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11 いつもと様子が違います

「ん〜!すっごく美味しいです!!とろとろのシャキシャキ!!この香ばしい麺とよくあいます!!」

「よかった〜、簡単に作れるから私もよく作ってたの」

口いっぱい、リスのように麺を頬張ったアリスちゃんはニコニコ笑顔でそんなことを言ってくれた。アリスちゃん、そんなに急いで食べなくても食べ物は逃げないからね・・・。

そんなアリスちゃんをお母さんのような心境になりながら見守っているとグレンさんが感心したように息をつく。

「本当に、由奈様の世界は発達してらしたのですね・・・。こんなに美味しいものがあんなに手軽に作れるなんて。」

グレンさんの言葉に私は少し嬉しくなる。

「ええ、確かにかなり発達していました。他にもたくさん便利な機械がありましたから」

そんな私の言葉に反応したのがラヴィルさんだ。

「・・・他にもたくさん、あった?」

「ええ、まぁでも私たちの世界には魔法がなかったですからそれを補うくらいですよ。」

「でも、魔法がない世界で魔法と同じ効果が現れる物体を人為的に作ってたんでしょ?」

「え、ええ」

え?やばい、なんか、ラヴィルさん、スイッチはいってない?

目がさっきのアリスちゃんのように爛々と輝き始めてますよ?

ていうか、質問しながらそのお美しいお顔を私に近づけないでください!息止まる!

「由奈はそんな機械をその目で見たんだよね?」

ずいっ、とまた顔が近寄る。ひぃっ、この人毛穴がないっ!

「え、はい」

あまりに近い顔に「ひえっ」と出そうになる声を抑えて何とかそれだけ返す。グレンさんやアリスちゃんに助けを求めるも二人とも何かを話しているようで私たちの様子には気づいていない。

「なら、炊飯器と同じように、作れる・・・」

限界まで仰け反った私に、限界まで顔を近づけたラヴィルさんは独り言のようにそう呟くと色素の薄い肌に少し朱を含ませて嬉しそうに笑った。

「それは、楽しそうだね。」

「ソ、ソウデスカ・・・」

ラヴィルさん・・・、それってまたあの額を合わせるやつやるんですよね?私の心臓、度重なる重労働でそろそろ止まりますよ?


そんなことを考えながら若干死んだ目でラヴィルさんを見ているとラヴィルさんが少し戸惑ったように首をかしげているのに気づいた。ラヴィルさんは先ほどとはうってかわって妙に静けさを感じる雰囲気を纏っていた。

「ラヴィルさん?」

「楽し、そう・・・?」

私の声に気づいた様子はなく、ラヴィルさんは自分の言葉を確かめるように先程の言葉を繰り返す。

その瞳は不安げに揺れていてまるで迷子の子供のように見えた。

「ラヴィルさん、大丈夫ですか?」

私はそんな危うく酷く儚げなラヴィルさんの様子に耐えきれなくて思わずラヴィルさんの服をぎゅっと握る。

すると、ラヴィルさんは私の存在を思い出したようで、とても戸惑いながら「え、あ、由奈・・・」と呟いた。そしていきな「ごめん、ちょっと、手を握っててもらってもいい?」と言われた。

「え?」

これまた、なんで急にあなたみたいな美青年と?!

なんて茶化しそうになって今のラヴィルさんがあの夜のように虚ろな目をしていることに気づいた。

私はその目を見てラヴィルさんの手を静かに握る。その手は少し震えていた。

「ごめん、本当にちょっとの間だけだから、すぐ、離すから。」

何かを恐れるように、でも何かに縋るように、あまりにラヴィルさんが切なげに言うから私は思わず手を握る力を強くする。

「そんなに急がなくてもいいですよ。私なんかの手でいいならいくらでもかしますから。」

安心させるつもりで言ったその言葉をラヴィルさんはどう受け取ったのか、数秒してから狼狽えはじめた。

「でも、・・・そんなわけ・・・。・・・なんで」

何かを呟きながら相変わらず虚ろな瞳のラヴィルさんに私はどうしたらいいのかわからない。でも繋がれた手は離されずにいるから私は何も口を出さないかわりにラヴィルさんの背中をずっとさすっていた。


