7話「魔術師フレデリカ(中編)」
小屋に到着するとフレデリカさんは結界魔術に驚いたようで、ちょっと背伸びをして、手を俺の両肩に置き、揺すってきた。
先程までは生死がかかっていたから、外見を気にしている余裕がなかったがこの人、色々と小さいな。
肩にかかるくらいの綺麗な金色の髪。背丈も俺の胸くらいしかないし、身体の線も細くて胸も尻も出ていないからより幼くみえる。容姿は頭を撫でてあげたい小動物系だよなあ。
あくまであの威圧感を発していなければ、だがな。
「なんで、こんな場所に王城と同格級の高位結界があるのよ!?
展開範囲は広くないけど、認識阻害等の外敵対策術式が多数展開してるようね。余程の高位魔術師が展開しないとこうはならないわ。この術式はいつからあるのかしら? 調べたいわね。
でも、解析系と結界系に秀でてないと魔術構造までは無理そうね。メルンヴァに来てもらうしかないか。 でも、順番的にしばらくは無理そうね」
最初は微笑ましかったが揺さぶりが大きくなり、鬱陶しくなったので振り解こうとしたが出来ない!?
小さい身体なのにどんな膂力だよ?
「あぁああ、フレデリカさあぁぁん、手を離してぇええ! じゃないと答えたくても何も言えないぃぃぃ」
「あら、ごめんなさい。少し、興奮したわ」
微笑んでいる姿は可愛らしい女の子にしかみえないのに。それと今のが少しなら、本気で興奮した場合の被害は計り知れないな。恐るべし、宮廷魔術師。
「フレデリカさん、俺はこの小屋周辺で結界魔術が展開している理由はわかりません。休める場所として、利用してるだけです。調査は自由にされたらいいと思いますよ」
「そう……ね。建物は逃げないもの。マシロの話を聞くのを優先させてもらうわ。その為にも先に食事にしましょうか? 食材はマシロが獲ったから、調理は私がするわ。そこに置いてくれないかしら?」
フレデリカさんは地面に放り捨てていた狐種ランフォ、兎種ノリスン等を横一列に並べていきながら、俺にも指示する。
断る理由がなかったので指定された場所に置き、近くにいると危ないと言われたので素直に従った。
フレデリカさんはなぜか俺にウインクをしてから、魔術を行使した。何のアピールだ?
「ディセクション」「グリルバーン」「フレーバー」「スキュア」「フリーズ」
その魔術展開は迅速で、現在の実力ではとても真似が出来そうになかった。
起きた事象をそのまま説明するなら、食材が美味しそうな串焼きになったということだ。
『魔導書、悪いが魔術解説をお願い出来るか?』
『はい、構いません。魔術師は他者に術式を語ることはあまりしませんので正しい判断です。
マスターは何種類の魔術が行使されたか、わかりますか?』
『俺には解体、燃焼、串刺し、氷結の四種類しかわからなかった』
『実際は解体、燃焼、風味、串刺し、凍結の五種類です。
風系の解体で対象を細かく切断。
火系の燃焼で焼き上げ、不要物も排除。
無属性の風味で所持の香草で臭み消し。
風系の串刺しで対象を空気の刃で刺し。
氷系の凍結で空気の刃を凍らせてます。
大部分は本来の凍結よりも温度は高めにして、食材を食べやすい温度に調整。なおかつ、一部は保存がきくように氷結してます。
それにしても五重魔法ですか……。速度や精度も高次元でなおかつ、術者に疲労感もない様子。凄腕の魔術師です。
彼女がマスターをちらちら見てるので何か言ってあげてはいかがですか?』
『あぁ、そうするか』
無邪気というか、子供みたいな人だな。少し、大げさにしたほうが喜びそうだ。
「すごい! すごいですよ! フレデリカさん! こんな魔術は初めてみましたよ!」
「うふふ、ありがとう。冷めないうちに食べましょう」
満更でもない顔で嬉しそうに答えていた。単純で可愛い。
串焼きはしっかりと味付けもされており、俺の焼き魚とは雲泥の差と呼べる美味しさだった。
『真白の使用可能魔術』
・魔力弾→魔弾(無属性)、火弾、水弾、風弾
・追尾弾
・連射弾
・強化魔力弾→疾風弾
・探索
・念話
食材処理に時間がかかってしまった。次話で世界観説明して、その後に戦闘します。