28 パイネマと第二王子
「·····貴女はパイネマと一目見て分かる姿をしていたから、内心すごくびっくりしていた。それに黒目黒髪のパイネマなんて初めて見たものだからろくな確認もせずに貴女にあんな手荒なことをしてしまって·····。兄上にあとから怒られたよ。
くどいようだが、本当に申し訳なかった。」
そういう第二王子は頭こそ下げていないものの、全身から『申し訳ないオーラ』のようなものがでている。
·····うん。まぁ、あの時は確かに困ったけどさ、本当にもういいんだよ?
というようなことをオブラートに包んで第二王子に言ったものの、彼は相変わらず自分を責めている。
「あの時、俺はとても迷っていた。自分の在り方や、この国のことについてずっと、このままでいいのかと悩んでいた。そして、パイネマについても。」
ピクリと隣で僅かにラヴィルさんが身じろいだ気がした。
が、それに気づいたのは隣に座る私だけのようで第二王子は話を続ける。
「父上は昔からパイネマを完全否定していた。
パイネマはこの国の害だと、脅威だと昔からずっとそう言っていた。でも俺が以前、父上に内緒で城下を見に行った時に見たパイネマはみな、そんな事をするような人達には見えなかった。皆、普通に、騒いで、歌って、笑っていた。俺達と何も変わらなかった。」
第二王子は一旦そこで言葉をきると、視線を私からラヴィルさんに移した。
「·····それに、父上はパイネマを害と見なしておきながらラヴィルを傍に置いていた。俺にはなんだかそれが、すごく歪に見えたんだ。」
ラヴィルさんは感情の読めない瞳で第二王子をじっとみていた。
ただ、そんな表情とは裏腹にラヴィルさんは私の手を握る力を強めた。私が握り返すと、ラヴィルの肩から力が抜けたように見えたので、きっと私の行動は正しかったのだと思う。
そんなラヴィルさんの様子に安心していると第二王子が再び話し出す。
「それからはパイネマという存在を徹底的に調べた。
皮肉なことに今まで俺が自分から行動を起こすことは無かったから、父上は俺が何かを調べているということを知っても、特に警戒する姿も見せなかった。
·····そして、調べれば調べるほどわかった。この国のおかしさが。パイネマは何も悪くないのだということも。
その時、俺は思ったんだ。自己満足かもしれなくても、今まで俺達がパイネマにしてきた事への罪滅ぼしがしたい、と。
だから、黒目黒髪のあなたを見つけた時俺は、貴女が何者であろうとも城から逃がそうとしていた。
·····というと聞こえはいいんだが実は俺は、ただ単に勘違いをしていたんだ」
「·····勘違い?」
「ああ。この国はパイネマへの差別がすごいだろう?だからたまにパイネマが王族を殺そうとすることがあるんだ。·····正直俺は貴女もそうなのだと思っていた。」
そう言うと第二王子は恥ずかしそうに頭をかいた。
「この城で貴女のような黒目黒髪が見つかってしまうとどんな目に遭うか分からなかったし、それに·····、その、」
そこで急に言いずらそうに吃る第二王子に私が首を傾げると第二王子は「その·····」とまたしばらく口ごもると、一言こう言った。
「貴女は不審者のようだったから」
「ぶふっ」と真顔で言い切った第二王子の横で第一王子が吹き出しているのが見えた。
半目になりながら、さりげなく第一王子を私の視界からフェードアウトさせたのに、フェードアウトさせた先には肩を小刻みに震わせるグレンさんがいた。その隣のアリスちゃんはきょとんとした顔をしている。うん、アリスちゃん。貴女はそのままの綺麗な心を持った貴女でいてね。
·····あとの2人、覚えておけよ。
というか、さっきから第二王子が私の黒歴史しか掘り返さないんだが。なんなんですか、私になにか恨みでもあるんですか!!謝ってくれる割にはそういうとこ全然気をつかってくれませんよね!別にいいですけど、気にしてないですけど!!
そんな私の心情を知ってか知らずか、第一王子は少し噎せてからやっと笑いを止めた。
「話を遮ってすまなかったね。続けて」
まだ、ほんのりと笑みを浮かべたまま第一王子は楽しそうにそう言った。·····あんただけテンションおかしいんですけど。
「まあ、それに貴女は変な道具―――あとからラヴィルに出してもらったものだと知ったけど、を持っていたからてっきり、城に爆弾でも仕掛けているのかと。」
第二王子、気まずそうに目をそらすのやめてください。
私が惨めになるので、話すならきちんと目を見て話してください。もうやけですから。こうなったらとことん恥かきますから。
「·····まぁ、その後は貴女も知っての通り、城に再び入れないように魔法をかけた。追い出されたのにまた城に入ってきてはここで逃した意味が無いと思ってな。それから貴女が城からいなくなったと聞いて色々あって、そして知ったんだ。貴女が実は聖女候補だったということを。」
「そうだったんですね」
ずっと緊張した面持ちだった第二王子は話し終えると少し疲れたように目を伏せた。
第一王子はそんな第二王子を黙って見守っていた。
「·····あれ?じゃあ、私がパイネマでしかも黒目黒髪だって分かったのは何故なんですか?」
てっきり、第二王子が私の姿を見て関連付けたから黒目黒髪のことがバレたのかと思っていたけど、どうやら違っていたようだ。
私の質問に答えたのはグレンさんだった。
「それは、その人が言ったんですよ。由奈の本当の色素は黒目黒髪だと。」
グレンさんはそう言うとラヴィルさんに指を向けた。
「え、ラヴィルさんが?」
隣のラヴィルさんを見るとラヴィルさんはコクリと縦に頷く。
「も、もしかして夜に会った時に既に私が黒目黒髪だって分かってました?」
「うん」
頷いたラヴィルさんは「だって」と続けると、ふわりと微笑んで言った。
「由奈のことを僕が見間違えるわけないでしょ?」
美しい笑みを浮かべた美青年はそう言うと、さらりと優しく私の頬を撫でた。
すみません。結合しようとしたんですけど、これまた結合すると中途半端な文字数になってしまったので、このままにします。
今回もお読みいただきありがとうございました!




