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短編集

勇者と魔法使い

作者:

でろでろ~~!(謎の敵遭遇効果音)

 勇者はスライムに遭遇した。

「て、敵ね。ま、負けないんだから!まずは剣で攻撃!え、えいや~~!」

 勇者はスライムに攻撃した!

「びょろろろん!」

しかしスライムはスライムらしからぬ素早い動きで勇者の攻撃をかわした!

「う、うそっ!ってきゃぁぁぁ!」

 勇者の攻撃をよけたスライムそのまま物凄い勢いで勇者にアタック!そのままべっとりと圧し掛かった!

「ひぇぇぇぇぇぇぇ!ぐっちょねばぁでなんか生ぬるい~~!いや~~溶かされる~~!きゃ~~きゃ~~!どうにか逃げないと……!」

 勇者はコマンド『逃げる』を選択。……査定中査定中。

「……!」

 残念。素早さと幸運の値が低すぎて勇者は逃げられない!

「うそ~~!」

 勇者は身動きが出来ない!スライムはねっとり勇者にのしかかったまま。

「きゃ~~!きゃ~~!!きゃ~~!!!!」

 勇者じたばたと暴れるがスライムの粘着性からは逃れられない!

「うきょきょきょ~~!」

 スライムのターン。スライムは勇者の上が気に入ったのか動こうとしない!

「え、ちょっと……なんで!」

 スライムのターン。スライムは勇者の上が気に入ったのか動こうとしない!

「え?え?えぇぇぇぇぇ!……ってごら!あんた何パーティーメンバーのくせに座り込んで変な解説をしてんのよ!助けなさいよ!魔法使い!」

 背中にスライムを乗っけたまま私はでっかい杖を抱えて座りこんでこちらを静観、いや、ニヤニヤと非常に腹立たしい面で高みの見物をしながら訳のわからない解説(RPG風)をしてやがる性格最悪の男をにらみつけた。

魔法使い特有の三角に尖ったつばの広い帽子に黒いコートを着て、その下は動きやすそうな上衣とズボン、丈夫そうなブーツに首には護符であるペンダントをぶら下げている。

男にしては長めの金髪を髪の後ろで尻尾のように一つに結んだ男は性質の悪い笑みを浮かべていても尚、人を惹き付ける魅力に溢れていた。

まぁ、私には人を地獄に叩き落す悪魔の笑みにしか見えないんだけどね!

大体なんだ『コマンド』って!そんなん選んで逃げられた誰も苦労はしないわよ!

 こんなのが私の唯一のパーティーメンバーだなんて信じたくない!

 ジタバタと手足をばたつかせながらどうにか私の上に陣取っているスライムから逃げようとするんだけど粘着性があって全然駄目。動いた分余計にネバネバに絡め取られたような気がするよ……。

「うううううっ!」

「あははは。いい光景ですねぇ。勇者」

 魔法使いが爽やかに私の惨状にそんなコメントを残す。因みに奴はレベル1の私とは違ってレベル99というとんでもない化け物なので私の上に乗っかっているスライムはおろか周辺のモンスター全部が逃げ出すほど強い。

 私は勇者なのに魔法使いの方が圧倒的にレベルが上って理不尽すぎると思う。

 まぁ、私達の世界では勇者もついでに魔王も石投げれば当たるぐらい多い存在だけど……それでも勇者なのに万年レベル1っていうのは情けないやら恥ずかしいやら。

 沢山いる勇者、魔王。そんなにいるのならすぐに世界は滅茶苦茶になり飽和状態になりそうなものだけど私達の世界ではそんなことはない。

 それは私達の住む世界が広いからだ。それはもう世界がいくつもくっ付いているかのように広大で果てがない。風習も文化レベルも生活様式も場所によって様々。

 どうしてこんなに広いのか正確な理由など誰も知らない。でも一般的には私達が生きるこの世界は今もなお広がり続けているのだと言われている。

 世界の果てで今もなお大地が生まれ海が広がり続けているのだと。誰も世界の果てを見つけた人はいないらしいから確証はない話だけどまぁ、そう言われても納得が出来るほどこの世界は広いし地域間の文化の差が激しい。

 魔法が主体の地域があれば科学が発達する地域……様々だ。

 そんな広い世界だと魔王も悪事を働く場所の重なりようがないらしい。(勇者は魔王が出てきたら選出されるため魔王と勇者の数は同数)


 そんな世界で私は勇者をやっている。……どういう悪縁か性悪魔法使いを仲間にして旅を続けている。

「勇者?」

 うっ!

