(超特別編)伊藤大二郎、酒を飲む。シャーロット・シャリアール、もつ鍋を食べる。(後編)
脚色してます。
5月26日
しかし、福岡県をうろうろしてわかったのは、この辺りって古墳が多いということ。
こんなに歩いたら古墳にぶつかるみたいな土地があるというのに驚いた。僕の田舎では考えられないくらい由緒がある。
土地それぞれに過去があり、そこに住む人々には自分達の歴史がある。住む所が違うということは、ルーツが違うということで、ならば考え方も人生の見方も違うのは当たり前だ。
それでも、同じ物を食べて美味しいと言えることは、非常に貴い。
ムーンスレイブ王国に生きるシャーロット・シャリアールが、饂飩を食べて満足する姿を見れることは、本当に幸運なのだと、思う。
はい、真面目な話終わり。
昼食を食べた御一行様が次に向かったのは曽根遺跡群・平原遺跡。
なんか日本で発掘された中で一番大きな銅鏡が見つかった遺跡公園。
ただただ、広い野原に、こんもりと古墳が見える。古墳と言うか、ただ土が盛り上がったようにしか遠目には視えず、柵がしてなければ子供が乗って遊んでいただろう。
六人めいめいに散策。
ピザ窯のあるフレンチレストランをやってるらしい民家とか、現存する古民家とか、コラージュされたみたいに眼を見張るものがぽつぽつとあり、腹ごなしに時間を潰すには最適な場所だった。
シャーロットの奴は、後部座席で寝てた。せっかくだからこの気持ちいい風を浴びればいいのにとも思うけれど、まあ、こいつからしてみれば平原も気持ちのいい風も当たり前なのやもしれない。ムーンスレイブ王国って、結構平原多いし、ここより湿度低いし。
そう考えると、また向こうの世界で、原っぱで寝転がってみたいなあという欲も出てくる。
日本じゃ、草むらで大の大人がねっ転がることも許されないもんな。せいぜい木の上に乗って猩猩ごっこするくらいだ。
さて、たっぷりと自然を感じた後は、さらに奥深く。雷山千如寺大悲王院へと行く。
ここはかつては国宝とされた「十一面千手千眼観世音菩薩」が御本尊。
僕のような一般ピープルが拝観すること叶わなかった秘仏にも対面できるのだから、ありがたい話。
本堂に入り、他のお参りに来られた人達と20人くらいで座って、御開帳を待つ。
もしやお坊様には暗黒魔法が効かないなんてことはないかとびくびくしていたが、大丈夫だったらしく 一緒に菩薩様を拝むことができた。
シャーロットの宗教観では自分が信奉していない仏様を拝んでも問題がないらしく、合掌して、静かに目を瞑っていた。
それがあまりに心動かされそうな所作でつい見惚れていたが、今仏様の前にいることを思い出し、雑念を振り払う。
睥睨する仏様の前で、祈る。何を祈ったけか。そういうことも忘れるくらいに、不乱に。
その後も、裏堂を周り、渡り廊下から見える斜面に数百体と並べられた仏弟子像を眺め、不思議な気分で過ごす。
昔、シャーロットと向こうの世界を旅していた時、彼女が言った事を思い出した。
『像とは、鏡なのよ。私が像を見る時、像もまた私を見ている。見られていることを知ることが、私が神様を見るということ……うーん、自分でも何を言ってるのかわかんなくなってきちゃった』
そう、恥ずかしげに笑って、静かにお祈りを始めた彼女の姿は未だに印象的で。
仏像を見ている彼女は、その時と同じ眼をしていた。……敬虔よな。
その謙虚さを食欲と向き合うために使えば……、やめとこう。こういう物言いは無粋だ。
その後、雷山へと向かい雷神社を参り、御神木の下にいる三匹の子猫を見てなごみ、高祖山の金龍寺を訪ねる。
ちょうど改築工事中ながらも、御住職は快く迎え入れて下さり、御本尊をお参りして、裏にある原田家のお墓を案内していただく。
大蔵朝臣原田氏。
この土地に生きる人々には大切な記録と記憶。
静かに、手を合わせる。
そんな感じで、ただただ、楽しい時間があっという間に過ぎてしまい。
おゆはんの時間となったわけで。
『ダイジロウ、別行動にしよっか』
レンタカーを返し、電車で博多市街を目指す地下鉄の中。
乗車率100%を超える人間地獄の中でシャーロットが言った。
『今から皆と夕飯でしょ? ダイジロウにとって一番大切な時間だと思うから邪魔したくないの』
つまり?
