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乙女百合

こちら、トキノキオク(仮)からの大幅に書き直したものです。


こちらの方が確実に読みやすいかと思います。


毎週土曜日投稿になるかと思いますm(_ _)m

「……まぶし。」

 一言そう呟いて、空を見上げれば、昇りたての太陽が俺の目に刺すように入ってくる。とっさにぎゅっと目を瞑って、目頭を揉むようにして押さえた。

「おい、まちと。お前、側からみれば物凄く年寄りくさいぞ?」

「うるさい。」

 そんな行動をする俺にそんな指摘をしてくるのは、俺の友達である恵探(けいた)

 俺はまだ高校生だと、恵探を軽く睨みつけながら、肩掛け鞄を掛け直す。

「……にしても修学旅行、か。」

「ん?なんだ?憂鬱なのか?」

「いや、何かこう、今までの修学旅行にはいい思い出がないからな。」

「……あぁ。」

 小学校のときは、大型の台風が来て延期され、中学校では修学旅行中に風邪が流行り、散々な目にあってきた。俺の言葉を理解したのか、恵探はなんとも言えない顔で、乾いた笑いを零す。

「同じような事が起こるかもと思えば、この修学旅行は何をせずとも憂鬱になると言うもんだ。」

「口調、口調。」

「……あ。」

「顔が引き攣ってる……っ!」

 あかん腹が痛い、と笑い出す恵探に俺はイラっとして、頭を軽く叩く。

「痛っ!」

「自業自得だ。」

「いや、お前がだろ!」

「これが俺の普通だからな。」

 胸を張りながらそう言えば、恵探に呆れた目で見られる。それから、俺の行動はいつもの事だと、彼はため息をついた。

「もー、二人とも!そろそろ時間が来るから、バスの運転手さんに荷物渡して、席に座ろ?」

 いつもの掛け合いをしながら、恵探と一緒に笑い合っていれば、恵探の彼女である(ひさ)(しか)美郷が、修学旅行のしおりを丸めて俺の頭と恵探の頭を、ぽんぽんと叩きながらそう言う。

 手に荷物は持っていなかったので、きっとバスの中から気付いて走ってきてくれたのであろう。

「そうなのか。ありがとう、美郷。」

「どういたしまして!」

「……ん、じゃあ俺は先行ってるわ。」

 二人はまだ話しそうな雰囲気をしていたので、俺はそう言って荷物を預けてから、一人席に座った。……すまないな、と言う恵探の視線を背中に受けながらだはあったが。

 みんなして修学旅行に浮かれているのか、ざわざわとバス内は騒がしく、静かにしとれんのかと、朝早く起きた為に眠たい頭でうつらうつらと考えながら、こつんと窓に頭を預ける。

「……眠い。」

 まだ光に刺された目は痛むものの、眠たさに負けて、俺はゆっくりと目を閉じた……。



  * * *



「──、──と。」

 ……なんだ?

