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34 プリンを配ったのですが·····

いつもに比べるとバリ長いです。


「持ってきました!!」

それから直ぐにプリンを持って帰ってきたアリスちゃんとグレンさんの手元にあるプリンは美味しそうにプルルンと揺れた。


「うわ、美味しそう」

「当たり前でしょ。僕らが作ったんだから」

私の言葉に第一王子がドヤ顔で返す。

相変わらず小憎たらしい顔しやがって·····。


とはいえ、私も早くこの美味しそうなプリンを食べたいので反論するのは後にしておく。

みんなにプリンが行き渡ったのを見て、私はスプーンでプリンをひとすくいした。

ぱくっ、と口に入れると直ぐに素朴な甘さが広がる。そして、遅れて追いかけてくるカラメルのほんのりとした苦味。

「お、おいしぃ〜!」

目を瞑ってじんわりとその甘さを味わっていると、みんなが同じように頬を抑えて味わっているのが見えた。やっぱり甘いものは美味しい。

「美味しい」

隣でボソリとラヴィルさんが呟くのが聞こえた。

「僕、初めて食べた。」

その言葉に私は思わず「え!」と声を上げてしまった。

「プリンを初めて食べたんですか?」

「うん。今まであんまりこういうの食べたこと無かった。晩餐会に出てくるような料理しか食べたこと無かったから、みんなで作るの、楽しかった」

珍しく少し饒舌なラヴィルさんの言葉に私はなんだか胸がきゅぅぅとなった。

「ラヴィルさん、これからまたたくさん色んなことしましょうね。初めてなことも初めてじゃないことも。」

私の言葉にラヴィルさんは嬉しそうに頷く。

その顔は何だかとても胸を温かくする表情だった。


傍から見たら、私のこれはラヴィルさんに対する同情だと思われるかもしれない。ただの自己満足だと。

それでも、そう思われるかもしれなくても、私はラヴィルさんと色々なことを楽しみたい。そう思えるくらい大事な仲間だと思ってるから。



「じゃあ、味見もしたことだし、城のみんなに配りにいこうか」

そんなことをつらつらと考えていると第一王子が立ち上がり言った。

「あ、そうですね!折角ですし出来たてを食べてもらいたいですもんね」

私は第一王子の言葉に頷くと同じように席を立つ。

それにならって、みんなも席を立ってそれぞれプリンを城のみんなに配るために範囲担当を決めてゆく。


アリスちゃんはグレンさんと、私はラヴィルさんと、第一王子と第二王子はジョズさんとステネさんと一緒に配ることになった。

なぜ、第一王子達だけ四人で回るのかというと、第一王子がジョズさん達に興味を持ったからだ。

一緒に回らないか、と提案したそうだ。

ジョズさんは可哀想なことに若干強ばる顔で第一王子と第二王子の後ろに控え、ステネさんはいつも通りおっとりと笑っている。ステネさん、強い。


「じゃあ、配り終えたらまたここに集合しましょうか」

私の言葉にみんなが頷き、それぞれが担当の範囲へと別れた。




◇◆◇




「これ、私達一同で作りましたので、ぜひ。」

私の言葉に食堂に集まった城の方々が目を輝かせてプリンを見る。

ちなみに、私たちが担当するところは元々革命軍の味方をしていた方々しかいない範囲だったのでいまはお祝いのようなムードが流れている。

革命を知らなかった者、王の政治に否定も肯定もしなかった者。そういう人がいる範囲には第一王子達が自ら行くと申し出た為、第一王子達がその範囲を担当している。

一応、第一王子達だけが行くのは危険だと反対したんだけど、ジョズさんだっているんだから大丈夫だ、と諭されて私は渋々頷いた。



そんな経緯もあったけど、私達のいる範囲は本当に平和で和やかな雰囲気が漂っている。

「革命、御成功本当におめでとうございます」

一人の女性が一歩前に出て、深く私たちに頭を下げる。

「あ、頭を上げてください。こちらこそ、今までご協力してくださった方々本当にありがとうございます。」

慌てて、そう言うと女性は顔を上げた。

と、その見覚えのある顔に私は「あ」と声を上げた。

「カタリーナさん!」


改めて落ち着いてみると頭を下げていた女性はキリッとした美人のカタリーナさんだった。

「うわ、お久しぶりです!!」

