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竜の茜色の夢  作者: 木実鳴海
前章
4/5

感覚事故

家の中は思っていたより装飾品が少なかった。

家に入るとエリスさんはここで待っててと合図をすると二階へと消えていった。もちろんボクは待つ事にするが、少ないとはいえ置いてある装飾品が気になって仕方なかった。見た事のない形、色をしたガラス細工や花瓶。素人目から見ても凄いと思えるような自然が描かれた絵。特に気になるものは無かったものの、右、左と見回してしまうものばかりだ。そして何回か振り返ることを繰り返していた時、振り返った瞬間に一番手前に飾ってあったさっきのガラス細工が、棚から落ち空中を飛んでいた。


「・・・ちょっ、まって!?」


言うよりはやくボクは右手を伸ばしながら飛んでいた。

竜の足じゃなくて良かったよ。もしそうならここらへんが陥没してたかもしれないからね。とは後のエリス談である。

ボクは横飛びのおかげでガラス細工を無事にキャッチする。しかし、その後の事なんて考えている訳が無い。だから頭から棚の下部分に突っ込んでしまう。痛む頭を抑えつつ仰向けに玄関に転がる。

そこでボクの目に入ったのは天井に描かれた絵ではなく、ボクが当たった事によって棚から落下してくる陶芸品達だった。


「Sd"en2y5l?」


ボクは目を開いたまま頭を真っ白にして固まっていたため、落ちてきていた陶芸品達がすべて空中で静止し、その後元の位置へと戻っていくのを見た。

もう、頭の処理能力の限界だ。

少しそのままで固まっているとエリスさんがどうしたの?と言った風にのぞき込んできた。そこで我に戻り、手をついてゆっくり起き上がる。

とりあえずガラス細工を棚に戻し、エリスさんの方へゆっくり振り向く。言葉を口にしかけたとこで、言葉では伝わらない事に再度気付く。

言葉が伝わらないってこんなにも不便なんだな。

と改めて思う。


うーんとうなっているボクの肩をエリスさんが叩いてきた。なんだろう?顔をあげるとエリスさんは持ってきていた服とタオルをボクに押し付けてまた何かを取りに行ってしまった。


今度は大人しく待った。

エリスさんがとってきたのは何かの金属で作られた杖だった。先の方には水晶みたいなものがつけられている。

エリスさんが杖を持ち、小さく何かを呟くと光の粒みたいな物が浮かび、ボクの中へと入っていった。


「……?」

「これで言葉はわかるようになったかな?」

「!?」

「おいしいリアクションをありがとう。さっきのは言葉がわかるようになる魔法よ。言語理解って言うとわかりやすいかな?」


エリスさんはそう言ってクスクス笑った。


言葉にはしないが、最初からこれをすれば良かったのでは?と思ったのはボクだけではないはず。


「さて、いろいろと聞きたい事もあるし、まだ完全には信用できてないんだけど、中に私以外の女の子がいるからとりあえず服を着て欲しいんだ。私は男の子を育てた事があるからいいんだけどね」


エリスさんはボクに持たせた吹くとタオルに視線を向ける。


(そう言う事にあんまり気にしてこなかったけど、やっぱり人間社会で裸はダメだよね)


「えっと、やっぱり臭いますかね?」

「そうだね……すこしだけだけど、血なまぐさいっていうか……」

「やっぱりですか」

「うん、だから1回お風呂に入って体を洗ってきて欲しい。お風呂はわかる?」

「あ、はい。わかります」

「うーんお風呂が分かるのかだったら……っとごめんね。お風呂は廊下の突き当たりだよ。あがったら服を着た後その斜め向かい側にあるリビングに来てね。服は破れてもいいから着てくること」

「えっと、ありがとうございます。すぐいってきます」


教えてもらった通りにお風呂場へとむかう。土足はダメみたいなので、一応タオルで足を拭いておいた。



お風呂は気持ち良かったです。広々していてゆっくり浸かっていたかったけれど、お邪魔させてもらっていて、しかも待っている人もいるのでシャワーと、石鹸を使って体を洗う事だけで済ませました。お風呂は知っていても今まで入った事が無かったので、少し感動した。

知識だけあってそれに関する体験した記憶がないのってやっぱり異常だよね。なんかとても不思議な感覚。


脱衣場にでてタオルを使いで体拭き、水気をとる。そして服を着る。エリスさんが渡してくれた服は下着と少し大きめの真っ白な半袖のシャツ、黒色の膝7分のズボンだった。


「破れてもいいってそう言う意味だったのか。これは破らないとどうしようもないよね。仕舞う事できないし」


上着はいいとして、尻尾があるおかげでパンツは入りそうにない。もし入ったとしても破けてしまうだろう。だからエリスさんは破れてもいいと言ってくれたのだ。

とりあえず尻尾の付け根部分までパンツを履いてみる。前は腰付近まであげれた。これなら上着が大きめなお陰で案外何とかなるかもしれない。試しにズボンも履いて、上着も着てみる。脱衣場に設置してあった鏡で確認する。


(うん、これなら大丈夫そうだ)


ボクは脱衣場を後にしてリビングへと移動した。

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