ただ、黙って俯いている。私の手は離してないけど。
·····いや、だから、あのね、手を離してくれてもいいんだよ?
そんな姿に少し不安になっているとしばらくしてラヴィルさんがゆっくりと顔を上げた。
その顔は、うっすらと紅に染まり、心から嬉しそうにはにかんでいた。
「·····嬉しい」
そんな姿に心臓の鼓動が早まって仕方がない私も大概、ラヴィルさんに絆されてきているのだろう。
「あ、あの·····」
思わずその美しい笑みに見惚れていると、アリスちゃんからか細い声が上がった。
「わ、私達、部屋から出た方がいいですかね·····?」
「へ、へ?」
狼狽えながらアリスちゃんを見ると、彼女の可愛らしいお顔は蒸気が出そうな程に真っ赤に染まっていた。
「本当だよね、砂糖を吐きそうだ」
その隣でしれっとロナン様がムカつくことを仰る。
「あの、その、ラヴィルを末永くよろしくお願い致します」
グレンさんまでもがうっすらと顔を赤く染めてそんなとんでもないことを言ってきた。
え、え、え?いや、皆さん、何を言ってやがるんでございます??
「あ、その、·····おめでとう?」
バチり、と目が合ったシナン様からは何故か疑問形でお祝いの言葉まで頂いた。
「いや、あの皆さん何か勘違いしてますよ?!」
「別に、勘違いじゃないよ。」
否定しようとすると、隣でラヴィルさんが私と手を繋いだまま後ろから抱きついてきた。
ドレスを着ているせいで肩の辺りは素肌なため、とてもこそばゆい。
あ、いい匂いがした!イケメン臭がする!ふおっ!サラサラな髪の毛がかゆいです。って言うか、なんで今ちょっと力入れたの?!っていうか、もう、この状況意味がわからない!!泣いていい?ねぇ、泣いていい?
既に涙目な私は部屋にいる人達に助けを求めるも、みんなそっと私から目をそらす。·····ねぇ!!
挙句の果てに目が合ったロナン様なんて、私にニコニコとしたまま手を振ってきた。お前が元凶だよっ!!
私がキャパオーバーしそうになった時、部屋の扉がノックされた。
「どうぞ」
ロナン様は私をちらりと見た後、いたずらっぽく笑って部屋に入る許可を出した。
いや、ちょっ?!まっ·····
「失礼致します」
部屋に誰かが入ってくる前にラヴィルさんを体から離そうともがいた私の苦労も虚しく、扉はガチャリと開いた。
「ただ今、準備が整いましたの、で·····?」
たった今、部屋の中に入ってきた人物―――カタリーナさんは私の姿を見てぴきっとかたまった。
「お、お邪魔でしたでしょうか·····?」
瞬間、顔をトマトのように真っ赤に染めたカタリーナさんに私は全力で首を横に振る。
「全然!」
「そ、そうですか·····。えっと、あの、準備が整いましたので、移動の程をお願いします。」
私からスっと目を逸らすとカタリーナさんは視線を床に向け、そう言った。いや、その、気まずそうにするのやめて·····。いたたまれないから·····。
というか·····
「準備って、なんのですか?」
「この国の新しい幹部達を発表する会。お披露目会、みたいな?」
おどけたようにロナン様が私に伝えた。
「さて、ラヴィル。イチャつきタイム終了〜。イチャつき足りないんなら、また後でね。·····さて、行こうか。」
ロナン様の言葉にみんなが立ち上がり、ラヴィルさんも渋々私の腰から腕を引いた。たすかった!!!歓喜!!
が、最後の最後にチュッとほっぺたに柔らかいものが当たった。
なっ?!!··········知らない。知らない。私は何も見てない。聞いてない。感じてない。
気を抜くと大声を上げてしまいそうになるのを凄まじい精神力で堪えた私は無理やり笑みを浮かべると部屋から出た。
◇◆◇
移動途中、私はロナン様に質問した。
「あの、私はなにかした方がいいんですか?」
「いや、由奈は私から紹介があった時に何も言わずに頭を下げるだけでいい。あくまでも今回は革命についてと、この国の未来についてのための集会だからね。由奈は特に何もしなくていいよ。」
「了解です」
私はロナン様の隣で固くなっているシナン様にとんとんと肩を叩く。
「頑張ってくださいね」
「·····ああ。ありがとう。」
最初、驚いたようにいきなり話しかけてきた私を見たシナン様は数秒後柔らかい微笑みを浮かべ、胸を張って歩き出す。
革命による変化はもう、起きているのだ。
もう少しで完結したいと思っております。
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