「お久しぶりです、覚えていてくださったのですか?」

「それはもちろん!本当にご迷惑をおかけしました。」

今度は私が頭を下げると、いつの間にか近くまで来ていた知らない男性にポンポンと肩を軽く叩かれた。

「もう〜、二人して何ペコペコしてんの〜。ほら、せっかく美味しいプリンもある事だし、楽しもうぜ!」

カタリーナさんはそんな男性に対して「由奈様に失礼でしょう!」と叱っていたけど、陽気な男性のおかげで私も少し楽観的に今の状況を見ることにした。

「そう、ですよね。今楽しまないで、いつ楽しむんだって感じですね」


ニヤリと悪い笑みを意識しながら浮かべると男性は意外な顔をした後に楽しそうな顔になって豪快に声をあげて笑った。

「いやー、由奈様だっけか。あんた、おもしれぇなぁ!!」

そんな男性に若干気圧されながらも私は小さく「どうも」と返した。

「あの、色男の兄ちゃんもその勢いでいけば惚れ直すんじゃねえか?」

男性はちらりとラヴィルさんを見ると私に耳打ちした。

「な!!」

反論しようとするも、そんな隙を与えずに男性はまたどこかへとフラフラ去っていってしまっていた。

「すみません、あいつ、いつもあんな感じでいい加減なんです。」

「いえ、むしろなんかあのノリ楽しくてすごく好きです」

自分のことのようにぺこりと頭を下げるカタリーナさんに私は笑いかける。

「あの方とは知り合って長いんですか?」

「え、ええ。一応幼馴染なんですが、昔からああいういい加減な性格なんです。」

少し照れたように男性についての説明をするカタリーナさんに私は「お?」とニマニマする頬を抑える。

「応援してますね、相談事ならドンと来いです!」

ひっそりとカタリーナさんの耳元で囁くとカタリーナさんはそのキリッとした綺麗な御顔を真っ赤に染めあげて私を見た。

「え!あ、いや、なんで·····!?」

「ふふ、女の勘です」

アワアワと慌てるカタリーナさんに私はもはや隠すことを諦めてにやけ顔でうふふと笑った。

「それじゃあ、私たちはそろそろ」

そんなカタリーナさんをもう少し見ていたい気になるものの、まだプリンを配れていないところもあるので私はそうそうに切りあげた。今度、カタリーナさんにあったら進展があったか聞いてみよう。





だいたい全てのプリンを配り終えると私は若干ぐったりとしながらもソファの上に座った。

「いや〜、想像以上に範囲が広くてびっくりしました。やっぱり、お城の中全体的にとなるとかなり広いんですね」

馬鹿みたいな私の感想にラヴィルさんは「そうだね」と短く返した。

が、ラヴィルさんはしばらく私の顔を無言で見つめると、「さっき」と話し出す。

「さっき、あの男の人と何話してたの?」

「へ?」

「耳打ち、されてたでしょ?」

「あ、そ、それは·····」

さっきの男性にラヴィルさんと私が恋仲と勘違いされていることを思い出した私は思わず顔を赤くしてしまう。

まさか、そんなこと本人に言えるわけない!!


「い、いえ、大したことは話してないです。」

ラヴィルさんは私の言葉にしばらく無言で返す。

·····やっぱり、こんな隠すような言い方だとちょっと感じ悪いかな?で、でも正直に話すのはやけに気恥ずかしい気がするし·····。


そんなことをつらつらと考えていると、ラヴィルさんが私の名前を呼んだ。


「由奈」

「な、なんですか?」

周りには私とラヴィルさんしかいない。

そんな状況で彼はハッキリと私の目を見て言った。


「僕、由奈が欲しい。」

「·····はい?」

「僕、由奈が欲しいんだ。」

聞き間違いかと聞き返すと、ラヴィルさんはもう一度ゆっくりと同じ言葉を繰り返す。

「んん?えっと、あれ?はい?ど、それは?え?ど、どどどどういう?」

突然の意味ありげな言葉にパニックになりながら自分でも何を言ってるのかわからないまま取り敢えず、ラヴィルさんから距離を取ろうとする。

が、ラヴィルさんはそれを許さずに離れようとする私の手首を掴んだ。

「お願い、逃げないで」

「え、いや、あの、逃げるとか、そういうんじゃなくて、ちょっと、え?」

混乱した私は取り敢えず逃げられないことを悟り、なんとか必死の抵抗でもう片方の手で顔を隠す。


今、きっと私の顔は茹でダコにも優る赤さでしょうねぇ!!