「なぁに?」

 ……あぁ、これは夢か。

 ゆらりゆらりと揺らめき、仄かに靄が掛かる視界の中、俺は小さな子供とそのお母さんらしき人が遠くにいるのが見えた。二人の顔はその靄が邪魔で見えにくい。

「今日はお出かけの日だから、──は何処に行きたい?」

「おでかけ……うー、じゃあ、おかあさんのすきな――にいきたい!」

 場所はそこだけ掠れたようなノイズが走っている気がして、はっきりと聞こえなかったけど、それを聞いたその子の母は、少し目を丸くしてから、嬉しそうに笑った。

「じゃあ、お母さんは今からお弁当作るから、まだ寝てるお父さんを起こしてから、今日のお出かけ場所を教えてあげてくれる?」

「いいよ!じゃあ、いってくる!」

 やったぁっ!と嬉しそうに笑いながら、母親の言葉に大きく頷いて、子供は何処かに走って行った。きっとさっきの言葉通り、父親を起こしに行ったのだろう。

「……あの子は、本当に優しい子ね。」

 そんな母親の言葉を皮切りに、何処かに身体が揺られる感覚がして、俺はゆっくりと意識を浮上させた。



  * * *



「……んっ。」

「あ、やっと起きた。」

「……なんだ?」

「さっき休憩時間に入ったから、一旦起こしとこうかなって。」

「そんなこと、しなくてもいいのに。」

 俺のクラスは奇数なので、一人だけで席に座っていたのだが、何故だか今俺の横には恵探が座っており、そんな事を言ってきた。

「だがな、そんなぶっ続けで寝続けていたら、今日の夜寝れなくなるぞ?」

「それはないだろうさ。」

「どうして?」

「今日の日程は、着いた場所で自由研修の後、見学授業があったりするからな。今寝とかないと、後々辛い。」

「だからってなぁ……。」

 折角バスに乗ってんだから、寝てばっかりじゃなくて、他にもなんかできるだろ?と、そんな目で見られたが、俺は眠たさの残る中緩く笑ってから、まぁ良いじゃないかと大きく伸びをした。

 その後、話しかけてこない恵探の顔をみると、なんとも言えない表情をしていた。

「……なんかあったか?」

「いや、何もないが……どうした?」

「お前の企みのない笑顔が気持ち悪い。」

「んなっ!気持ち悪いとはなんだ、気持ち悪いとは!俺はいつも何かを企んでるわけじゃないぞ!」

 恵探の両頬を人差し指と親指で摘み、両方向に引っ張る。

「い、いひゃい、いひゃい!ギブギブ!」

「……ったく、人聞きの悪い。」

  俺の抓っている両手を、離してくれと叩きながらに恵探そう言ってくる。俺はぱっと手を離してから、俺はため息をつきながらに、そう呟いた。恵探は両頬を触っている。

「痛いなぁ、もう。本当の事を言っただけだって言うのに。」

「本当も嘘も何もないだろうが。……あぁ、一段と疲れた。」

「また寝るのか?」

「いや、目が覚めた。ぼーっと外でも見てるわ。……そういや、久借は?」

 ふと、いつも恵探の近くに立って話している、その姿が近くに見えなくて、俺はそう聞いた。

「……何時もなら、馬鹿やってる俺達の間に入って仲裁してくれるのになぁ。」

「あぁ、美郷の事か?……って、馬鹿やってるの自覚してたんだな。」

「馬鹿やってるのを、自覚なしでやってたんだったら、どんだけそいつは天然なんだよ。」

「あはは……そりゃそうだ。」

「……それで?」

「女の子同士で、飲み物とか買いに行ったよ。」

 ずっと一緒にいるのもあれだしな、と苦笑しながら呟く恵探。

「まぁ、それには否定しない。」

「分かってくれるか。」

「あぁ……おっと、もうそろそろで休憩終了みたいだぞ?」

「そうだな。俺も元の席に戻るよ。起こして悪かったな。」

「悪いと思ってたんだったら、起こすなよ!」

 立ち上がって前の方にある自分の席に歩いて行く時に、そんな事を恵探がのたまったので、俺は思いっきり突っ込んでしまった。



  * * *



 結局またバスで寝てしまったものの、目的地に到着し、皆自由行動で一時解散した。

 俺の班は、予想出来るとは思うが、俺と久借と恵探の三人であるので、早速雑談をしながらに歩き出す。町並みや、土産屋に視線を彷徨わせながら、俺達は好奇心で路地裏に入り、奥へと進んで行く……。

