表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/43

2 神様、人違いにも程があります

「あ、あの!スティル国ってどこですか・・・?」

私の心の叫びが隣で泣いていた鼻声アリスちゃんによって言葉にされた。プルプルしてるのかわいい。お持ち帰りしたい。

私が必死にアリスちゃんの可愛さに悶えそうになるのを我慢してアリスちゃんを見守っているとアリスちゃんは私に少し顔を赤くしながら「ありがとうございました」と言った。

突然のお礼に戸惑ったけど、どうやらさっき私がアリスちゃんを慰めたことへのお礼らしい。律儀すぎて天使。


「・・・あれ?君たち説明してなかったの?」

そんなやり取りをアリスちゃんとしていると冷ややかな声が聞こえた。一瞬、自分に言われたのかと思って身がすくんだけどけど視線の先にはさっきまでヒソヒソ話し合ってた人たちがいてどうやらその人たちに怒ったみたい。ええ、なんかぽやぽやしてそうに見えて実は威圧感ある感じですか・・・。


が、私たちの方に振り返ると美青年はまたぽやーんとした雰囲気で話し出す。

「スティル国っていうのはある大陸にある国のひとつなんだけど、多分今君たちに言っても理解できないと思う。

うーんとね、なんて言えばいいのかな・・・」

眠そうなめを少し伏せて数秒考え込んだ美青年は「つまり」と考えをまとめたようでまた話し始める。

「ここは君達のいた世界とは違うんだよね」


「ここ通行止めですよ」とでも言うような軽さで言い放たれたセリフに私は一瞬、「あぁ、そうなんですか」と頷きそうになった。

・・・いやいや、おかしいだろうがよ。


「えっと、異世界、とでも言いたいんですか?」

私の冗談のような問いかけに目の前の美青年はコクリと頷いた。

おいおい、マジかよ。

「簡潔に言うと、この国は今、魔物により滅亡の危機に瀕していて、このままだとこの国どころか、世界が滅びてしまう。でも、魔物を完全に滅するには邪気を払わなくてはいけない。でもこの国にその力を持つ人はいない。」

そこで一旦美青年は言葉を切った。

やだよ。嫌な予感しかしないんだけど?お国を救ってください的なお話ですか?全力で逃げたいんですけど?


「そこで今回聖女を召喚することになった。」

でたよぉぉぉ!!!予測通りすぎて涙がでてくるぅ!


隣のアリスちゃんはポカーンとしながら話を聞いてるけど、わかるよ、その気持ち。今の状況謎すぎるよね。っていうか、国全体で厨二病こじらせてるよね、と同情的な目を向けたのもつかの間。

私はアリスちゃんの言葉でソファからずり落ちそうになった。

「パドゥラドゥー王国でも魔物はいました。そうですか、この国にもいるのですね・・・。」

うそん。


ダメだ、完全にこの話は私の理解できる範疇から外れてる。

「うん。特にここ数年、この国では魔物が急激に増えてる。そしてそれに関係しているのが時空の歪みから生じる邪気。それを封じるために聖女の聖なる力が必要で君たちには悪いんだけど極秘裏に君たちを召喚した。」

ぼんやり美青年はチャカチャカと話を進めていくけど、ここにおいてけぼりが一人いることを忘れてるんじゃないかな?

私、全く理解出来てないからね?っていうか何ですか?そのラノベみたいな話。


「聖女としての条件、と言うか言い伝えによると、えーと、なんだっけ。・・・そうそう。翡翠の瞳をもち黄金の髪をなびかせ、召喚されし聖女、国境や人種、生物の垣根を越え、平等にその加護を与えられたし、っていうのがここに召喚される条件。多分、二人がここに召喚されたのはこの言い伝えに当てはまったからかな。」


・・・いや、誰それ。私と全然違いますねぇ。ええ。明らかに人、間違ってますねぇ。

翡翠の瞳を持つ→本当は黒目です。カラコンです。

黄金の髪をなびかせ→いや、ウイッグですね。

えーと、あと国境や人種、生物の垣根を越え、だっけ?

そこまで私グローバルに人と関わったことがないです。

あと、平等にその加護って言うけど、一度もそんなにスピリチュアルな力なんて感じたことありません。うん。私、思いっきしの部外者ですねぇ。全く関係ありませんね。

神様、ちゃんと確かめて。お願い。これ、すごいとばっちりだからね?

