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13 とうとう城を・・・

それは本当に偶然だった。

偶然、その時間に目が覚めて、偶然、外に出ようと思っただけで。


まだ日が明けないうちに何故か私はパチリと目を覚ました。だいたいまだ深夜3時くらいだったのにやけに頭がさえていた私は興味本位でお城を探索しようと考えて上着を羽織って外に出た。

本当に、あの時の私、お願いだから大人しくしていてくれ、と何度も思う。出来ることなら顔面1回殴らせて欲しい。



そんなことその時は露ほども知らない私は廊下に出て薄暗い景色の中を1人でさまよっていた。

今までのことを思い出しながら。

しばらく探索していると目がゴロゴロしないことに気づいた。あ、カラコンを入れてない。

そう思い出したものの、慌てて部屋に戻ってつけ直す気にはなれずに私はそのままお城を探索し続けた。

そもそも、部屋に戻っても、もうあのカラコンをつけることは出来ないかもしれない。コスプレセットを渡された時、カラコンのパッケージはよく見てなかったけど、そんなに高くないものだろうから、そんなに長く持たないだろうし。

はぁ、とため息をついて結局何も収穫がないまま私は部屋に戻ることにした。


そこでだ、彼に出逢ってしまったのは。



特に意味もないまま静かな誰もいない城の廊下を歩いて私は部屋に戻った。そして、鍵をかけようとしたその時だった。

「お前は誰だ」

敵意に満ち溢れたその短い言葉に私は寿命が縮まりそうなくらい驚く。その声の主は私が閉めようとしていた部屋の扉の隙間に手をはさみ、私がドアを閉めるのを阻止していた。

「もう一度聞く。お前は誰だ」


もう一度、私にそう問うた人は、第二王子その人だった。



固まる私に第二王子は、眼光鋭く睨みつける。

「ここには一般の者は入れない。何故、どこの誰とも知らぬお前がこの部屋に入った?」

私はなんと答えていいのか分からずに必死に頭を回転させて考える。

どうしよう、第二王子は聖女召喚には反対してたって言ってた。それに今の私は素の姿のままだし・・・。私が聖女候補だ、なんて言ったら取り返しのつかないことになる・・・。

何も言えない私を見て第二王子が眼光を鋭くさせる。

「答えぬ気か。それとも貴様が聖女候補だとでもほらを吹く気か?無駄だぞ、聖女候補は金髪翠目だ。お前とは似ても似つかん色彩をしている。」

私の心を読んだかのように指摘され、私はさらに言葉に詰まる。何を言えば最良なのかわからない。

だいたい、この王子の目的がわからないと迂闊に発言もできない。そもそもなんでわざわざこの人は聖女候補の部屋に来たんだろ・・・?


「・・・私を前に黙りとはいい度胸だな。お前のような珍しい色彩のものなど調べればすぐにわかるが、今は見逃してやる。今すぐこの城から去れ。」

一瞬、言葉の意味がわからなくて惚ける。

今、見逃すって言った・・・?なんで?

ていうか、珍しい色彩って?黒目黒髪は普通じゃないの?


頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになっている私に第二王子は「物分りの悪いやつだな、そんなに見逃して欲しくないのなら、望み通り処刑してやろうか」なんて不気味なことを言い出す上に目がガチだったのでとりあえず私は第二王子の言う通り一旦ここから立ち去ることにした。