「……なぁ、久借、恵探。」

「なんだ?」

「どうしたの?」

「お前ら、二人で好きなとこ行って来いよ。」

「え、でも……。」

「それじゃあ、黄坂君が一人になっちゃうよ?」

 やっぱり、折角の修学旅行なのだ、恋人同士で何処かに遊びに行きたいだろうなと、前々から思っていたので、人目から少し外れている間に、俺はそう提案した。

「まぁ、本来一人行動は駄目なんだろうけど、俺達は自由行動で先生達の目から外れているわけだ。」

 なら、分かるだろ?と俺は二人にそんな視線を送る。

「……本当にいいの?」

「いいさ。俺はその辺一人でぶらぶらしたいし、それぞれのやりたい事が出来るんだったら、それはそれで良いと思う。」

 恵探が俺の心配をするようにして、そう問いかけてくるので、俺はそう答えてやった。恵探の言っていた企みを含んだ飛び切りの笑顔で。

「……ありがとう。」

「こういう所は、恵探よりも黄坂君の方が上だよね。」

「うるさいなぁ、もう。」

「あはは……行ってらっしゃい。」

 集合場所を取り決めた後、仲の良い感じで、お互いを小突き合いながら歩いて行く二人に俺は苦笑しながらも、手を振って見送ってやる。

「さて、何処に行こうかな?」

 二人の姿が見えなくなったあたりで、俺はそう呟いて、今まで歩いてきた方の路地へ向き合ってみるが、今はそこを通って元の道に戻ろうなんて思えなくて、俺はもう少し奥に進んでみる事にする。

 和風な感じを醸し出す家が並んでいるものの、所々には立て直したのか洋風の家も建っていて、不思議な雰囲気を持つ路地。それの持つ魅力に当てられたかのように、俺は奥へ奥へと足を進めて行く。

「土産は、明日から買い揃えていけばいいか。」

 今日はこんな事をしていれば、きっと買う時間が無くなるだろうとふと思い、俺は今日の買い物は諦めて、歩く事だけに専念しようとした。

「……ぇ?」

 ふわり、目の端に舞って行く何かが見えた。突然の事に可笑しな声が出たが、それに構わずとっさに手を出しそれをそっと捕まえ、まじまじと見つめる。

 濃い紫、特徴的な白い縁取りにひし形を縦に伸ばした様な形。見覚えのある花弁に、俺は改めて周囲を見回す。

「どうしてこんなところに?」

 純粋な疑問。辺りには住宅街で、所々に木は見えても、其れの咲く鉢は見当たらない。加えてこの道を歩くのは今は俺一人。俺は首を傾げた。

「……鉄扇(クレマチス)。」

 いつか何処かで見たその花の名前をぼそりと呟く。


 ──ごめんなさい。


 その一瞬。鈴……そう鈴の様な可愛らしい声が何処からともなく聞こえてきた。その声色は、今にも泣き出しそうな、暗くて水で滲んだ様な色だった。

  それに合わせたかのように、何処からともなく声の主であろう影が俺の横を通り過ぎた。風など吹いていないのに、少女の黒い黒曜石の様な長い髪は、大げさに靡く。まるで、少女の周りだけ風が吹いているとでも言いたげに。

「女、の子?」

 自然と出たのはこんな言葉。

 俺の目の前に続く道を走っていく少女は、この路地に溶け込んでいる様だった。(あか)(あか)い着物。紫や白、黄色等の綺麗な花を散らしているその着物の下に、緑の着物を重ね着て、異様に俺の視界の中で目立つのに、どうしてこうも違和感が無いのだろうか。

 ……まるで、最初からそこにいたかのよう(、、、、、、、、、)じゃないか。

 つい、そこまでの考えに至り、俺はぶるりと身体を震わせた。何を考えてるんだ、俺は。

 何かから逃げるかの様に走る少女。T字路、三つ角で俺のいる道の向こう側に少女が飛び出した時、俺は考える暇無く、追いかける様にして走った。

 いやだいやだと首を振り、驚いた様に自身の着物の袖をはたき、何も無いところで妙な行動を取る少女。普段なら見なかった振りしてそさくさと帰るのに、今回ばかり何故かそうしなかった。

 唯少しの好奇心。好奇心だった。それ駆られた俺は、少女に近づく為に一歩、また一歩と踏み入れた。黒い潤んだ瞳と目が合った。

「っぁ!ぃっ……っ!」

 痛い、痛いいたい、いたい!

 その瞬間に俺の頭に鈍痛が走ると同時に、先ほどの少女とはまた違う、優しいそうな女の笑い声と幼い子供の笑い声が、遠くで聞こえた気がした。それを気にしようと思うほど俺はそれどころではなく、痛みに頭を抱え、そのまま地面に倒れこんだ。

「一体、何だってん、だ……。」

  好奇心は人をも殺すというのは、事のことかと、痛みに支配された頭の中でちらりと思いながら、俺は意識を落としていった……。



誤字、脱字、感想などあれば、コメントよろしくお願いします。


乙女百合

好奇心の芽生え

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