かつて、ここまで完全なる人違いで召喚されたことあります?


まぁ、これなら私すぐに帰れるんじゃない?明らかに本物は隣のアリスちゃんっぽいし。

なんてその時の私はまだお気楽に考えていた。

「えーと、聖女がもし私たち2人のうち、1人だけでもう1人は間違いで呼ばれたとしたら?」

私の恐る恐るの質問にぼんやり美青年は少し考え込んだ。美形に話しかけるだけでも緊張する。

「・・・この国では今、混乱を招くことになると面倒だから魔物の事は国民には話してないんだよね。・・・あれ、そう言えばどうなるんだろう。・・・ね。」

最終的に美青年は私の質問に賛同するように首を傾げて私に問いかけてきた。・・・いや、知らねぇよ。私に聞くなよ。


少し、いやかなりこの人の対応に心配になっているとまた扉が空いて、人が中に入ってきた。

私がその人を認識する前にその人は美青年に話しかける。。

「ラヴィル様、しっかりとしてください。はっきり言わないと聖女様達も心配なさるでしょう。聖女様、ご安心ください。もし仮に聖女の力がなかったとしても無理やりこちらの世界に呼んだことにはかわりありませんから暮らしの保証はします。」


・・・と、とりあえず良かった、のか?


私は溜息をつきながらわかりやすく安心する事実を運んできてくれた目の前の男をじっくりと観察する。

男は恐らく今流行りの細マッチョってやつで高級そうな服を着ているもののバランスよく着いた筋肉は隠しきれてない。

眼鏡をかけていていかにもなデキル男の見た目。でも目はアイスブルーで黙ってると冷ややかな印象がする。

「あ、ちょうど良かった。グレン、僕もう喋るの疲れた。」

「・・・はぁ。自分が召喚したからちょっと見てみたいって言って無理やり代わったのはどこの誰ですか・・・。」

目の前の男、グレンさん?は溜息をついてぽやんとした美青年をみた。

「僕、元々こんな長く喋るの得意じゃないし。」

相変わらず眠そうな声で答えた美青年にグレンさんは「仕方が無いですね」ともう一度ため息をついてるこちらを向いた。

「失礼致しました。私はグレンと申します。一応はこの人の同僚、のようなものです。なにかご不明な点はありますか?」

元の世界のクレーム対応とかにいそうな丁寧な物腰に私は安心する反面、『のようなもの』ってなんですか、と少し心配になる。

とは言ってもこの部屋で1番話せるのはグレンさんっぽいのでとりあえず私は「ちなみに聖女の偽者を騙った場合は?」と質問をなげかけた。

私の問いかけにグレンさんはにこりと笑った。(営業スマイル)

「それならご安心下さい。偽者だと分かったらこのことを魔法で喋れないようにして遠くの街に移動してもらいます。」

・・・・・・こ、怖い。え、なんだかんだ言って私も聖女の力がないってバレたらそうされそうな気がするんですけど。さっきの身の保証って「ま、殺しはしないよ」的なニュアンスですか?!

「そ、それはまた・・・」

なんと返事をしていいのかわからなくて私がやっとそれだけ返すとグレンさんはそんな私の様子に気づいて再び口を開いた。

「実はですね、前に聖女の話が噂くらいのレベルで街に流れたんですよ。そうしたら金に目がくらんだ町娘達が一気に髪を染めたり、なんとか似せて城に押しかけてきて軽くパニックが起こってしまいまして。」

・・・わあ。すごいね、この国の女性。

積極的ぃー。


「まぁ、結局なんとか対応してもう二度とこんなことがないようにそういう決まりを立てたんです。聖女の偽者が出たら魔法をかけて口止めをして罰としてこの王都から出て言ってもらうという決まりを。」

グレンさんが「ですから安心して聖女を名乗っても大丈夫ですよ。危害を加えようとする輩は私達がどうにかしますので」と非常にいい笑顔で言われたものの私は内心、脇汗びっちょマンだ。

・・・何してくれたんだよ、町娘共ぉ。お前らのせいでただ巻き込まれて召喚されただけの私は人のいないところにほっぽり出される可能性があるかもしれないんだぞ!!