大丈夫。すぐ戻ってくればいい話よ。

一瞬、悪い予感がしたけどそれを振り切って私は「申し訳ございませんでした、もう二度とこのようなことは致しません」とここから立ち去るために深く頭を下げた。

が、第二王子はそんな私の腕を掴む。

「まて、今部屋から見えたあの奇妙な物体は貴様が持ってきたものだろう。あれも持って帰れ」

え、と思うと共に部屋を振り返ると机の上に炊飯器が置いてあるのが見えた。

あ、そっか第二王子は炊飯器が何なのかを知らないのか・・・。


私はどうしようか迷って結局ずしりと重い炊飯器を持ち上げて部屋を出た。それと共にこっそりとカラコンが入ったケースと金髪のウィッグを持ち去る。

と、部屋から出た瞬間また、第二王子に腕を掴まれた。

「・・・貴様、それはなんだ」

その言葉にウィッグのことがバレたのかと思ったけど第二王子の視線はどうやら炊飯器に向いてるらしかった。

「え、あ、いや・・・、その・・・」

とはいえ、なんと答えるのがベストなのか分からずに口ごもっていると第二王子は「まさか」と低い声で呟く。

「それは爆発物か」

「え」

「お前はここが聖女候補の部屋だと知ってきたのだろう?誰に頼まれた?それともお前の単独犯か?」

私が戸惑って何も言えずにいると目の前の第二王子の目がどんどん鋭くなってゆく。

「貴様、それは国に対する反逆罪になりうるぞ。」

その言葉に私はびくり、と体が強ばる。今、捕まってしまえばアリスちゃん達に迷惑がかかる。

それだけは絶対に阻止しないと、と考えながら第二王子を見据えると第二王子は眉間のシワを深くして予想外の言葉を言い放った。

「二度とこのようなことはするな。もし次会うようなことがあれば私はお前を殺すことになる。」

「・・・っ!」

恐怖で弁明もできずに私はこくこくと頷いた。

色々聞きたいことはあるけど今の私の体は恐怖ですくんで思うように動かない。

我ながら年下相手に情けないとは思うけど24年間生きてきてこんな命の危機を身近に感じたことなんて普通ないよね?!


と、怯える私の首元に第二王子は手をあてる。

第一王子と同じあたたかな手にビックリしていると首筋にピリッと僅かな痛みが走った。

「今からお前に転移魔法をかける。もう二度とこのようなことはするな。」

何故か少しだけ辛そうな顔をした第二王子の言葉を理解する前に私の視界は真っ白になっていた。


そしてここから私の計算違いが始まる。

すぐに部屋に戻ればいいと甘い考えをもっていた私だったけど、やはりと言えばいいのかなんなのか私みたいなエセ聖女に現実は厳しかった。

まず、金髪のウィッグを炊飯器のせいで未だにつけれていないので今の私は素の姿だ。はっきり言って両手に炊飯器と、ウィッグとカラコンを持った私は不審者極まりないと思う。ついでに言えば炊飯器は安全なものだとこの世界で認知している人は私とアリスちゃん、ラヴィルさんとグレンさんしかいない。他の人は大方、さっきの第二王子のように得体の知れない危険なものに見えるだろう。そんなものを持った私・・・。うん、the不審者。

そして、そんな姿のままの私が第二王子の転移魔法により飛ばされた場所は城の門。状況的には最悪を越して地獄だ。

こんな不審者が城の前でウロウロしてたらやばい、と慌ててこっそり城の中に入ろうとするもなにかバリアが張ってあるかのように私は城に入ることが出来ない。恐らく、あの時第二王子がそうなるように転移魔法と共にそういう魔法もかけたのだろう。

さらに不幸は続き、私がそんな状態でうろうろしているうちに空がいつの間にか明けていた。仮に今城に戻ることが出来るとしても私はもう自分の部屋に戻ることは不可能だろう。



・・・つまりね、私はどうやら詰んだらしい。


一体、どうしたら・・・。

私は重たい炊飯器をもう一度持ち直す。


もう嫌だ・・・、今日は朝から散々だ。

泣きたくなるのを我慢して私は必死に突破口を探すも相変わらず私はバリアのような何かに拒まれ城に入ることさえできない。

・・・ねぇ、これなんて言う筋トレですか?炊飯器の重さで腕がプルプルしてきたんですけど。



◇◆◇


・・・どうしよう。とりあえずこのままここに居るのはまずい。一度、外に出るしかない、か。いや、でも外に出るにしても門番の人達はどうくる?素直に突破した方がいいの?いや、でも門番の人から見るとこの炊飯器は得体の知れない物体だもんな。何を言われるかわかったもんじゃない。

一向に突破口が見つからずに結局第二王子に転移魔法で飛ばされた場所に戻ってそんなことを考えているとガっ、と肩を掴まれた。

「・・・え」

驚いて顔を上げると目の前に訝しげな顔で私を見ている男性がいた。

「お前、何者だ?」

ひゅっ、と喉の奥で音がした。

この人、多分門番の人だ。私がこうしてうじうじ悩んでいる間に怪しげな私に気づいちゃったんでしょうね。

少しワイルドで兄貴肌っぽい男性の目には、言葉にしなくても警戒心がありありと浮かんでいたのが見えた。

そしてその目に困惑と驚きの感情が浮かんだのは顔を上げた私を見て数秒後の事だった。彼は、目を見開いて確かめるように言った。


「お前、パイネマ(持たざる者)だよな・・・?」

「え?」



昨日召喚された時ぶりの意味のわからない単語に私は首を傾げた。




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