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異世界転移で魔王の身体にされました  作者: 鳴海 蒼
第1章 魔術師になるということ
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1話「転移」

「遂にこの時がきたか。待ちくたびれたぞ」


「え?」

 頭に直接響いてくる声で俺は目が覚めた。


 あれ? なんか体に違和感がある。

 まるで一晩中、冷房かけっぱなしで起きたようなだるさだ。


「無事に術式が起動したようだな。時間がないので早速、説明する。よく聞け、そして覚えろ。先ずは周囲を確認するがいい」


 なんだろう、この傍若無人な感じ。いや、聞くけどさ。


 言葉通りに見渡すと俺がいたのは全方向が真っ白い空間、自身が立っているのかもわからない不思議な場所だ。しかも周囲に誰もいないのに声だけが聞こえてくる、意味が分からん。いや、この声が説明してくれるのか。


「この場所は俺様の身体の精神世界だ。現在、俺様の肉体とお前の精神を結合しているので可能な現象だ。

 俺様はある理由でお前を呼び寄せた。名はグライン=リード。お前の名は?」


ひいらぎ 真白ましろだ」


「マシロか。突然で理解出来ないと思うがお前の元々の身体は死んだ。今後は俺様として生きてもらう」


 これは夢か? 俺って、こんな夢みれる程度には妄想力があったんだな。うん、早くこの夢終わらないかな……。


「現実逃避しててもお前に拒否権はない。俺様の術式は完了しているのでな、諦めてくれ」


 いやいやいや、なんだこれ? 俺が死んだ? なんだよそれ。わけわかんねえよ。いきなりで家族や友達に別れの挨拶も出来ずに新しい人生を送れとか、理不尽だ。あまりの未練に地縛霊になれるレベルだわ。この場面で使うべき言葉はこれしかない!!


「だが、「断れないぞ」」


 な、なんだと! 台詞を被せやがった!! 俺の前に姿を現せ、あんた殴れない。

 現在の俺、謎テンションだ……。


 落ち着け俺。色々と情報が足りない。このまま、グラインとやらの世界にいったら、何も知らずに彷徨うはめになりそうだし。聞けることは聞いとかないと。


「一応聞くがあんたは男だよな? あと、俺の精神を呼び寄せた理由を聞かせてくれ」


「勿論、男だぞ。 容姿も悪くないと自負している。妻はいないが恋人のような存在はいたな。だが安心しろ、その女なら魂の波長で別人とわかるので害はないだろう、あってもいい女なので損はなかろう。

 呼び寄せた理由か、ならこれを伝えねばならんな。俺様はある戦闘で瀕死の重傷を負ってな、その襲撃者達に力を奪われる前に転移の術式で身を潜め、死を回避する為の術式を起動した。その術式は自身の精神を著しく摩耗する代償として、瀕死状態からでも肉体欠損を回復させる高位術式だ。だが予想以上に精神摩耗が激しかった為、自身の肉体を制御する精神力が残っておらん。身を隠してはいたが俺様が亡くなるとその場に過剰な力が残ってしまい、世界が混乱する可能性が高い。それを回避する為に俺様の身体に波長が合う精神として選ばれたのがマシロだ」


「……どこから突っ込めばいいのかわかんね。えー、なんていうかあんたは凄い力がある。でも知らない他者に奪われるのが嫌だから波長とやらがあった俺に後を任せるという他力本願な感じ? なにかしてほしいこととかないのかよ? 」


「概ね、それであってるぞ。今後どうしたいかはお前が良いようにしたらいいさ。好きに生きていいぞ。

 俺様の体に波長が合う精神の持ち主なら託せると勝手に信じさせてもらう。優秀な身体を使えることに喜んでもいいぞ?」


 別に嬉しくねえよ。普通の異世界召喚なら帰る方法があるかもだが俺の肉体が死んでるなら本当に選択肢なしかよ、ちくしょう。まだ、観たいアニメや連載終了してないマンガや続きが気になるラノベも諦めないといけないのか。死にてえ、もう死んでるらしいが。


「まだまだ説明不足感は否めんがそろそろ時間切れか、俺様は休ませてもらう。最後に助言というか、ボーナスだ。目覚めると近くに黒い本がある。起動すると手助けしてくれるはずだ。

 この先、困難もあるかもしれん。いや、きっとあるだろう。だがお前ならより良い選択をしてくれるであろう、俺様の肉体を頼む」


 グラインは満足そうに語って、以降は声が聞こえなくなった。その後、白の世界が黒く塗りつぶされ、俺は意識を失った。


 こうして、俺の新しい人生が始まってしまった。グラインの身体が魔王と呼ばれる存在だと知らぬまま。


お読みいただき、感謝致します。

第1章は毎日更新予定です。宜しければ、続きもお読みいただけたら幸いです。



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