 魔法使いの笑顔の黒さが増して私はスライムに絡まれたまま顔を引き攣らせてしまった。

「おやおや……どうやら勇者は助けて欲しくはないようですねぇ」

 仕方のない人だと肩を竦める魔法使い。ほんっとにこいつムカつく!

「……助けるつもりもないくせにっ!」

「いえいえ。大事なパーティリーダーである勇者……しかも女の子の窮地に見捨てるだなんて僕がするわけないじゃないですか」

 キラキラ笑顔でいい事言っているけどこいつ今、現在、スライムに絡まれている私のこと助けてくれてないからね!

 そのキラキラは黒いキラキラだからね、騙されちゃ駄目だよ!

 戦闘でまともに戦ってくれたことなんて殆どないし!

 大抵は戦って窮地に陥っている私を見て腹抱えて笑っているだけだからね。こいつは!

 今までの所業を思い出してくきききぃと憤りで奥歯を噛んでいる私の頬を魔法使いが容赦なく引っ張る。

「ひゃい!」

「本当にわかりやすい人ですねぇ~~貴女は。まぁ、貴女のへろへろ攻撃とかモンスターに絡まれている様とかを見て確かに楽しむのは僕の趣味の一つですが」

 さらりとなんてことをぶっちゃけているんだこの魔法使い!

 そんな趣味は底なし沼にでも捨てて来い!

「それでも最終的に貴女のことは助けてあげているでしょう?そんな僕のことを感謝しても恨むのは筋違いです」

「あほぉ~~!助けるっていって私ごと魔法でぶっとばしたり氷に閉じこめたり土塗れにしたり……ろくでもない救出方法じゃないかぁ!」

 本当に本当に本当に最高レベルなくせに!その気になれば無傷で助けることができるくせになんで毎度毎度毎度そんな助け方!

 いや、まて、私。助けられること前提は可笑しい。そうよ。こいつの手を借りなくても私が強くなればあんな目に遭う事は二度とない!

「……でも、勇者。君は今現在スライムに絡まれている状況ですよね?」

 つんつんと魔法使いが杖で私の上に乗っかるスライムを突くとまるで存在を誇示するかのようにスライムがぷるるんと震えた。

「うううううううううっ!」

 どうしようもない現実に頭を抱え込みたくなった。

「はははっ!恥辱に塗れたいい表情ですね。『助けてください、魔法使い様』と可愛くお願いしてくれたら助けてあげるかもしれませんよ?」

 何が楽しいのかつんつんスライムを突きながら魔法使いが楽しげにそんな提案をする。

 だが「あげるかもしれない」などと曖昧すぎる。幾らでも言い逃れできる言い方に目が半眼になってしまう。それでなくてもこいつに助けられるのはガリガリに減らされた勇者としての矜持が傷つくというのに!

「誰が言うかぁ!」

「そう?まぁ、僕としては粘着質な物質に塗れる勇者って中々いい眺めだから別にいいんですけど、ね……スライムにっていうのはちょっと面白くないですけど」

 色っぽい流し目なんかをしながら魔法使いが私の頬についたスライムの粘液を指で伸ばして擦り付ける。

 魔法使いの滅茶苦茶何かを含む言い方にぼっ!と顔が赤くなるのがわかった。

「な、な、なっ!」

 人の苦難になんっつうことを連想しているんだこの男は!

「暴れたから顔とかにもスライムの粘液がついているし……なんかエロイですよね。むらっと来ます」

 何を考えているんだこの男~~~~!

「み、見るな!黙れ!この変態魔人!」

「え、見ますよ?それにこの言い方でわかるんですね。へぇ……勇者って結構むっつり?」

 憤死しそう。憤死しそう。こいつを殺して私も死ぬっ!

「馬鹿!馬鹿!馬鹿!変態!変態!スケベ!見るな触るな近寄るなぁ!」

「あははは、真っ赤になってか~~わい!」

「むきぃぃぃぃ!」


 この不幸のスパイラルが終わったのは散々私をからかい尽くし満足したらしい魔法使いが(セクハラ混じりで)助けてくれた五時間後のことだった……。さらに言えば探索していた洞窟を抜けられたのはそれから十五時間後のこと。それまで何度モンスターに絡まれ、魔法使いにセクハラされ、神経すり減らして憤死しそうになったことかぁ!

 つ、次の街ではこいつと縁を切ってまともな仲間を絶対絶対ぜぇ~~~~ったい探してやる!

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