ショタコンと少年と名付け親
ご無沙汰してます。
「こんな少年を知ってたら連絡をください。っと、とりあえず掲示板なんかはこんなもんでいいだろ。後は実際に探すしかないわけか…」
はぁ……とため息をつきつつ、モニターから目を離す。タバコに火を付け一口吸ってから、再度モニターに、いやモニターに写っている写真に目を戻す。
「どこ行っちゃったんだよ王子様……」
半年もあっていない写真の人物に語りかける。そこで初めて日が沈んでいる事に気付く。このネオン煌めく高層ビルの中では夜もあってないようなものだが。
男はタバコの煙が部屋に充満しないようにベランダへと移動する。
「生きてるといいな……」
男の呟きは夜闇に消えていった。
――――――――――――
「―――え?信じてくれるの?」
「当たり前じゃない!こんなかわいい子が嘘を付くわけないでしょう」
ボクは今、エレナさんに思いっきり抱き着かれていた。
こうなったいきさつを説明しよう。
あの後すぐにリビングに向かったのだが、ドアを開けて見るとエルザさん以外にもう一人女性がいた。その女性こそエレナさんな訳なのだが、リビングに入った瞬間目が合い、ショタきた!と言って飛びつかれたのだ。そしてそのまま事情を説明することになり、記憶が森からしかない事、何日か野生的な生活をしていた事、微かに人らしい記憶があることなどを話した。そして、今に至る訳なのだが……
「うん、まあ嘘は付いてるようには見えなかったね。ところでエレナ、いい加減離れてあげたら?」
エルザさんの言う通り
。今、ボクは初対面にも関わらずエレナさんに抱きつかれているのだ。
「んー、まあそうね。これからはいつでも抱けるだろうし。エルザが言ったけど一応自己紹介するわね。私はエレナ、とある事情でエルザに匿ってもらってるの。エルザとエレナで名前がこんがらがるかもしれないけどよろしくね。ところでキミは?」
エルザさんと、エレナさん……ね。意識してないとなんだか間違えてしまいそうだ。
「ボクは……わからない……名前はわからない」
「そう……何か大きなショックな出来事があったのかもしれないわね。ごめんね、辛いところついちゃったかしら」
「エレナさんが謝ることじゃないよ。何か理由があるんだろうけどまだほとんど何もわからないから自然に思い出すかもしれない」
「強いのね。でも無理はしないこと。かと言って呼び名でもないと不便で仕方ないわね」
「よし!じゃあシンって事でいいんじゃない?」
今まで黙って話を聞いていたエルザさんが突然、待ってました!とでも言うように言い放った。エルザさんはある程度予想していたのだろうか?
「エルザ!……それ名案だね!よし、じゃあキミの名前はシンに決定!あらためてよろしくね、シン」
ボクは何もいう暇がないまま名前が決定した。
でも、少しだけだが自分のために名前を考えてくれた事が嬉しい。
「ありがとうございます。じゃあこれからボクはシンって名乗ることにします」
「気にしないで。ところでシンくん、さっきの話から推測するにキミ住む場所無いんでしょ?なら暫くここに泊まらない?」
「いいんですか?ボクがいると食費嵩ますよ?」
「そんなことは気にしなくていいから、ね?」
その後エルザさんとエレナさんの強い推しもあって暫く共同生活をおくる事になったのだった。