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36 それからの話し合いです

それからカタリーナさんに、この前のようにギッチギチにコルセットをしめてもらった私はあのふわふわのドレスを着た。うん。今日も朝から精神ゴリゴリに削られたね。


「とてもお似合いですよ」

「ありがとうございます」

柔らかく笑うカタリーナさんに私は笑みをひきつらせながらそう返した。

「それで、今日の予定なのですが·····、この後殿下達とあってこれからのこの国の行先の確認をして頂きます。」

「えっ、それ私も出るんですか?」

「はい」

「·····私、割と部外者だと思うんですけど」

「え!いえいえ!!由奈様は部外者なんかじゃありません!それに、この国唯一の黒目黒髪ですから、お話に参加していただいた方がいいと思います」

真面目な顔で私に説明するカタリーナさんに私は頷いた。

「わかりました。」

「では、ご案内致しますね」

私はカタリーナさんのあとを追った。




◇◆◇


「やあ、由奈。おはよう。」

部屋に入ると直ぐに第一王子が私に挨拶をする。

「おはようございます。·····もしかして、私が最後でした?」

部屋を見渡すとそこにはもう第一王子、第二王子、アリスちゃん、グレンさん、そしてラヴィルさんが揃っていた。

「最後とはいえ、皆さん同じくらいに揃ったので気にしなくていいですよ」

申し訳ない、と頭を下げるとグレンさんがそんなことを言ってくれた。やっぱり、慈愛に溢れてる·····。


気遣いのできるグレンさんに「ありがとうございます」と返すと、その隣に座っていたラヴィルさんと目が合う。

「おはようございます、ラヴィルさん」

「·····おはよう」

意外そうな顔で私を見るラヴィルさんはそれでも小さな声で返事を返してくれた。

私は、もう逃げない。


「アリスちゃんもおはよう」

「おはようございます!」

私は一応第二王子にも頭を下げる。

「おはようございます、殿下」

「ああ、おはよう。」

第二王子は私の挨拶にすぐに返事をしたもののそれからしばらく視線を彷徨わせる。

「由奈」

「なんでしょうか?」

「その、どちらにせよ王位を継ぐのは兄上だ。私のことはシナンと名前で呼ぶといい。」

「·····いい、のですか?」

「ああ。ぜひ呼んで欲しい」

「畏まりました、シナン様。」

私が笑いかけると第二王子も微かに笑った。

なんだかつんつんしてた猫が自分に懐いてくれたような気持ちになって嬉しいい!!

しかも、あの微笑み可愛いよぉぉぉ!


思わずテンションが上がっていると、第二王子じゃなくて、シナン様の隣に座る第一王子がとても綺麗な笑みを浮かべて私を見た。

「ふぅーん。弟のことは名前で呼ぶんだ。ふーん。」

美しい笑みなのに全く目が笑ってない第一王子に私は鳥肌が立つ。·····その目やめてください!


