6話 剣
『勇者が現れた。』
ある朝起きたらなんだか、様子が騒がしかったから何事か聞いたら出てきた言葉がそれだった。
中央の都市から相当離れてることから考えるにかなり前のことだと思われる。
なにせこの世界の情報伝達力は、たかが知れてるからなー
........森での実戦を正式に許して貰えて1年が経っていた。
と、言っても良く出かけていて家に殆どいなかったし、そのうえ親との会話なんて皆無だったから結構あっさりしていた。
なにせ返事が
「おう、いいぞ。」
だったからな。仮にも自分の息子だぞ、しかもまだ5歳だぞ、もう少し心配したっていいだろうが.......
おそらくもう一人の子供が生まれてそっちに気が取られていたのだろう。
俺みたいに静かじゃないし、手もかかるから楽しいのだろう。
ま、都合がよくて助かるがな。
もう一人が生まれてからこっちに、気は向けられなくなった。
そのため無断で出かけても、注意はされなくなった。
★★★★★
ギィ~
家にいても退屈なので暇な時はルースの家に良く来ている。
それにしてもボロイよな、相変わらず。
「また来たのか......」
と、少し迷惑そうな声色で出迎えてくれた。
「まぁね、やりたいこととかあるし。」
といって分厚い本を取り出す。
「......?それは?」
「鉱物の一覧。そろそろ自分の剣鍛えようかなって。先ずは鉱物から決める。」
「いくら3歳から鍛治を始めたからって、5歳で剣を鍛えられる奴なんていないぞ.....」
そう俺は剣を、一から作る。ルースは、そういっているがいつの世でも異端はいる。俺はたまたまその異端だっただけだ。
「.....で、お前はそれで読めているのか?」
ま、他人から見たらパラパラめくっているだけだしな。そう思っても仕方ない...か
「ああ、ちゃんと読めている。.....んで、もう一人は?」
「バリーだ。......って名前言ってなかったか?」
「.....ああ言ったな.....どうも人命はな、覚えていられないんだ。」
これは前世からの特徴。学校で、一人だった理由の一つ。人命を覚えられない。いや、覚える必要がない。といった方が正しいか。俺は覚えたい物はいつまでも覚えていられる。その逆は、覚えていられない。人命の他には会話の内容.....かな?これは、覚えたいと思った台詞はおぼえられる。
「で、バリーになんか用でもあるのか?」
バリーというのはこんなとこに弟子入りにきた。珍しい奴だ。
「おい、なんか今失礼なこと考えてなかったか?」
「ああ、此処ってほんとボロイよな。」
「お前は、グサッとくることをさらっと言うよな本当.....だが、そのボロイとこによくきているのはおまえだぞ。」
「それはそれだ。で、用といったが特にないぞ。」
「そうかよ.....」
ボン といって本を閉じる。立ち上がって設計図を書き始める。
「終わったのか?それにしてもはえーよな............」
....................................................................................................無音が続く。
「.......そういや勇者が現れたって知ってるか?」
「そんな話も出てたな......魔王でも現れるのかよ。」
「いるらしいぞ。ま、出てくるのはかなり先だろうがな。」
「ふーん。お伽話だけのものだと思ってたわ。」
真実かどうかは自分で確かめよう。と決めた。
「でも何故、今なんだ?かなり先なんだろう。」
「知るか!」
「それもそうか.....鍛治馬鹿が、そんなこと知らないのは当たり前か。」
「おい何だよその鍛治馬鹿って!」
「鍛治馬鹿は鍛治馬鹿だろう。そんなことも分からないのかよ。」
「何故だろう....5歳と会話している気がしない....」
それもそうだ。前世の年齢も合わせたら21だしな。もう立派な大人だ。
ん~少し喉渇いた。
そう思って立ち上がり水を取りに行き、戻った時ルースが。
「やっぱおまえの剣は不思議だよな。」
途中まで描いた設計図を見て言う。
「何だよ突然。」
「はっきり言って長所がない。が、短所もない。全てが中途半端だ。」
.....そう、俺の剣は、大剣.....ツーハンデッドソードのようなパワーも、片手剣.....ロングソードのような取り回しのよさも、細剣......レイピアや、エストックのような突きの鋭さもない。
「仕方ないだろう。その剣が唯一違和感を感じなかった剣なんだから。」
