17 重要人物ですってば!
「いや、ダメですって!本当に何があるかわからないですよ?!こんな怪しいヤツ置いて!」
私は必死に反論するも「こんなボロ家、嫌かしら・・・?」と少し悲しげにステネさんに言われては「いえ、素敵です。ここに隠れさせていただきます」と即答するしかない。
・・・いや、本当に、ステネさんの切なげな顔見て断るなんて不可能だから。無理だから!
「そう!それじゃあ早速準備してくるわね!」
一気に笑顔になったステネさんが部屋の奥に消えてゆく。
・・・あれ?私、早まった?
若干顔を引き攣らせる私の横でジョズさんが吹き出す。
「ふっ・・・!!ばっ、ばあちゃん・・・、演技派だから、ふっ、ふふふふ、ははっ!やっべぇ、見事に引っかかりすぎてっ・・・、ツボった・・・!」
ええ。ええ、善良な私は見事にその演技にハマりましたよ。
大慌てで承諾しましたよ。別にいいですけど!ステネさんがいいって言うなら!
未だに横でつぼっているジョズさんは無視することにして私は改めてこれからのことに思考を巡らせる。
うーん・・・。とりあえず衣食住全て揃ってしまったわけなんですが。
城に行くにしてももうカラコンは使えないからこの黒目じゃ信じてもらえないだろうし・・・。ていうか、まず、城に入れないし・・・。
とりあえずやっぱり、あっち側の出方を伺うしかないよなぁ。アリスちゃん達になんとか状況を伝えられることが出来ればいいんだけど。
「うーん・・・」
唸りながら頭をぐしゃぐしゃと掻き回すと未だに隣でツボっていたジョズさんが「ん?どうした」と涙を拭いながら私を見た。
そんなに面白かったですか。そうですか。
私はそんなジョズさんに「別に」と冷たく返す。ほんと、いつまで笑ってんだこの野郎。
「ふっ、なんだ?怒ってんのか?悪かったって〜」
ジョズさんはポンポンと私の頭を撫でながら笑う。
「・・・私ジョズさんと同い年ですよ。小さい子と間違えてません?」
ジト目でジョズさんをみてもジョズさんは「間違えてない」と含み笑いでいいながら私の頭を撫で続ける。
嘘だ、絶対私のことを幼女かなんかと勘違いしてる。
「あら、仲良くやってるのねぇ」
しばらくあほらしい攻防を繰り広げているとステネさんが奥の部屋から戻ってきた。
「とりあえず、ユナちゃんのお部屋はできたから満足するまでここで過ごしていいわよ。」
にっこりと優雅に笑いながらステネさんは私の手を握った。
「本当に何から何までありがとうございます」
頭を下げて感謝を伝えるも「いいのよ」と私の下げた頭はステネさんによって上げさせられた。
「本当に気にしなくていいのよ。・・・実は私達は代々危険な状況のパイネマの方を保護してるの。」
「え、保護してるんですか?」
首を傾げる私にステネさんは柔らかく微笑んだ。
「ええ。私達のご先祖さまがねさっき話したパイネマが初めて現れた時代に生きていて、そこでその黒目黒髪のパイネマの方に命を救われたらしくてね。最後までその方のことを良い方だと信じているうちの一人で、亡くなる前に私達子孫に酷くなるパイネマへの差別をみて保護を託したらしいのよ。」
「そうだったんですか・・・」
「ええ。だからあんまり気にしないで。それに、私もジョズも政府のパイネマの方への対応は怒りを覚えているの。だから、この活動は私たち自身も進んでやってるいるのよ。」
「・・・まぁ、確かにこの国の色々腐ってますもんね」
「ええ」
「確かに」
私達は3人揃って遠い目になる。
「でも、ユナちゃん心配しないで。」
「へ?」
「もし腐ったヤツらがここに押し掛けてきても私が追い出してあげるわ。これでも口と腕っぷしは強いから安心してね。」
ステネさんのおっとりとしたタレ目がキラリと鈍く光る。・・・いや、ステネさんシンプルに怖いっす。
「まあ、俺もいるしな。」