いや、そうじゃなくて。んっと?欲しい?欲しいってなんだ?どういう?私の持ってる魔力が欲しいとか?いや、ラヴィルさんはそんなこと言わないね。

いや、まさか、まさかだけど、さ、色恋のほうの欲しいとかそういう話じゃないよね。そうですよね!違いますよね!何地味女が勘違いしてんだって感じですよね!!


一瞬、よぎった考えを振り払うように頭を勢いよく横に振るけど、私の顔は未だに熱があるようにあつい。

「由奈」

意識すればするほどそんなはずないのにラヴィルさんの声に熱が籠っているような気がして、もうまともにラヴィルさんの顔が見れない。


「由奈、お願い。こっちみて。」

ラヴィルさんは私の手首を持つ手を離すと、今度は私の頬に手をやった。

二つのすべすべした手によって私は半ば強制的に顔を上げさせられる。

そこには、いつになく妖艶な表情をうかべたラヴィルさんがいた。

「あ·····」

思わず頭を下げようとするも、ラヴィルさんの手がそれを許さない。

「強引なことしてごめん。でも、僕はこういう時どうしたらいいのか分からない。由奈になんていえば僕の気持ちが伝わるのかわからない。全部、全部初めてなんだ」

心做しか熱の籠った目で見られて、なんだかえらい勘違いをしそうになる。

だって、こんな目はまるで·····、


「好きなんだ、由奈のことが。」

ラヴィルさんの言葉に私は息が止まりそうになる。


「う、そ·····」

目の前の人がそんなこと言うわけないと、頭の中で否定する。自分の口から無意識に出た言葉にラヴィルさんは「本当だよ」ときっぱりとした口調で返す。

「由奈のことを閉じ込めたくて、誰にも見せたくないくらい好き。さっきだって、すごくムカついた。由奈が男の人と話して、顔を赤くしてるの。

·····どうしたら伝わる?こういう時ってどうすればいいの?」

ラヴィルさんの綺麗な灰色の瞳が不安げに揺れる。

「え·····、だって、なんで·····?」

「最初は、魔力の波長が合うからこんなに他の人と違うんだと思ってた。」


弱々しい私のつぶやきにラヴィルさんはしっかりと返す。

「でも、違う。由奈じゃなきゃだめなんだ。由奈の近くにいると胸がぽかぽかするのに、ずっと、ドキドキしてる。由奈の行動一つ一つに気持ちが沈んだり、あがったりするんだ。」

私の頬に触れるラヴィルさんの手が優しく私の頬を撫ぜる。

「これが好きって気持ちなんだって、分かった。由奈、好きだよ。世界で一番、誰よりも。」

甘く、蕩けるような笑みを浮かべてラヴィルさんはそれと同じくらい甘いセリフを私に告げる。


こんな、こんな少女漫画みたいなセリフ、恥ずかしいはずなのに、ものすごく逃げ出したいのに、でも、嬉しい。



自分の気持ちがはっきりと分からない私は混乱する。



「今は僕のこと好きじゃなくてもいい。由奈が近くにいてくれるんなら、それでいい。」

断ろうとする私に先回りするようにラヴィルさんがそんなことを言ってきた。


「も、もう、分からない、です·····、なんでラヴィルさんみたいな素敵な人が私なんかの·····」

「僕もわかんないよ。でも、由奈じゃなきゃダメなんだってそれだけは分かる。由奈が悲しんでると胸が痛くなって悲しくなるし、由奈が笑ってると嬉しくなる。」


「同じです·····、私も、ラヴィルさんが笑ってくれれば嬉しいし、悲しんでいれば私も悲しい。でも、それは·····」


ヒナの刷り込みのようなものでは無いの·····?

私が、偶然か奇跡か、ラヴィルさんが感情を取り戻すきっかけになったから、だからじゃないの?

第一、私とラヴィルさんとで過ごした時間はそう長いものじゃない。


もう一度、否定しようと試みる私にラヴィルさんは微笑んだ。


「それじゃあ、由奈が確かめてよ」

「·····へ?」

「由奈が僕の気持ちを信じられないんだったら、確かめればいい。僕は、待つから。」

「そ、そんなこと」


できるわけが無い。ラヴィルさんにそんな曖昧なことさせるわけには·····。


「僕が、そうしたいんだ。由奈に信じて欲しい。僕の気持ちを。もう、何もしないでみているだけは嫌なんだ。」

なんとか目の前の事実から逃げようとするのに、ラヴィルさんの声は泣きたくなるくらい真っ直ぐに私の心に届いた。





長い上に急展開で申し訳ないです。

文章力磨きます( ・ ・)و

お読みいただきありがとうございました!

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