新たなる旅立ち
幸い昔の記憶通りの街並みだった為、俺は程なくして自宅の前に辿り着いた。
家の扉は閉まっており、チャイムを鳴らしても人が居る気配は無かった。
俺は仕方無く、朋美の家に向かった。
チャイムを鳴らすと朋美の母親である冬美さんの声がした。
朋美は母子家庭だったので、身内は冬美さんだけだった。
《はい。どちら様ですか?》
俺は、インターフォン越しに聞こえる懐かしい声に安心感を感じた。
《すいません、俺竜巳です。朋美は今居ますか?》
《⁉︎》
インターフォン越しに驚く声が聞こえ、家の方から人が動く振動が聞こえ、目の前の扉が音を立てて開いた。
懐かしい雰囲気がある高齢の女性が目の前に現れた。
《竜巳君⁉︎何故姿が⁉︎貴方無事だったの?朋美は一緒じゃ無いの?》
《⁉︎》
《取り合えず中に入って、話を聞かせて頂戴》
冬美さんに導かれ俺は朋美の家に入った。
それから数時間、俺は冬美さんに朋美の事やアルカディアで起こった話を聞かせた。
冬美さんは最初は不思議そうに聞いて居たが、俺の服装や風貌の変化で完全ではないが信じてくれたようだった。
こちらの世界では俺と朋美は駆け落ちとか、失踪とか犯罪に巻き込まれたとかニュースになって、当時警察がかなり動いたが分からなかったと冬美さんは話した。
俺の両親は最後まで俺の無実を訴えたが、世間からの誹謗抽象に耐え兼ねて引っ越しをしたらしい。
父も母もその後亡くなったと冬美さんに伝えられた。
冬美さんは俺の無実を信じて、朋美と現れてくれるのをこの場所で待ち続けていたと、涙ながらに語ってくれた。
俺は朋美を先に帰した事を冬美さんに伝えたが、朋美は自宅に帰った形跡は見当たら無かった。
(朋美なら絶対家に帰っている筈だ、何か予期せぬ出来事に巻き込まれて帰れないのでは。探さないと…)
すると頭の中に声が響いた。
(マスター、マスター聞こえますか?
)
(クロウ⁉︎何でお前がこっちの世界に⁉︎)
(実はこっそりマスターの頭の中に私のコピー魔法を植え付けて置きました。万が一マスターに不都合が生じた時、お手伝いが出来る様にだったのですが、役に立ちました。)
(助かった。お前こちらの世界でも魔法は使えるのか?)
(はい。マスター。取り合えず人間になります)
《すいません、冬美さん。今から此処に1人現れますが驚かないようにお願いします》
《は…はい?》
すると光が弾けた後、可愛い男の子が現れた。
《まぁまぁ⁉︎竜巳君。この子は先程聞いたアルカディアだったかしら、そこから来たのかしら、本当なのね》
《そうです、彼はクロウと言う名前です。これでもドラゴン族の末裔なのですよ》
《まぁ、こんなに可愛い坊やなのに。凄いのね》
《さて、クロウ。こちらの世界に朋美は感じられるか?》
《はい、マスター。僅かですが朋美様の僅かな力を感じます。しかし、何かに囚われて居るような…》
(そうか、やっぱり、何か予期せぬ出来事に巻き込まれてこうなったのか。直ぐに動くのは危険だな。まずは朋美の居場所の情報を集めないと)
《竜巳君、朋美は朋美は無事なの?
何処に居るの?》
《落ち着いて下さい、冬美さん。朋美は無事此方に居る様です。しかし、何か予期せぬ出来事に巻き込まれた様です。まずは情報を集めないと、朋美が何処に居るのかさえ分からない。》
《そ…そうね。竜巳さんに任せます。必ずあの子を取り戻して下さい。お願いします。この家を使って下さい。朋美の部屋はまだあの子が
居た当時のままです。クロウ君も宜しくお願いします》
《ありがとう冬美さん。助かります。…クロウ俺はこの世界ではお尋ね物だ、顔に幻影魔法をかけてくれ》
《はい、マスター》
《an illusion 幻影》
見る見る間に俺の顔に変化が起き、精悍な顔つきの青年になった。
《まぁまぁ凄いのね。竜巳君よね。別人だわ。》
《クロウの魔法は協力ですから、取り合えず俺は、冬美さんの親戚の大学生って感じで、ご近所にはお願いします。クロウは俺の弟って事でお願いします。》
《じゃあ、玉響学院大学がいいわ。そこに通いなさい、知り合いが理事をしているの。大学生がふらふらとしてたら怪しいし、同い年の若者なら朋美の話を聞けるかも。クロウ君も小学部があるから通うと良いわ。
竜巳君のお手伝いをしやすいでしょ》
《そうですね。すいません冬美さん、貴女に負担を掛けてしまいますがよろしくお願いします》
《朋美の為ですもの、私に出来る事はなんでもします。こちらこそお願いします。朋美を助けて下さい》
《勿論です。必ず助けます。俺の全てを掛けても必ず。》
その日は一晩掛けて、冬美さんにアルカディアの出来事や朋美の話をして過ごした。
俺はクロウの魔法を使い高校三年間の学習能力を見につけ、一週間後玉響学院の一年生として、転入する事になった。