『おゆはん代ください』
こいつの気遣い、もらっておくべきかな。
というわけで、夕食代を渡す。
また後でな。
ひゃっほーい!
解放されたぜー! おそらく今鎮西で最も戦闘力の高い女であるシャーロット・シャリアールを博多の夜に一人きりにしようと何にも怖くないぜー!
飯だー!
というわけで俄然テンションがあがる伊藤大二郎は、夕飯になった途端テンションが変わった男として皆様の記憶に残ることとなったのでした。
夕飯は何にするかという話は前々からしており、もつ鍋を食べようということになっていたので、玄海庵と言うお店で晩御飯。
席に座り、皆めいめいに飲み物を注文。
ああ、かれこれ三年くらい経つのだろうか。
「生ください」
ついに言っちゃった。久しぶりに酒を飲むぞ。
今日、ずっと面白い場所を段取り案内してくださった筑前さんの音頭で乾杯をしたら、さあ楽しい時間。
なんだけれど、飲み過ぎて結構記憶が飛んでる。
佐竹さんと生ビール飲み過ぎてお店の人に「すいません、樽なくなって今買いにいってるので待って下さい」と言われたり、佐竹さんが焼酎のストレート飲んでいたので僕も真似してそれをいただいたり、「温かい物は温かいうちに食べよう」という話をしたら「猫舌なんですよね」と言われてあ、そっかという新しい発見をしたり、餃子食べたり、焼き鳥を食べたり、もつ鍋に舌鼓をぽんぽこ打ったり。
「ここにいる人達が同じテーマでエッセイ書いたらどんな風に違うものができますかね」なんてちょっとなろう作家っぽい会話をしたり、イクサジマの続きを待っている話をしたり、これはもう久しぶりに酩酊した。
いやー、飲み過ぎた。調子に乗って、飲み過ぎた。
今になって思うと、調子に乗り過ぎて迷惑をかけてしまったんじゃないかと陰鬱な気分になるくらい。
皆さん、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。本当にありがとうございました。
とかしている内に、オヒョウさんと読むだけさんが帰らなければならない時間になっていた。
名残惜しくも再開を誓い、駅まで見送る。
まずは地下鉄の途中で、筑前さんとの別離。
何から何まで、本当にありがとうございました。
そして、博多駅でオヒョウさんと読むだけさん。
今日は御会いできて、本当によかったです。
残るのは、佐竹さんとアルさんと僕。
なんか去年もこの流れだったな。
二次会。
森伊蔵と魔王の飲み比べをして、スズキのバイクの独自性について話をしたことしか覚えていない。
佐竹さんアルさん、多分御二人に一番迷惑をかけたような気がします。最後まで連れて行って下さりありがとうございました。
こうして、出会った人皆さんと少しずつ色んな話をすることができて、本当に貴重な時間を楽しんだ。
また来年に同じように笑い合うことができれば、これほど幸せなことはないと思う。
最後の時間。
佐竹さんとアルさんとも分かれ、足が少しふらつきながらホテルまでの帰路。
『あー、もう酔っ払い過ぎ』
誰かが、肩を担いでくれた。
あれ? シャーロット? いつからいたの?
『玄海庵ってお店にいたよ。隣の席でもつ鍋食べてた』
魔法は?
『そんなの解いたよ。どうせ君のお友達はみんな私の顔知らないんだから、他人のフリして店に入ったら気付かれないし』
お前日本語は?
『わかんないけれど、たまたま意気投合した女の子二人と3人でお店入った。で、まあ料理の絵を指さして注文した感じかな。さっき解散した。言ってる言葉はわからなかったけれど、多分また会おうねって言ってくれたんじゃないかな』
こいつ、順応性高いなあ。
『ダイジロウ、楽しかった?』
酔ってると、恥ずかしいことなど何もなくなる。素直に、答えてしまった。
『うん、楽しかった』
そして、
『君は、楽しかったか?』
彼女も答えた。
『うん、楽しかった』
ホテルに入る瞬間にまた隠密魔法で姿を消したシャーロットに身体を支えられながら日付変更線と共にチェックインを果たし、そのまま倒れ込むようにして。
次に目を覚ましたら。
午前五時だった。
床の上で、目を覚ます。
……え?
次にベッドに目をやったら。
シャーロット・シャリアールが、熟睡していた。
この金髪美少女野郎。
お陰で、次の日5月27日の九州旅行は、少し喉が痛いまんまでの旅路となる。
もうちょっとだけ続くんじゃ。