「いえ、あのですね、貴方様はこの国の頂きにたつことになる方でしょう?私が名前で呼んでたら不敬ですよ!」

「散々今まで不敬をしてきて何を今更」


うっ、それを言われると強く言えない·····。

「それに、異世界から来た人間に身分だのなんだの関係ないよ。実際、アリスにはそういうことは気にしないよう、言った。」

アリスちゃんの方を見るとアリスちゃんはニコニコしながら頷いた。

「ええ〜」

「いい?由奈、これから僕のことはロナンと言うように。」

「ええ〜」

「わかったね?」

「ええ〜」

「わ か っ た よ ね ?」

「畏まりました、ロナン様·····」

第一王子の目力に耐えることの出来なかった私は大人しく、ロナン様と呼ぶことにした。悪魔め·····。


·····ていうか、こんなことしてる暇じゃないじゃない。何してんだ、私たちは。


はっ、と我に返った私はロナン様とシナン様の方に視線を向けた。

「えっと、さっきシナン様が言った通り、王位を継ぐのはロナン様なんですよね?」

「うん。そうだね。臣下は取り敢えずほとんど総とっかえになると思うよ。そこら辺はある程度昨日のうちにシナンと話して決めたからこの後、城の皆の前で発表するよ」

相変わらずの仕事ぶりに私は安心する。

さすが、腹黒有能王子。やることはもう終えてんのね。


「それから、由奈とアリスの立ち位置だけど。それに関してはしっかり、異世界から召喚された人間だと説明するよ」

「え、いいんですか?」

「うん。まあ、やったのはどっかの愚かな王だけど、この国を背負う以上そういうことはしっかりと国民に伝える義務がある。」

強い眼差しで未来を見据えるロナン様のその姿に私はこの国の安寧を見た気がした。


「ちなみに、前陛下である我が父親は今は地下牢にいる。

·····あれから何故か様子がおかしくてね。今更になって自分の罪に気づいたのか、「許してくれ」と延々と繰り返している。·····あれに終止符を打てるのは僕達だけだ。僕達が、僕達の責任の元、あの人を裁く。それが、あの人がしてきたことへの精一杯の罪滅ぼしだ。」

シナン様はそんなロナン様の言葉に頷いた。

そこに以前のような姿は一切無かった。

ひたすらに凪いだ、静かな瞳がそこにあった。


「アリスにはこれから聖女として沢山の活動を任せることになってしまうかもしれない。」

ロナン様がアリスちゃんに視線を向けた。

「大丈夫です。私にできることがあればなんなりと!」

話しかけられたアリスちゃんは握りこぶしを作って力強く笑った。

「それで、由奈なんだけど·····」

「はい」


きた。

なんとも扱いずらいであろう自分の立ち位置の話に私は身を強ばらせる。

「由奈はアリスと共に活動をして欲しい」

「··········へ?」

「まあ、正確に言えば由奈には魔術師として活動してもらうのが理想だからラヴィルに色々教わって魔力解放の段階から行かないといけないんだけど·····。」

「いやいやいやいや。そうじゃなくて」

「ん、なに?」

「え?私、皆さんと一緒にいていいんですか?」

「はぁ?」

勇気をだして言ったのに、ロナン様は何を馬鹿なことを、とでも言いたげに私を見る。

「いえ、だって、あの黒目黒髪なのに魔力のこともよく分かってないし、色々と足手まといな気がしますし·····」

「いや、魔力うんぬんは魔法がない異世界から来たんなら仕方ないだろう。だから、ラヴィルからおいおい説明してもらうつもりだよ。」

「私、本当に皆さんと一緒にいてもいいんですか·····?」

思わずもう一度聞いてしまう。

いや、だって私本当に何も出来ない足手まといだよ?!しかもこの国って黒目黒髪って不幸の象徴みたいな扱いされてるし·····。


「わ、私は由奈さんと一緒がいいです!由奈さんと一緒に頑張りたいです!」

若干震え声で叫んだのはアリスちゃんだ。

「僕も。」

ラヴィルさんが短く、でもしっかりとした声で私を見る。

「私も色々相談させてください。ありがたいことに宰相という大変名誉な地位を頂きましたので」

グレンさんが茶目っ気のある表情を浮かべて笑う。

「俺も話し相手になってくれると助かる」

シナン様が照れくさそうに笑う。

「だってさ、由奈。どうする?」

近所の悪ガキのような顔をしてロナン様が私を見た。


「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします!!」

勢いよく頭を下げると、ロナン様の「嫁にでもいくのかい?」という笑い混じりの声が聞こえた。うるせえやい。こちとら今、感動してるんだい!


俯いて、ジーンと感動を味わっているとそっと誰かに手をとられる。

そして、ゆっくりと手を上にあげられる。

ん?誰?


顔を上げるとそこに居たのはえらく優しい顔をしたラヴィルさんだった。

「由奈、可愛い」

「へ?」

そう言うと、目の前の麗しい美青年は私の手を口元に持っていき·····



ちゅっ



軽く口付けをした。




「ひょっ?!」

息を吐けばいいのか吸えばいいのかわからずに出た間抜けな声を聞いてラヴィルさんは妖艶に笑う。

そして、私の手を自分のすべすべほっぺにおしつけて、すりすりと、すりすりぃぃぃ?!!

ひょ、あっ、ふぉ?!ラ、ラウ、ラヴィルさんがっ?!私の、私の手にっ?!


「わお」

「こら、ラヴィルっ!」


ロナン様のからかうような声とグレンさんの叱る声が遠くで聴こえる。



うん、逃げない。逃げないよ。逃げないって言ったけどさぁ!!


喪女にこれはきついです!!!


目の前でマタタビを貰った猫のようにご機嫌なラヴィルさんに私は思わず気が遠くなった。




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