しかも俺は他の武器を使えない。出来るだけ槍などの長柄武器が使えたらいいものを.....まだ体が小さいから振り回されるだけ。力任せに振り回すことはできるが、隙が大きくなるのでまだ実戦では、使えない。
「しかし.....お前の鍛えた剣は、全て完成度が高い。だが、その中でもずば抜けて高かったのがこの剣なんだから不思議なものだ。」
.....そう言って設計図を見せてくる。
片手剣より短く細剣より太い。形としてはバスタードソード......片手半剣に近い。
バスタードソードは、切ることも突くこともできる剣と、言われているが俺は刀よりも切れることはなくエストック(両手刺突剣)みたいに鎧を突き抜くことは出来ないと、思う。
また、バスタードソードには弱点がある。それは、西洋の片手剣は殆どのものが80~100のあいだで作られていた。これは、剣を自分の腕の延長として扱うためだった。
しかしバスタードソードは、片手でも両手でも扱えるように設計されているため、重心、そして、使い方が独特なのだ。そのためバスタードソード専用の訓練を受ける必要があった。
前世の時本気で器用貧乏ではなく万能の剣は、ないのかと考えた時があった。在ったところでどうとでもならないが、ただただ暇だった。
結果は.....なかった。日本刀のように綺麗に斬ろうと思えば薄くなり、切っ先が曲がる。ロングソードやショートソードは、切っ先の20から30cmのところで斬る......とゆうより強引に肉を切り裂くので、切っ先が、曲がってしまったら思うように斬れず、刺突に利用出来ない。それに万能の剣であれば両刃である必要がある。刀では意味がない。
薄くなれば、軽くなり殴打にも利用出来ない。かといって太くして重くしたところで逆によく切れなくなる。そのうえ刺突も出来ない。取り回しも悪くなる。刺突に特化させたら?そのためには刃が邪魔になる。刃があると先端の形が必然的に菱形になり、貫きにくい。かといって刃がないと切ることに利用出来ない。.....ま、日本刀と、西洋の剣では、製作理念が違うしな.....
ちなみに、西洋の剣は、布さえも切れなかったらしい........
まさに八方塞がりだった。そのため前世での万能の剣(応用がきく)は、バスタードソード、または、サーベルと、いうことに結論づけた。
が、今世では、魔法がある。工夫次第で、本当の万能の剣になる。
肉を切り、鎧を貫き、頭を潰す。
俺はこの剣を、最高の剣にしたい。何者でもなく、俺自信で。
「で、この剣の素材は、どうするんだ?」
「それなんだが.......原材料はヒヒイロカネにしようと思っているんだが.....」
「待った!待ーった!」
久しぶりに聞いたルースの大声。相変わらずでっけぇな......
「ん?何だよ....」
「素材が、ヒヒイロカネってどうゆうことだ!あれはすごい高価な上に加工出来る鍛治師なんて殆どいないんだぞ!」
ヒヒイロカネは古文書の[竹内文書]に記されている大昔の日本にあったとされる金属。金より軽く、金剛石より硬い、錆びる事がない、非常に高い熱伝導率を持っている、太陽のように輝き、表面が揺らいで見える。触ると冷たく、磁気を受けつけないなどがある。
この世界の住人が加工出来るヒヒイロカネは、不純物が混ざりすぎて特徴とゆう特徴がでていない。それでも加工出来る職人は少ない。
これは分析で、調べた結果、一般的に売られている金属のヒヒイロカネは、精錬が、されていないもの。純度がなんと、1~5%しかない。
それでも剣などの武器に加工されれば、鉄より硬い。
「うちは、金だけはある上に俺も相当稼いでいる。それに鍛治の技術もいまでは、あんたより上だ。ルース。」
金を稼いでいるとゆうのは、俺が鍛え、細工をし、魔法を付与した剣を他の店に売った結果だ。なんと、原料費が、200ニルドなのに、一本2万ニルドになった。魔法が付与された剣は、魔法剣とされ、通常より高く取引されるそうだ。半年近くそんなことをしていたためルースより鍛治の技術が上になっていた。そのうえ前世で詰め込んだ進んだ技術を知っていたため上達はより早かった。
ちなみにお金のルートは1ニルド=100円だった。露店の売り物(食べ物限定)は平均1ニルドだったことと、ルースは、1000ニルド辺りで、暮らしていることから判断した。通常の剣は、一本300ニルドだそうだ。ルースの店は見た目がまずいからあまり客が来ない。
「.....く......」
ルースのかおが、苦痛に染まる。っち、面倒な.....
「.......すまん.............朝飯食ってないから食べてくる。」
「あ、ああ......分かった。」
そういって外に出た。