それからしばらくしてラヴィルさんが少し落ち着いてきたので私達は近くにあった椅子に腰をかける。

と、席に着いた途端、アリスちゃんと目が合った。

「由奈さん、これとても美味しかったです!!今度また一緒に作りましょうね!」

「それは良かった!うん、また今度作ろうね」

屈託のない笑顔で話しかけられて私も思わず笑い返す。

と、ぎゅっと握られた手に少し力がこもった。

そう、何故か未だに私の手はラヴィルさんに握られたままだ。まぁ、ラヴィルさんが離す気がないのなら私もこの手を離さないけど。でも、私、手汗がぁ、でてきてるぅぅ。


そんな私のどうでもいい心中を知る由もないラヴィルさんはくいっと私の手を引っ張って自分の体の近くに寄せた。ちなみにこれらは机の下でやられているのでグレンさんとアリスちゃんには見られてないけど、なんて言いますか、見られてないとわかっていても恥ずかしいですね。

でも、ラヴィルさんはきっとそんなこと言ってる場合じゃない程、戸惑っているようなので私に出来ることならいくらでもいつまでも手伝う所存です。それがラヴィルさんのためになるのなら。

「ラヴィルさんはお口にあいましたか?」

「え?あ、うん。美味しかったよ。とろとろしてたのが好きだった」

いきなり私に話題を振られてびっくりしているラヴィルさんの瞳はもう虚ろなものではなくて私は少し安心する。

「それは良かったです。私もとろとろが好きなんですよ〜、今度皆さんであんかけスープとかとろみのある中華スープとか作るのもいいですね」

私の言葉にアリスちゃんが笑顔で賛同してくれてグレンさんが「スープも美味しそうですね」と呟く。

「今度はグレンさんとラヴィルさんも手伝ってくださいね」

こんな和やかな雰囲気が嬉しくて少し弾んだ声でお願いするとグレンさんは真面目な顔で「私に出来ることならなんでも」と頷き、ラヴィルさんは嬉しそうに「うん」と返事をした。

「色々落ち着いたら炊飯器で作るもの以外の料理も作りましょうかね〜」

「あ、それもいいですね!私もなにか皆さんに振る舞いたいです!」

私の言葉にアリスちゃんが返事をしたのを聞いてグレンさんが少し顔を青くさせた。

・・・多分グレンさん、アリスちゃんの言葉でさっきのカゴに入った草のことを思い出してるんだろうな。た、多分もう草は食べないって言ってたし大丈夫、だよね。

・・・お腹下す時は一緒ですよ、グレンさん。


とりあえず覚悟を決めた私はそれ以上変な方向にこの話題がいかないよう、話をおわらせる。

「それじゃあ、そろそろ片付けしましょうか」

「そうですね!」

「私も手伝います」

アリスちゃんとグレンさんが私の言葉に応えて行動し始める。

が、ラヴィルさんはと言うと・・・。

「ラヴィルさん、もしかしてちょっと眠くなってる?」

「ん・・・、大丈夫。」

そう言いながらもラヴィルさんは私と手を繋いでない方の手で目をこする。

「ここは私達に任せていいですから無理しないでください」

「んー・・・」

ゆらゆらと体を揺らしながらラヴィルさんが曖昧な返事をする。さっきまでみたいな様子よりは断然いいけどこれはこれで対応がわからない・・・。

「ラヴィルーさーん?」

耳元で聞こえるように呼びかけるとそのままぎゅっと抱き枕のようにハグされる。


・・・ん、・・・ん?

・・・え、何これ?いま、どういう状況?


「ラ、ラヴィル!貴方、由奈様に何をしてるんですか!貴方は結構重いんですからね?!大丈夫ですか、由奈様!」

と、やっと状況に気づいてくれたグレンさんが必死にラヴィルさんを引き剥がそうとしてくれる。・・・が、

何を思ったのか私を抱きしめる力を強くしたラヴィルさんはそのままグレンさんに剥がされないように私を抱え込む。

ちょっ、本当に意味わかんらないんですけど?

てか、なんかいい匂いするんですけど、なんですか?イケメン臭ですか?っていうか、今なんでこうなってるんですか?しかも、何気にラヴィルさんに手を繋がれたままなんですけど?

ふぁっ、今耳にすべすべほっぺたがあたりましたぁぁ!


パニック状態の私に状況の理解が出来てないアリスちゃん、さらに焦るグレンさんと今にも寝そうなラヴィルさん。

そんなカオスな状況は本気で怒ったグレンさんによってラヴィルさんが叩き起されるまで続いた。




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