密かに胸のうちで町娘達を罵っているとグレンさんがため息混じりに美青年に話しかけた。

「ラヴィル様、どうするんですか。この後のことは貴方と私で決めてくれと言われています。貴方はもう帰りますか?」

「・・・んー」

眠そうにソファーの背もたれによっかかっていた美青年は少し考え込んでから顔を上げた。と、その麗しいお顔が私の方に向いた。そして目が合う。うぉ、目が合っちゃった。

美形と目が合うなんて、毛穴見える。どうしよう。

若干焦っている私を美青年はなおも見てくる。え、もはやガン見してませんこと?なんで?

美青年にマジマジと見られてもうキャパオーバーしそうになっていると美青年は「まだここにいようかな」とやっと私から目を逸らしてグレンさんにそう伝えた。

「・・・珍しいですね」

「うん・・・」

また眠そうに背もたれによっかかって目を瞑った美青年を見て私は誓う。


絶対に偽聖女ってバレないようにしないと・・・、っていうかバレてもこの城に寄生してやるんだ・・・!!

と。


「すみません、この人なにぶん本能のままに生きてるもので御無礼な真似を・・・。何はともあれ、無理やり召喚したのはこちらですからなにか御用があったらなんなりと言ってください。」

その言葉に私はほっと息をつくもののまだどうなるか分からないから安心はできない。

「あ、そうだ。元の国にはいつ帰れるんですか?」

そうだ、これは聞いておかないと。


そう思って質問したもののグレンさんの顔が曇ったことによって私は大体の答えが予想できた。

そしてその言葉は予想通りにグレンさんの口から苦々しく出た。

「・・・元の世界には帰れる可能性は恐らくありません」

やっぱり、かぁ。


「そうですか・・・。仕事の引き継ぎしっかりしておきたかったなぁ。」

絶対あのパワハラ上司怒り狂うわぁ。あの人笑顔で怒るから怖いんだよね。

そんなことを考えながら私が返事をするとグレンさんは少し呆気に取られた顔になった。

「いいのですか・・・?」

「なにがですか?」

チラリとグレンさんの方に視線をやるとグレンさんは意外そうに目を見開いてこちらを見ていた。

「そんなにあっさり受け入れてしまって」

「ん〜、別に受け入れたわけじゃないですよ?でも私、元いた世界はもう両親は亡くなってましたし、とくに執着するものはないかなって感じです。あ、でもアリスちゃんはいいの?」

こんな廃れた女はともかく美少女でピチピチなアリスちゃんは元の世界に未練があるかもしれない。

今まで黙って話を聞いていたアリスちゃんに問いかけるとアリスちゃんは泣きそうな顔をして首を横に振った。

その拍子に目に溜まっていた涙が一筋こぼれる。

「私・・・、あっちの世界で一人ぼっちだったんです。新しく出来たお義母様や義姉様達に苛められてて、でもお父様は見て見ぬふりで・・・、逃げたかったんです。どこでもいいから。もう戻れないというのならお義母様達の影に怯えることもない・・・だから、いいです。このままで」

こちらに向けられた目は覚悟を決めた強い目だった。

「そっか、アリスちゃんも大変だったのね。」

私がアリスちゃんのふわふわツヤツヤ髪の毛を撫でるとアリスちゃんはブワッとその大きな瞳に涙を浮かべた。

あれ?なになに?こんな知らない女に頭撫でられるの嫌だった?それともアリスちゃんの国では頭なでなではやっちゃいけない事だったとか?それならさっきもやっちゃったけど・・・

アリスちゃんの様子に焦っているとアリスちゃんは「す、すみません・・・」と鈴のなるような可愛らしい声で呟いた。

「こんな優しく接してもらったのすごく久しぶりで・・・」

少し頬を赤らめて涙目で私を見るアリスちゃんを見て思わず鼻を抑えた私は悪くない。いや、まじで油断したら鼻血でそう・・・。なお、私は変態ではありません。


その後、アリスちゃんも少し落ち着いて、私もある程度状況は理解した。

この国が相当やばい状態なのも、お城のピリピリしている空気でわかった。本当はここにいる人達が全員申し訳なく感じていることも。

だからいきなり召喚されたもののあまり苛立ちはない。

・・・ただなぁ。私、よりによって聖女の伝説に一欠片も当てはまらないただの凡人なんだよなぁ。


すぅ、と可愛らしい寝息をたて始めた美青年を見て私は1人、溜息をついた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