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竜の茜色の夢  作者: 木実鳴海
前章
2/5

眠さは驚くことで吹き飛ぶ

私の名前はエルザ。いやそんなことはどうでもいいんだ。

夕暮れ時の今、問題が2つ発覚した。


まず1つ目。それは研究に没頭しすぎて日をまたぎ更に夕方までしてしまった事。それに気付いた途端に強烈な睡魔が襲って来た。

次に2つ目。それは食料が無くなった事。いくら金があろうとも食料が無ければ話にならん。


「ううむ……どうしたものか」


今頑張って行ってくるべきか、それとも寝て明日朝一番で行くべきか。

まず今から町へ行くとなると町につくころには日が沈んでしまうだろう。よし、寝よう。そう決心して寝床へ向かおうとした時、部屋の扉がノックされた。


「エルザ、研究終わったの…ってその様子じゃあ問題に気付いたみたいだね」


入ってきたのは友達、いや親友のエレナ・ハープキラだ。つややかな茶髪で碧眼。顔も整っていて間違いなく可愛い。そんなエレナは今自宅から家出中だ。エレナの家、ハープキラ家は貴族の名家だ。だから政治にも発言力がある。つまり、政略結婚の対象によくされてしまうのだ。それが嫌でこんな町からも離れた辺境まで家出してきたらしい。事情がどうであれ親友の頼みとしては断れない。


「あぁ、今丁度一区切りついたところだよ。そうだ!問題の解決はエレナに任せていいか!?」


私は名案が浮かんだとばかりに話す。人使いが荒いとは自覚しているし、半分以上は冗談だ。


「ん。良いわよ?だって疲れてるんでしょ?ならすぐ寝なさい。これから行って、町の宿屋で泊まって明日の朝に帰ってくるから」

「え、本当にいいの?」

「いいってば!ほら早く休んでて!何もなしに居候するのは気分が悪いからこれくらいやらせて」

「あ、ありがとう。ほんとに助かるわ。気をつけてね」


すぐに家をでて買い出しに行ったエレナを見送った後、私はベットにダイブし、眠りに落ちた。





次の日は、早起きしてエレナを待つつもりでいた。しかし、そうなにうまくいくわけもなく爆睡していた私が起きたのはエレナがドアをノックしてからだった。


「うう、後5分……」

「おーい、エルザ〜?」


起きなければ……でもまだ眠たい、寝させてくれ。でも私が起きてドアを開けてあげなければエレナは入れない。

うん。起きようか。入れてあげてまた寝ればいいじゃないか。そうしよう。


「ち、ちょっと待って!」


私は急いで着替えた後玄関まで急ぐ。髪を解く事など頭になかった。


「ごめん。遅くなった」

「まだ起きてなかったのね……それはちょっと予想外だったわ。それはいいとしてこの荷物はどこに持っていけばいい?」

「もうないようにするよ。そうだね、うーん。じゃあ地下室の方までお願いしてもいい?」

「そこは私が運ぶから置いといてとかでしょうよ」

「私はこれからもうひと眠り」

「相当疲れてたんじゃない。じゃあお昼になったら起こしに行くからね」


そう言ってエレナは荷物の入った箱を持って家の中へ入り地下室のある方へと進んでいった。

もうエレナには頭があがりません。感謝しきれないよ。私には勿体無いくらい良い親友を持てた。


感慨深く感じ、ボーッとしていた。そして眠るために自室に戻ろうとした時だった。


コンコン


誰だ。私の睡眠を妨げるやつは。

今私は玄関に立っている。なら私がでるべきだろう。嫌な顔を隠そうともせずに再び玄関を開ける。

新たな来訪者は、裸の男の子だった。いやこの表現は間違っている。最初は顔と上半身の一部しか見えていなかった。12才くらいのまだ低い身長。僅かに幼さの残る整った顔。男の子にしては少し長めの金髪。瞳孔が縦に開いた碧眼。うん?瞳孔が縦に……?


そこで私は初めてその子の全身を見た。


「え?待って竜?いや違うよね……君は何?名前は?どこから来たの?」

「……?」


問いたが反応がない。代わりにキョトンとした顔で首をかしげていた。言葉がわかっていないのだろうか?ん?私が冷静だって?そんなわけ無い。一周回って落ち着いているだけ。内心冷や汗だらだらなんだよ。


「xjp"mjtpwt?」


これは知能がないとかじゃくて、言葉が理解できていないだけかも知れない。これは私の探究心が疼く。知りたい。でもいつ攻撃されてもおかしくないような子を家の中へ入れるつもりはさらさらない。今はエレナもいる事だしね。

私が考えているあいだにその子は目を閉じて何かを考えるように眉間にシワを寄せていた。


何をするつもりだろう?もし、攻撃をしてくるつもりなら迎撃しなければならない。どうすればいい?考えろ私。


そのまま、5分くらい経過しただろうか。

その子の体が薄く光り出す。


「えっ!何何!?」


その子が光り出すと同時にその子の体にあった竜と言ってもいい特徴が少しずつ人のそれへと変わっていく。

私はそれを唖然として見つめるしかなかった。

そして、光が収まる頃にはそこには残った尻尾と瞳を除けば、華奢な体つきで可愛い裸の人間の男の子がいたのだった。

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