ジョズさんの言葉に私は「え〜?」と返す。
「ジョズさんって門番ですよね?」
その一言で私の言いたいことがわかったらしくジョズさんは素早く反論する。
「あ、お前俺が戦えないと思ってんだろ!言っとくけどな、門番って言うのは騎士がやるもんなんだぞ!」
「え、そうなんですか?」
「そうだよ!それに俺は門番になったのは上司が反パイネマ過激派だったからそれが嫌で自ら移動したの!俺、本当は結構強いの!」
初耳な事実に私はびっくりしながら「それは、頼りになりますね」と返すとジョズさんはまるでお気に入りのおもちゃを褒められた子供のように自慢げに「だろー?」と笑う。
それを優しく見守るステネさん。
そんな光景を見て私もクスッと笑ってしまった。
・・・城を出て一番最初に見つかったのがジョズさんで良かった。
改めてしみじみと思った私だった。
次の日、一瞬見慣れない天井に今、自分がどこにいるのか分からなくなってしまったものの数秒後に自分の立ち位置を思い出した。
部屋の窓から見える街の人達を見ながら私はボソリと呟いた。
「アリスちゃん達、どうしてるかな・・・」
部屋から出てステラさんのいる部屋へと向かうと、香ばしいいい匂いが鼻に飛び込んできた。
「あら、おはよう。ユナちゃん。」
「よぉ、ユナ」
「あ、おはようございます!ステネさん、ジョズさん」
私はジョズさんとステネさんに挨拶しながら席に着いた。
ちなみにジョズさんはここの近くで一人暮らししているらしいのだけれどもしばらく私の様子を見るためにここに通ってくれるそうだ。
席に着いてから、ジョズさんと他愛もない話をしているとステネさんが机にパンを運んできてくれた。
「わぁ・・・、美味しそう・・・!」
私が思わずつぶやくとステネさんはにっこりと微笑んだ。
「私の手作りパンよ。出来たてのうちにお食べなさいな。」
ステネさんの言葉に頷いて私は早速出来たてのパンを齧った。
・・・お、美味しいっ!!!
美味しすぎるよ!!何このふわふわもちもちふっくらパンは!
「ステネさん!すっごく美味しいです!」
「そう?そんなに喜んでくれると私も嬉しいわ。」
ふふふ、と笑いながらステネさんはスープも持ってきてくれた。
パンをスープにつけると、これはこれでもちもちのパンがスープを吸い込んで美味しいっ!
結局、私は手を止めることなくもきゅもきゅと朝食を食べた。
朝食を食べ終えると、ジョズさんは「さて」と話し出した。
「早速、朝からこんな話して悪いんだが今の城の状態を知っているか?」
「・・・いいえ」
突然の真面目な話に私は朝食で和んだ気持ちを引き締め、ジョズさんの話を聞く。
「今日、夜勤だったやつにそれとなく聞いてみたんだが、どうやら城の中はいつもとはかなり様子が違ったらしく、夜中も休むことなくなにか会議が開かれていたらしい。原因は、聖女候補の消失だ。」
その言葉に私はギクリと体を強ばらせる。
「俺も初耳だったんだが、今、城には正真正銘本物の聖女候補が二人いるらしくてな。そのうちの一人が昨日未明から行方不明らしい。今のところ、騒ぎは城の中でだけだが、あまり聖女候補の行方不明期間が長くなるようだったら、政府はおそらく、聖女候補を街中に探しに来るだろうな。」
ギクリ、ギクリと体を強ばらせる私を見てジョズさんは口の端をヒクヒクさせて私を見る。
「あ〜、それでだ。もしかしなくても、もしかすると・・・、その聖女候補って、ユナか?」
「いぇす・・・」
答えた私にジョズさんは「まじかぁぁ」と頭を抱えこみ、ステネさんは「あらあらあら」と口に手を当てて驚いていた。
だから結構重要人物だって、言ったじゃないですか〜!!
私は誰に言うでもない言い訳を心の中で叫んだ。
お久しぶりです。不定期更新にもかかわらずお読みくださった方、心より感謝致します!




