8話「魔術師フレデリカ(後編)」
先日、色々とあって更新が出来ませんでした。すいません。本日は2話更新します。別verも書き上げましたが悩んだ結果、こちらを採用。
一応、文字数は過去最長です。では、どうぞ。
フレデリカは現在、十八歳。未だに交際をした経験さえなかった。
物心ついた時より、莫大な回数の魔術行使をし続けた結果、身体に多大な負担をかけ、身体的な成長を阻害してしまった。
そして、この世界の男性は一般的に女性の乳房やお尻は大きいほうが魅力的と考えており、好きになる男性は彼女の小さく平らな身体に興味をしめさなかった。
彼女はいつも今度こそ、今度こそはと、自身をはげまして、生きてきた。
食事をしている間に夕暮れの赤から黒いカーテンへと変わり、小屋には光源なんかの設備もなかった為、フレデリカが「ライト」を使用。当然のように一脚しかない椅子に座り、話を始めた。
「マシロ、あなたはどこまでの記憶があるの?」
必然的に真白は床に座ることになったが特に不満だとも思わず、言葉を選んで返事を返した。
「気がついたら、この小屋にいて、一般的な知識については覚えてない。なので、教えてくれると嬉しい。俺が持っている本が魔術書で自身が魔術師であることは理解出来る」
真白の答えに、フレデリカは潤んだ瞳で意味深に微笑んだ。頬が火照り出すのがわかる。
最初は只の警戒対象だった。だが、会話しているうちに真白の身体からほとばしる強烈な存在感に惹きつけられ、新たな出会いにときめいた。
そして、この密閉空間。雄の、汗の匂いが脳をくらくらさせる。更にピグシス現象でもある未知の存在に知的探究心がくすぐられる。もう、限界だ。
フレデリカは真白の座っている場所に唐突に近づいていき、自身の欲求を発散するべく、行動に移した。
「マシロのことを教えて。私のことも教えてあげるわ。じゃあ、キス、しましょうか」
聞き捨てならない発言が出てきた為、問いただそうとしたが真白が言葉を発することは出来なかった。
フレデリカに唇を奪われたからだ。
柔らかく弾力のある感触に脳が蕩けそうになった。たおやかな少女の身体は逃げることを許さぬように両手で首に手を回し、ついばむように繰り返し唇を食んでくる。
「ぁむ……ちゅぷ……ぅっ、ちゅぅ……ッ」
全く状況が分からないまま、呼吸をするために開けた口に舌が侵入し、ねっとりと絡んでくる。
「んふぁ……んんぅ。……ちぅぅぅぅっ……」
重ねられるキスのたびに自身を見透かされる感覚と共に彼女の……フレデリカの知識が、記憶が頭の中に流れ込む。
この魔術は自身の知識と記憶を相手に流し込み、相手の知識と記憶を読む、共有の魔術である。
この世界の名はマギカレイスン。
種族毎の四つの国が存在する。
人族の国『シャオリン』
エルフ族の国『アルキント』
魔族の国『ゼルリンク』
獣人族の国『シュバルト』
人間は魔術、エルフは魔法、魔族は魔導、獣人は妖術を使用する。
数百年前に起きた全面戦争ではエルフの国『アルキント』 が勝利し、各国の多くの領土が占領された。
人族の悲願はエルフ国の打倒と領土の奪還である。
エルフの国が強国な理由は他種族よりも長寿で国民全員が魔法使いである為。
魔族は百年以上前から魔王が不在で大きな侵略行為は行わない。
戦争で著しく、被害を受けた獣人国は現在、エルフ国の保護国として支配されている。各国で停戦協定を結んでいるが小競り合いは起きている。
人族『シャオリン』は王政で騎士団と呼ばれる組織が近衛兵の王宮魔術師を筆頭に国家の治安を維持している。所属人員は全て、魔術師。
「んふぁ……ぁむっ。んちぅぅぅっ……ろぉ? 気持ち……ひぃ……?」
互いの口内から卑猥な音を鳴り、唇から甘い喘ぎが溢れ出す。そして、知識から記憶と新たな情報が真白に伝わってくる。
フレデリカ=リアスターが生まれたリアスター家は由緒正しい魔術師の家系である。
フレデリカで十代目。継承の儀式を重ねた年数で名家と呼ばれていたが、代々の当主が輝かしい功績を残すことはなく、他の名家には蔑まれていた。何の為の名家だと……。
魔術師は代を重ねる毎に強くなる。これは人族シャオリンでは子供でさえ、知っている事柄だ。
魔術師は友好関係のある家系同志で結びつき、子供も魔術師となる。いや、されるというべきか。
継承の儀式。
代々、受け継がれてきた魔力を自らの人生で高め、次代当主に受け継がせる。魔術師としての至上命題である。
自身の魔術師生命を絶つ為、ことは慎重に行われていた。
魔力継承後、魔力がない一般人に成り下がるのを拒み、次代当主に魔力と命を捧げる家系も少ないない。魔術師の覚悟を促す意味としては正しい。
上記の理由から継承の儀式が幼少時に行なわれることはない。
精神の未熟さ、膨大な魔力による魔術行使の負担に心身が耐えられないと判断されているからだ。
だが、フレデリカが魔力継承したのは五歳であった。自我に目覚めた二歳の時点で両親の保有魔力量を遥かに超え、教えた魔術を完璧に行使する天才として、歴史に名を残す傑物になると認めたからだ。
魔術師は急に保有魔力量が増えても強くなるとは限らない。魔力が身体に馴染み、鍛錬によって展開可能な魔術を増やしていく。そういった面でも自身の魔力展開の限界を知らずにいる幼少時に魔力継承する意味合いは大きい。既成概念もほぼなく、創造に支障をきたすこともないからだ。賭けであることは違いないが。
彼女は周囲の期待に応え、努力に裏打ちされた揺るぎのない自信と秀でた魔力保有量による術的の高速展開により、弱冠十二歳の史上最年少で王宮魔術師となる。
そして、事件は彼女が王宮魔術師になった翌月に起こる。
『真白の使用可能魔術』
・魔力弾→魔弾(無属性)、火弾、水弾、風弾
・追尾弾
・連射弾
・強化魔力弾→疾風弾
・探索
・念話
後編なのに終わっていない理由は次話で納得いただけると思います。多分。
9話は本日の夜に更新予定です。
アクセス数の増加が作者のやる気になっております。閲覧者の方々に感謝致します。